2018.11.09

vol.185 「秋の夜長」を楽しむのはほどほどに

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Vol.185 「秋の夜長」を楽しむのはほどほどに

体が必要とする睡眠時間は、成人の場合、目安として6~8時間未満であり、このくらいの睡眠時間が最も健康だということがわかっています(※1)。ところが、日本人の約3分の1以上が睡眠不足であることが明らかにされました。厚生労働省が発表した、平成29年度「国民健康・栄養調査」によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は、男性 36.1%、女性 42.1%であり、男女とも 40 歳代で最も高く、それぞれ 48.5%、52.4%でした(※2)。
睡眠不足は、肥満、高血圧、高血糖、循環器疾患、メタボリックシンドロームなど生活習慣病の危険性を高めることがわかっています。また、認知症やがんの危険性を高めることも明らかにされています。秋の夜長を楽しむあまり、睡眠不足が習慣化しないように気をつけましょう。

睡眠不足は健康寿命を縮める原因に

世界の研究者による数々の研究から、短い睡眠時間が肥満、高血圧、高血糖、循環器疾患、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を発症する危険性を高めることが明らかにされています(※1)。
近年では睡眠不足がアルツハイマー型認知症の危険性を高めることもわかってきました。認知症の中で、一番日本で多いとされるアルツハイマー型認知症。はっきりとした原因は未だに明らかにされていませんが、有力な原因として脳内にたまる老廃物「アミロイドβ」が神経細胞にダメージを与えることで発症すると考えられています。
健康な脳でも、日中の活動によってアミロイドβは発生していますが、眠っている間に脳から排出されてしまいます。しかし、睡眠時間が十分でない場合、排出しきれないとされています。
これまで睡眠不足とアミロイドβの研究は世界中で行われてきました。最近の米国の研究では、十分に睡眠をとった翌朝と比べて、一睡もしなかった翌朝には脳内のアミロイドβの蓄積量が増加していることわかりました。蓄積した場所は、大脳のうちの記憶に関連する海馬や感覚情報を伝達する視床などの領域です。この結果では、たった一晩寝なかっただけでも、脳に老廃物がたまることがわかり、慢性的な睡眠不足では老廃物の除去が十分に行われない可能性が指摘されています(※3)。
また、睡眠不足はがんの発症を高めることもわかっています。東北大学の研究によると、睡眠時間が短いほど、乳がんと前立腺がんの発症が増えることがわかっています(※4)

日中に眠気を感じたら、睡眠不足のサイン

睡眠時間は日の長い季節では短くなり、日の短い季節は長くなる傾向があります(※1)。「秋の夜長」は人の生理的な現象に反しているのかもしれません。習慣化しないうちに睡眠時間を戻しておきましょう。
自分の睡眠時間が足りているかどうかを知るためには、日中の眠気の程度に注意してください。日中の仕事や活動に支障をきたす程度の眠気があれば、睡眠不足のサインです(※1)
日中の眠気はパフォーマンスの低下や事故につながります。米国による研究では、睡眠時間が6時間未満の人では、7時間の人に比べて居眠り運転の頻度が高いことがわかっています。また日本の研究では、交通事故を起こした運転者で睡眠時間が6時間未満の場合に、追突事故や自損事故の頻度が高いことが示されています(※1) 睡眠不足による事故が目立つことから、2018年6月より国土交通省は事業者へ、トラックやバスの運転手は乗務前に必ず睡眠状態のチェックを受けることを義務化し、不足の場合は乗務できなくなりました。
睡眠不足は、日中のパフォーマンを下げるだけでなく大きな事故につながりやすくなります。日中の眠気を感じたら「秋の夜長」習慣をやめ、睡眠時間を取り戻す対策を行いましょう。

起きる時間を一定に、入眠時間を少しずつ早める

睡眠不足ならば、休日などにまとめて「寝だめ」をすれば解消すると考えてしまいますが、睡眠をためることはできません。休日にまとめて睡眠をとろうとしても、睡眠不足による能率の低下はうまく補えません(※1)。
人間の体には時計遺伝子が備わっていて、細胞が働く時間を決めています。その時計遺伝子のパフォーマンスに最適な時間帯を体内時計と呼んでいます(※5)。体内時計はさまざまな体の働きと関係しますが、一番ポピュラーなのは覚醒と睡眠の最適な時間です。起床直後の太陽の光を手がかりにリセットし、1日の時刻を刻んでいます。寝だめをすると体内時計が乱れ、かえって睡眠不足を助長することになります。
睡眠不足を解消するには、朝起きる時間は一定にして毎夜15分ずつ早く寝ることです。1時間早くすることができれば、それに越したことはありませんが、急には慣れないという人は15分でも早く寝るようにしましょう(※5)。
また、寝る前の飲酒、喫煙はやめ、カフェインが入った飲料は就寝前の3~4時間は飲まないようにしましょう。カフェインはコーヒー、緑茶、紅茶、ココア、栄養・健康ドリンクなどに多く含まれています(※1)
寝る前のスマホやパソコン操作は、画面から出るブルーライトが眠りを妨げることがわかっています。動画鑑賞の夜更かしには注意してください(※6)。
「秋の夜長」は健康を考えてほどほどに留めておきましょう。日中の眠気を感じたら夜更かしをやめて、適切な睡眠時間を確保することが大切です。

※1 厚生労働省健康局「健康づくりのための睡眠指針2014」

※2 厚生労働省「平成29年度 国民健康・栄養調査」

※3 β-Amyloid accumulation in the human brain after one night of sleep deprivation.
Shokri-Kojori E, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. Apr 24;115(17):4483-4488. 2018.

※4 Sleep duration and the risk of breast cancer: the Ohsaki Cohort Study.

※5 菅原洋平「睡眠、仕事すべてのパフォーマンスをあげる体内時計の3つの法則 〈たった5分で!〉昼はバリバリ、夜はグッスリ、頭も体もスッキリ」クイックブックス

※6 PNAS January 27, 2015 112 (4) 946-947; published ahead of print January 20, 2015

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