2005.02.10

vol.20 冬の脳卒中...前ぶれを知って予防を

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脳卒中と早朝高血圧の関係は

Vol.20 冬の脳卒中...前ぶれを知って予防を

寒さの厳しい季節は、脳卒中が増える時期として知られています。冷たい空気に交感神経が刺激され、血管が収縮し、血圧を上昇させるからです。特に問題となるのは、朝の血圧が高くなる早朝高血圧です。なかでも、朝の血圧が急激に上がる「モーニングサージ」タイプの人は、脳卒中の危険性が高いことがわかってきました。

自分が「モーニングサージ」タイプかどうかを知るには、家庭で血圧を測定することである程度知ることができます。夜寝る前に静かにした状態で血圧(収縮期血圧)を測定し、翌朝目を覚ましたときに、起き上がる前の血圧(同)を測定します。これを数日間くり返し、その平均値から夜と朝の血圧の差が55mmHg以上ある場合、このタイプに当てはまります。

早朝高血圧が原因の脳卒中は、特に起床後1~2時間が危険な時間帯です。起床後は目覚めてすぐにあわただしく活動しないようにしてください。布団の中で10分ほど過ごしてからゆっくり起き上がり、トイレや洗面所などの寒い場所に行くときはカーディガンを羽織ったり、厚手の靴下をはくなどをして、少しでも血圧の上昇を抑える工夫をしましょう。

血管性疾患(脳卒中や心臓病など)が多いアメリカでは、早朝高血圧の目安を、収縮期血圧135mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上としています(*1)。これが国際基準となり、日本でもこの基準をもとに早朝高血圧の診断が進められています。

(*1)アメリカ高血圧合同委員会の基準。

脳梗塞にみられる前ぶれとは

脳卒中は、脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」、脳の表面を走る動脈瘤が破れる「くも膜下出血」の3つのタイプに大別されます。以前は脳出血の割合が多かったのですが、最近は脳梗塞が75%を占めています。

かつて脳卒中は、ある日突然に起こる病気として恐れられていました。しかし脳梗塞の場合は、かなりの人に前ぶれ(前兆)がみられることがわかってきています。それゆえに前ぶれを知っておくと、予防あるいは早期治療ができる可能性が高いのです。

脳梗塞の前ぶれには、次のような症状があります。

(1)手や足の力が急に抜ける
(2)片方の手や足がしびれたり、動きにくくなったりする
(3)片方の目が一時的に見えにくくなる
(4)ろれつが回らなくなり、言葉が出てこなくなる

そのほか「物につまずきやすくなる、片方の足をひきずって歩く、急にめまいが起こる」といった症状もみられます(『知っておきたい循環器病あれこれ・脳卒中予防の秘けつ』(財)循環器病研究振興財団発行のパンフレットなどより)。

こうした症状はほとんどの場合、5~15分ほどで消えてしまいます。そのため検査や治療を受けずにやり過ごしてしまう人が少なくありません。ところがその後、本格的な脳梗塞に見舞われることが往々にしてあります。ただし、発症時期には個人差があって、数時間後~数ヵ月後とかなり開きがあります。脳梗塞の前ぶれがあった時点で、受診して検査を受けることが大切です。

一方、脳出血やくも膜下出血については、現在でもこれといった前ぶれがないといわれます。それでも人によっては、「これまでに経験したことのない強い頭痛」や、「急に物が二重に見えた」といった症状が報告されています。

脳卒中は頭全体に起こるわけでなく、一部の血管が詰まったり、出血したりするものです。障害が起こる場所によって症状も異なりますが、感覚異常や言語障害を伴うケースも少なくありません。手や足、目の感じがいつもと違うなと思ったとき、言葉がうまく喋れなくなったときには身体が知らせてくれる危険信号と受け止め、早めに受診することが予防につながります。

遺伝子タイプから脳梗塞を知る

冬はお酒のおいしい季節です。これからは転勤や入社などの送別会・歓迎会なども多くなり、飲む機会も増えます。そうしたなか、最近、脳梗塞とアルコールとの関係が注目されているのをご存じですか。そのひとつが、アルコールを分解する酵素の遺伝子タイプによって、脳梗塞を起こす要因になるというものです。

アルコールを飲むと、アルコールは肝臓のアルコール脱水酵素によって分解されます。アルコール脱水酵素には、遺伝子タイプの違いから次の2つのタイプあります。

●グアニン型

アルコール脱水酵素の働きが弱いタイプ

●アデニン型

アルコール脱水酵素の働きが強く、アルコールの成分をアセトアルデヒドという有害物質に変える働きをするタイプ(アルコールを飲むと、顔が赤くなったり酔ったりするのは、アセトアルデヒドのせいです)

最新の遺伝子研究から、グアニン型のアルコール脱水酵素をもつ男性は、アデニン型の2.16倍も脳梗塞の発症率が高いことがわかってきました(*2)。脳梗塞の最大要因とされる高血圧でさえ発症率は2.4倍ですから、それに匹敵するほどです。

自分がグアニン型かアデニン型かは、遺伝子を調べればもちろんわかりますが、一般にアルコールを飲んだとき顔が赤くならない人や、気分が悪くならない人…つまりアルコールに強いとされる人ほど要注意といえます。

(*2)日本医大と国立長寿医療センターによる調査。ちなみに女性の場合は、グアニン型とアデニン型による大きな違いはみられない。女性ホルモンの働きによると考えられている。閉経後はその限りではない。

アルコールと脳血管疾患との関係

アルコールとの関係では、もうひとつ興味深い報告がみられます。それは脳梗塞と脳出血の違いです。

厚生労働省の研究班の調査によれば、日本酒を毎日平均1合未満(ビールなら大瓶1本未満)飲む人は、たまに飲む人(月に1~3回程度)と比べて、脳梗塞の発症率が4割も少ないことがわかりました(*3)。つまり適量のアルコールは、脳梗塞の予防効果があるといえます。ところが、脳出血については逆の結果が出ています。毎日1合未満飲む人は、たまに飲む人の1.83倍も発症率が高いのです。

同じ脳血管性の病気でありながら、なぜこんな違いが起こるのでしょうか。それはアルコールの性質に理由があります。

アルコールには、善玉コレステロールであるHDLコレステロールの血中濃度を上昇させ、血液をサラサラにする働きがあります。お酒を飲むと血液が固まりにくくなるので、血管の詰まりによって生じる脳梗塞の予防には一定の効果が期待できるでしょう。その一方で、出血しやすくなるため、脳出血やくも膜下出血は起こりやすくなります。

つまり、アルコールは両刃の剣で、プラスにもマイナスにもなるのです。ただし、毎日3合以上のアルコールを飲んだ場合は、脳梗塞、脳出血ともに急増します。いずれの場合も、飲みすぎないことが大切だといえます。

(*3)厚生労働省研究班による2004年6月の報告。40~59歳の男性約2万人を対象に、1990年から11年間にわたり追跡調査を実施した。

参照URL
『飲酒と脳卒中発症との関連について』国立がん研究センター
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/261.html
『脳卒中』厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-069.html

更新日:2021.04.02

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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