2004.11.10

vol.17 善玉菌を増やして大腸がんの予防を

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腸の若さは腸内細菌で決まる

Vol.17 善玉菌を増やして大腸がんの予防を 「腸年齢」という言葉を聞いたことはありますか?
ほかの内臓と同じように、腸も年齢とともに老化していきます。でも、老化の速度は人によってさまざま。
腸年齢が若いかどうか…そのカギをにぎっているのは、腸にすみついている乳酸菌などの腸内細菌です。
腸内細菌には、善玉菌、日和見菌(ひよりみきん)、悪玉菌と呼ばれる3種類があります。善玉菌は、私たちの健康に役立つもので、乳酸菌やその一種のビフィズス菌などのことです。善玉菌のことを、プロバイオティクスともいいます。
悪玉菌は、腐敗物などをつくり、有毒物質を発生させるもので、大腸菌やクロストリジウムなどが知られています。日和見菌は、その名のとおりどちらにもなり得る菌のことです(*1)。
腸年齢は、善玉菌と悪玉菌のバランスによって決まります。善玉菌が多く、悪玉菌が少ない人ほど腸年齢が若いといえるのです。
というのも生まれてまもない乳児のときには、善玉菌のひとつビフィズス菌が95%以上を占めています。それが成人期には15~20%になり、老年期になると数%にまで減ってしまう人も少なくありません。
善玉菌が減って悪玉菌が増えると、体にはさまざまな異変が起こります。たとえば下痢と便秘をくりかえす過敏性腸症候群もそのひとつで、ストレスを感じやすい人によくみられます。
免疫力も低下するため、疲れやすくなったり、さまざまな病気にもかかりやすくなります(*2)。

(*1)善玉菌・悪玉菌という呼び方はわかりやすく表現したものです。悪玉菌とされる大腸菌にも、ビタミンをつくるといった善玉の面もあります。ただ全体からみると、健康を害する作用が多いことから悪玉菌のひとつとされています。

(*2)腸には免疫細胞がたくさんあります。悪玉菌が増えると免疫細胞がダメージを受け、体全体の免疫力も低下します。

腸内細菌と大腸がんの関係は

腸内細菌の働きのなかでも最近注目されているのは、日本人に増えている大腸のポリープやがんへの影響です。
腸内細菌の多くは、大腸にすみついています。大腸は、食べ物が消化されたあと、そのカスをためて大便をつくる場所です。悪玉菌が増えると有毒物質も増え、腸そのものの免疫力が低下します。それだけ発がん物質への抵抗力も弱まり、大腸にポリープやがんのできやすい環境になってしまうのです。
それに対して善玉菌には、悪玉菌のつくる有毒物質を無害化する働きがあります。また善玉菌は乳酸や酢酸、酪酸などをつくり、腸の中を弱酸性にします。すると酸性の環境が苦手な悪玉菌そのものが減っていきます。酪酸などには、がんの発生を抑える働きもあることがわかり、善玉菌そのものが予防に役立っていることもわかってきました。
大腸のなかでもとくにポリープやがんが多いのは、肛門に近いS字結腸と直腸の部分です。この2つで大腸がんの約70%を占めています(*3)。
S字結腸と直腸では、大便が圧縮されて濃度が高まります。悪玉菌のつくる有毒物質の働きも強くなり、それだけ腸壁の細胞がダメージを受けやすくなるのです。
大腸に悪玉菌が増えると、便が黒く、かつ臭くなる傾向がみられます。日頃から便の状態に気をつけ、悪玉菌を増やさないようにすることが大切です。

(*3)国立がんセンター中央病院によれば、大腸がんの発生場所は肛門に近い順に、直腸(37.9%)、S字結腸(34.3%)、下行結腸(4.5%)、横行結腸(7.0%)、上行結腸(10.4%)、盲腸(5.9%)となっています。

ミニコラム

初期の大腸がんには、あまり自覚症状がありません。しかし、便潜血反応検査を行うと、目に見えない腸内の微量出血をみつけることができます。出血があっても、がんの可能性は数%程度ですが、早期発見のきっかけにはなります。40代になったら、年に一度は検査を受けましょう。ポリープやがんが少し大きくなると、腸内が圧迫され、便が細くなったり、排便後も便が残った感じがしたり、血便が出ることもあります。こうした症状がみられた場合も、早めに受診しましょう。

食物繊維は善玉菌を増やす?

日本人の大腸がんは、この50年間で約6倍(女性)~約7倍(男性)にも増えています(*4)。患者数ではすでに胃がんと並んでトップになっているほどです。
大腸がんが急増している1番の理由は、食生活の変化です。高脂肪・高タンパクの食事が増え、食物繊維の多い野菜類をあまり食べなくなったためです。 肉類などのタンパク質は、悪玉菌の栄養源になります。そのため肉類中心の食事をつづけていると、悪玉菌が増え、腸の病気も多くなってしまいます(*5)。
一方、食物繊維は善玉菌の栄養源になります。また食物繊維そのものが、悪玉菌のつくる有毒物質を体の外に排出する働きをもっています。
かつて日本人の食事は野菜中心で、意識しなくても食物繊維をたくさんとっていました。ところが最近は摂取量が減り、厚生労働省の定めた目標摂取量1日 20~25gに対し、実際には14.2gしかとっていません(平成14年度国民栄養調査)。ちなみに食物繊維の10gは、ゴボウで100g、キャベツで 500g程度に相当します。
こうした食物繊維の不足も、大腸のポリープやがんの増加の一因とされています。
実は食物繊維の摂取量が大腸がんと関係あるかどうかは、研究者の間でも議論が分かれていました。
しかし昨年、WHO(世界保健機関)の「国際がん研究機関」が発表したデータでは、食物繊維をたくさん摂取した人(1日平均31.9g)は、少ない人(12.6g)より大腸がんの発生率が25%も低いという結果が出ています(*6)。

(*4)厚生労働省による1950~1998年の調査データで、大腸がんによる死亡者数の比較。

(*5)肉類など脂肪の消化には、胆汁がたくさん必要となります。胆汁に含まれる胆汁酸が分解されると、発がん性物質が発生しやすいことも、大腸がんの原因のひとつとされています。

(*6)欧州8カ国約52万人を対象にした1992~1998年の追跡調査。食物繊維の摂取量により5グループに分けて調査した結果、摂取量が多いほど大腸がんの発生率は低い傾向がみられました。

善玉菌を増やす食べ物とは

食物繊維というと、野菜サラダを連想する人が多いのではないでしょうか。実は野菜サラダの定番といえるレタス、キュウリ、トマトなどには、食物繊維はあまり含まれていません。
ふだんの食事で食物繊維を多くとれるのは、大豆、インゲン豆などの豆類、干しシイタケ、切干ダイコン、ゴボウ、海藻類、コンニャクなどです。どれも昔ながらのおかずに多い食材です。
食物繊維には水溶性のものと不溶性のものがあり、性質が少し違っています。いろいろな種類の食品から、バランスよく食物繊維をとることも大切です。
善玉菌のひとつビフィズス菌は、オリゴ糖を栄養源にしています。オリゴ糖は、胃や腸で消化されずに大腸までいくので、効率よくビフィズス菌を増やすことができます。
オリゴ糖を多く含む食品には、大豆、ゴボウ、アスパラガス、タマネギ、牛乳、バナナなどがあります。
肉類を少し控えめにし、こうした食物繊維やオリゴ糖を多く含む食べ物を積極的にとるようにすると、腸内環境が改善され、腸年齢も若返っていきます。

ヨーグルトは自分の体に合ったものを

ヨーグルトなどの乳酸菌やビフィズス菌の入った発酵乳製品も、善玉菌を増やす食べ物です。食べ物として入った菌が、そのまま腸に定着するわけではありませんが、腸内環境を改善し、元からすんでいる善玉菌を増やし、活性化させることができます。
最近はスーパーなどで、いろいろな種類のヨーグルトがみられます。その違いは、中に入っている菌の種類です。容器の表示に、ブルガリア菌、ビフィズス菌、LG21、LC1…などとあるのが、菌の種類です。
実は乳酸菌などの善玉菌には、細かく分けるとたくさんの種類があります。しかも人によって、相性が違います。テレビや雑誌で評判になっているものでも、自分に合うかどうかは食べてみなければわかりません。
ひとつのヨーグルトを1日200~300gずつ、2週間くらい試してみて、自分との相性を調べてみましょう。お通じがよくなる、肌の調子がよくなる、風邪をひきにくくなる、好みの味で食べ続けることができる、といった点を目安にして、自分に合ったものを探してください。

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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