vol.204 パルスオキシメータの家庭での正しい使い方
ヘルシーライフ
皆さんの家庭には、パルスオキシメータはありますか?体温計や血圧計に続いて、以前よりパルスオキシメータを購入して家庭で使用する方が増えてきました。パルスオキシメータを使ってSpO2(酸素飽和度)を計測するにあたり、どのようなことに気を付けたら良いでしょうか。ここでは、一般的なパルスオキシメータの正しい使い方と活用法についてお話します。

パルスオキシメータで計測しているSpO2って何?
空気中の酸素は呼吸により肺に取り込まれます。酸素は、赤血球に含まれるヘモグロビンと結合して全身に運ばれます。SpO2とは、心臓から全身に血液を送り出す動脈の中を流れている赤血球に含まれるヘモグロビンの何%が酸素が結合しているか、皮膚を通して光の吸収値で調べた値です。健康な方であれば、SpO2の標準値は96%~99%となります。

日本呼吸器学会「よくわかるパルスオキシメータ」より引用
正しい使い方と注意点
測定時のチェック項目
- 運動直後の数値は体動の影響があります。安静時の状態を測定する時は、呼吸や心拍が安静時に戻っていることを確認し、測定しましたか。
- 測定部位は動かさず静止の状態で測定していますか。
- 爪のマニキュアや白癬症が光の透過を妨げていませんか。
- 測定機器がはずれていませんか。
- 強い光の下で測定していませんか。
- 手足が冷たくなっていませんか。
- 指のむくみはないですか。
- しっかり脈拍を検知していますか。
- 装着直後ではなく、脈拍を検出してから20〜30秒後に読み取っていますか。
※手足が冷たかったり、浮腫んでいたりすることで正確にSpO2を測定できないということは実際の診療でもよく経験します。
SpO2の値が低い時には
正しく測定されているかをチェックしましょう。SpO2は脈拍変動をもとに値を計算していますので、測定中に動かすと変動します。また、脈拍を確実にとらえることで安定したSpO2の値を得ることができるため、場合によっては測定に時間がかかることがあります。
SpO2測定のメカニズム
パルスオキシメータは血液の赤い色を見ています。赤色光(R)と赤外光(IR)の2つの光が指を通過する光の量で赤い色の程度を測定しています。赤血球の中のヘモグロビンが酸素と結びつくことで血液は鮮紅色となります。この赤い色の程度から、酸素に結び付いたヘモグロビンの比率であるSpO2をみているのです。そして、心臓から送られる動脈血は血管の中を移動します。脈を打つたびの光の透過量の変化から動脈の場所を特定し、動脈血の酸素飽和度を計算することができます。
日常生活での活用法
実際にパルスオキシメータを活用できる場面はどのようなときでしょうか。例えば、お年寄りと同居している方は、血圧や体温と同じように日々のバイタルサインの記録として測定するのもよいかもしれません。お年寄りは一般の方と比較すると自覚症状に乏しいことがあります。風邪かな?と思って受診したらSpO2が低値を示す肺炎だと判明し、すぐに入院だったというようなこともあります。決して自己判断は良くありませんが、日ごろから測定していることで、その変化を早期に気づくことができるかもしれません。
また、最近は睡眠時のいびきや無呼吸をご家族に指摘されて受診される方がいます。睡眠時無呼吸症候群の診断には簡易的に睡眠時に無呼吸に伴うSpO2値の低下を調べる方法や、PSG(ポリソムノグラフィー)という脳波を含む精密検査があります。まずは睡眠時にSpO2値が低下しているかどうか、医療機関やかかりつけ医に相談しながらパルスオキシメータを活用してみるのも良いかもしれません。
ただし、パルスオキシメータの長時間の装着は火傷の危険性があります。安全な装着時間はクリップタイプでは30分から4時間以内、ディスポーザブルと呼ばれる、センサー部分を指に密着させるタイプでは8時間以内とされていますが、製品により異なるため、必ず取扱説明書などを確認して使用しましょう。
承認・認証された適切なパルスオキシメータを使用しましょう
現在様々なパルスオキシメータが販売されていますが、機器の精度はどうなのでしょうか。パルスオキシメータは精度基準を国際的な基準に合わせるため、国内規格(JIS)および国際規格(ISO規格)が設けられています。採血して測定した動脈血酸素飽和度(SaO2)に対して、同時に測定したパルスオキシメータのSpO2がどれだけ一致しているかで精度基準を定めています。現在、販売されているパルスオキシメータでは、この国際基準に沿って精度表記をしているメーカーとそうでないメーカーが混在しています。
厚生労働省では、令和4年2月3日、承認・認証されたパルスオキシメータの機器一覧を公表しています。また、商品が精度基準をクリアしているかどうかは、医療機器認証番号の有無で確認できます。医療機器認証を受けたパルスオキシメータを活用し、正確な数値で日々のバイタルサインを知り、健康管理に役立てましょう。
今回はパルスオキシメータを正しく理解していただくためのお話をしました。最後に、パルスオキシメータの測定値を決して自己判断するのではなく、あくまで一助として活用しながら、何か異変を感じることがあれば、医療機関やかかりつけ医に相談することをお勧めします。
参考文献:
1. 日本呼吸器学会「よくわかるパルスオキシメータ」
2. 日本呼吸器学会「Q&Aパルスオキシメータハンドブック」
3. 厚労省「承認・認証されたパルスオキシメータについて」
Dr.心拍
総合病院勤務医として臨床や研究に従事する医学博士。複数の専門医資格を有し、論文執筆や国内外の学会発表を行いながら、若手の指導にもあたる。これまで培った経験を生かして医師ライターとしても活躍。専門知識を生かして監修や編集、Webディレクターとしても活動している。最近は予防医学、デジタルヘルス、遠隔医療、AI、美容、健康、睡眠などに関心を広げ、デジタルヘルス企業に関する記事の連載も行っている。様々な企業との連携やコンサルティングも経験し、幅広い分野での貢献に努めている。

パルスオキシメータ
※このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。