vol.205 冷房によるのどの乾燥予防~夏風邪を予防するには?~
ヘルシーライフ
暖かくなってくると、冷房を使用する時間が長くなり、のどが乾燥していると感じることがありますよね。また、冷房をつけっぱなしで寝てしまって、体調を崩したりなんてこともあるかもしれません。
今回は、夏風邪を予防するには?というお話をお伝えします。

夏風邪とは?
そもそも、夏風邪というのはどういうものなのでしょうか。「風邪」というと冬にかかるイメージがありますが、夏に流行するウイルスに感染することにより風邪のような疾患を起こすことがあります。これを一般的に「夏風邪」とよんでいます。
夏かぜを起こすウイルスは主に乳幼児に感染し、手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱ともよばれる咽頭結膜熱といった病気を引き起こします。
手足口病は手足や口腔粘膜に水疱と発熱がみられ、エンテロウイルスが原因で起こります。治療は基本的には対症療法のみで予防するワクチンなどもありません。
ヘルパンギーナは発熱と口腔粘膜にあらわれる水疱性の発疹がみられ、エンテロウイルス属のウイルスが原因で起こります、乳幼児を中心に夏に流行し、対症療法で経過を見ます。
咽頭結膜熱は発熱、咽頭痛、結膜炎がみられ、アデノウイルスが原因で起こります。眼の症状が強く出た際には眼科的治療が必要になることもありますが、基本的には対症療法となります。
夏風邪を代表する3つの病気をご紹介しましたが、その予防には接触あるいは飛沫の予防のため、手洗い、うがい、マスク着用などが有効です。
夏風邪予防にのどの加湿も有効?
のどや鼻の粘膜の表面は、空気を吸い込んだ際にウイルスや細菌の侵入を防ぐため、「線毛(せんもう)」で覆われています。その線毛が乾燥していると、異物を体外へ押し出す力が弱くなる為、ウイルスが体内に取り込まれやすくなります。
2015年にアイスランド大学の研究者がまとめた総説によると、線毛による異物を除去する機能が乾燥により阻害されるそうです。他にも40度以上あるいは30度以下でも阻害されるため、のどのためには湿度や温度管理も大切であることがわかります。
また、のどの粘膜は常に侵入してくる異物を排除しようとしているため、実は相当なストレスがかかっています。ストレスや空気の乾燥による粘膜のダメージをケアするためにも、線毛には常にうるおいを与え続け、侵入・付着した異物やウイルスを体外へ排出することが重要です。
のどの粘膜が乾燥すると異物を排除する機能が落ちてしまうため、冬は加湿器を利用しているという人も多いでしょう。夏は湿度が高いのでついつい除湿を意識するあまり、冷房時の乾燥にまで気が回らないことが多いと思います。冷房時の乾燥にこまめなうがいやマスクの着用、加湿をお勧めします。
熱中症や脱水症対策について
毎年夏になると、熱中症や脱水症で特に高齢者の方が病院に救急搬送されてくるケースがあります。ふらふらする、のどが渇いたと自覚したときには既に熱中症や脱水症を発症していることがあります。熱中症予防には意識的に水分・塩分補給をすることが厚労省からも推奨されています。また、高齢者に限らず「健康のため水を飲もう」というような啓発も厚労省から行われています。特に高齢者の方は熱中症や脱水症のサインに気づきにくいということがありますので注意が必要です。
のどを潤わせる手軽なアイテムとして「吸入器」の活用は?
これまでお伝えしたように、のどの乾燥は異物を排除する機能が落ちてしまいます。
夏風邪の対策の一つとして、のどの乾燥に注目して、吸入器によるのどの加湿の効果を試してみてはいかがでしょうか。
また高齢者の方には熱中症や脱水症に十分な水分補給をしていただきながら、のどの潤いにも役立ててもらうのも良いかもしれませんね。

参考文献:
- 神奈川県衛生研究所「夏かぜにご用心!」
- NIID 国立感染症研究所「手足口病とは」
- NIID 国立感染症研究所「ヘルパンギーナとは」
- NIID 国立感染症研究所「咽頭結膜熱とは」
- Biol. Pharm. Bull. 38, 497-506 (2015)「The Effect of Cilia and the Mucociliary Clearance on Successful Drug Delivery」
- 厚労省「熱中症予防の普及啓発・注意喚起について(周知依頼)」
- 厚労省「「健康のため水を飲もう」推進運動」
Dr.心拍
総合病院勤務医として臨床や研究に従事する医学博士。複数の専門医資格を有し、論文執筆や国内外の学会発表を行いながら、若手の指導にもあたる。これまで培った経験を生かして医師ライターとしても活躍。専門知識を生かして監修や編集、Webディレクターとしても活動している。最近は予防医学、デジタルヘルス、遠隔医療、AI、美容、健康、睡眠などに関心を広げ、デジタルヘルス企業に関する記事の連載も行っている。様々な企業との連携やコンサルティングも経験し、幅広い分野での貢献に努めている。

吸入器
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