vol.201 急な温度変化による咳やぜんそくに要注意!季節の変化によるアレルギーの原因と対策

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ぜんそく(喘息)とは、呼吸時に空気の通り道となる気道が炎症を起こし、ちょっとした刺激にも敏感に反応して、発作性の咳や息切れなどが生じる疾患です。発作を起こす刺激には、さまざまなものがあります。実は急な温度変化もそのひとつです。なぜ寒暖差がぜんそくを誘発するのか、原因と対策について解説します。

ぜんそく(気管支喘息)とはどんな病気?

ぜんそくは「息が喘ぐ(あえぐ)」と書くように、喘鳴(ぜんめい)と呼ばれるヒューヒュー、ゼーゼーといった呼吸音が認められる病気です。

ぜんそくの人の気道は慢性的に炎症を起こしており、健康な人に比べると空気の通り道が狭くなっています。そこに何らかの刺激が加わると、さらに気道が狭くなるため、激しい咳や息苦しさ、呼吸困難などに見舞われるのです。

ぜんそくを誘発する要因として、ダニやハウスダスト、花粉などのアレルギー物質のほか、タバコ、風邪やインフルエンザなどの感染症、運動、疲労やストレス、気温や気圧の変化などが考えられます。

通常の場合、どれかひとつでなく、いくつかの要因が絡まり合って発症することがほとんどです。そのため、日常生活においては発作のきっかけとなる刺激をできるだけ遠ざけることが予防につながります。

vol.201 急な温度変化による咳やぜんそくに要注意!季節の変化によるアレルギーの原因と対策

ぜんそくには起こりやすい時期がある

ぜんそくは時間帯や季節によって、症状が出るとき・出ないときがあります。一般的に夜間や早朝に発作が出やすく、昼間になると症状が治まっているケースも少なくありません。また、春先や秋口などの季節の変わり目は、ぜんそくが悪化しやすいことで知られています1)

▶︎季節の変わり目に発作が増える原因とは

ぜんそくは気温や気圧、湿度の影響を受ける病気です。日本アレルギー学会『喘息予防・管理ガイドライン 2021』にも、ぜんそく患者さんは気温や気圧の変化・雷雨、黄砂などがぜんそくの悪化につながるため、気象予報などを参考にして外出するとよいと記されています2)。真夏や真冬は比較的気候が安定する時期ですが、春や秋は梅雨や台風などで気象の変化が激しいシーズンです。特に春先や秋口は、朝晩の気温が日中に比べて急激に下がります。ぜんそくの人にとっては、わずかな気温差も刺激になるため、発作の頻度が増えたり、症状が重くなったりしやすい状態になるわけです。実際に、前日と比較して3℃以上の気温低下や、過去5時間以内に3℃以上の気温低下があった時に、ぜんそく発作が起きやすいといわれています3)

ぜんそくではない人も、季節の変わり目に咳やくしゃみ、鼻水などに悩まされる場合があります。風邪やアレルギー性鼻炎(花粉やハウスダストによるもの)に心当たりがないのであれば、それは「血管運動性鼻炎」4)5)かもしれません。通称、「寒暖差アレルギー」とも呼ばれるものです。これは急な温度変化による自律神経の乱れが原因とされています。

寒暖差によるぜんそくや咳などのアレルギー症状を防ぐには、その原因である温度の変動をできるだけ小さくすることが大切です。

ぜんそくを上手にコントロールする方法

▶︎体温調整を心がける

急激な気温の変化が発作のきっかけになりやすいので、体温を一定に保つよう心がけましょう。外出時には薄手の洋服を重ね着しておくと、衣類による温度調整がしやすくなります。暖かい部屋から寒い場所へ移動する際は、マスクの着用が効果的です6)。冷たい空気が気道に刺激を与えるのを防げます。

室内で過ごすときは、エアコンで温度を一定にコントロールするのが理想です。その時、室外と室内の温度差をつけすぎないように注意しましょう。また、快適な湿度を保てるように、湿度コントロール機能がついたエアコンがおすすめです。エアコンのフィルターにはぜんそくのアレルゲンとなるホコリやカビが発生しやすいので、定期的に掃除してください。

▶︎ダニ対策・カビ対策をする

室内にあるアレルゲン(ダニやハウスダスト、カビなど)を吸い込むと、ぜんそくやアレルギーの原因になります。湿度が高く空気がこもりがちな室内は、ダニやカビにとって格好のすみかです。こまめに掃除や換気をし、寝具やクッションなどはなるべく丸洗いが可能な製品を使うなど、室内環境をクリーンに保ちましょう7)

▶︎ストレスをため込まない

過度のストレスは、自律神経やホルモンのバランスを崩し、ぜんそくを誘発することがあります。睡眠や休養を十分とり、ストレスをため込まないようにしましょう。適度な運動など、自分なりにストレス解消法を見つけることが大事です。

Check! 室内環境はこう整えようーアレルゲンを減らす工夫―

室内からアレルゲン全てをなくすことはできないので神経質になりすぎる必要はありませんが、ちょっとした工夫で快適な室内環境を作れます7)8)。日常生活でアレルゲンを減らす工夫例として、以下を参考にしてみてください。


  • カビやダニの増殖を防ぐため部屋を換気して湿気対策をする(花粉飛散時期に窓を開けたくない場合には、除湿機などを活用する)
  • 寝具はダニ予防として太陽の光を当てて干し、寝具の表面に掃除機をかける(花粉飛散時期は乾燥機などを活用)
  • 花飛散時期には洗濯物は屋内に干す
  • エアコンのフィルターはこまめに水洗いをする
  • カーテンは薄い製品を選んでときどき洗濯する
  • 家具は壁から少し離して隙間をあけて設置(ときどき掃除機をかける)する
  • 床はカーペットや畳よりもフローリング(板張り)にする
  • ペットは飼わないようにする
  • ソファは布製ではなく革・合成皮革製を選ぶ(ほこりの出にくい素材)
  • 観葉植物は置かないようにする
  • ぬいぐるみは毛羽立った製品を避ける
  • 床はこまめに掃除機をかける(花粉飛散時期は拭き掃除が有効)

寒暖差は刺激となり、咳やぜんそく発作を引き起こす引き金となります。季節の変わり目などにはできるだけ室内の温度差が大きくならないようにするほか、アレルゲンの少ない室内環境を整えるなど、ぜんそくを上手にコントロールしてみましょう。

<参考資料>

  1. 日本アレルギー学会, 厚生労働省「アレルギーポータル」アレルギー対策>ぜん息(成人編)
    https://allergyportal.jp/provision/asthma2/
  2. 一般社団法人日本アレルギー学会 「喘息予防・管理ガイドライン 2021」(発行:協和企画)
  3. 山口宗大ほか. アレルギー. 2013, 62(2): 171-78.
  4. 湯田厚司.日耳鼻. 2011(114): 934-37.
  5. Russell A. S. World Allergy Organization Journal. 2009(2): 115-18.
  6. 独立行政法人 環境再生保全機構「コラム:天気とぜん息の関係を知っておきましょう」
    https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/column/202207_2/#:~:text=%E7%A7%8B%E3%82%84%E6%A2%85%E9%9B%A8%E6%99%82%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%A3%E3%81%9F,%E3%81%A8%E8%A8%98%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
  7. 日本アレルギー学会, 厚生労働省「アレルギーポータル」室内環境の整備
    https://allergyportal.jp/provision/indoor-environment/
  8. 大阪大学大学院医学系研究科 免疫内科「増えている喘息」
    http://www.imed3.med.osaka-u.ac.jp/clinical/c-immu08.html

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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