2005.10.07

vol.28 ペットと健康的に暮らすために

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動物に由来する感染症

Vol.28 ペットと健康的に暮らすために 日本では今、空前のペットブームといわれ、犬や猫、小鳥などのほか、サル、アライグマ、ヘビ、カメなどのエキゾチックアニマルまで、さまざまな動物が家庭で飼われています。
それに伴って、ペットが原因となる感染症が増えていることをご存じでしょうか。ペット感染症は、“動物由来感染症”ともいわれるように、もともと動物がもっている菌やウイルスが私たちに感染し、発病するものです。昔からネズミが媒介するペストや、蚊が媒介する日本脳炎はよく知られています。また、中高年の人なら子どものころ、「狂犬病の危険性があるから、野良犬に近づいてはいけません」と親から注意されたこともあるでしょう。
これらの重大な感染症は、国を挙げての衛生対策や予防注射の義務化などによって、国内ではほとんどみかけなくなりました。しかし一方で、新型肺炎=SARS(※1)や鳥インフルエンザなどの発生が新たな社会問題ともなっているように、動物に由来する感染症は多様化しています。
ペットの世界でも、今まで日本にはないといわれた感染症もみられるようになり、ペットとの付き合い方を見直してみる必要性が高まっています。

(※1)新型肺炎は2003年に中国各地で数多くの患者が発生して社会問題となり、日本への影響も懸念されました。原因は特定されていませんが、ハクビシンやコウモリなどの動物がもつ菌やウイルスによるものと考えられています。

ペット感染症って、どんな病気?

昔から家庭で飼われてきた犬や猫、小鳥などのペット類は安全だ…そう思っている人は多いでしょう。ところがこうしたペット類も、人に感染するさまざまな病原菌をもっています。
例えば世界中でよくみられる、Q熱という感染症があります。発病すると高熱、頭痛、悪寒、筋肉痛と、インフルエンザによく似た症状がみられます。このQ熱は、猫などの糞尿に混じった病原菌が原因となる感染症です。従来、日本には存在しないと考えられてきましたが、近年の調査から、ペットを含む多くの家畜が菌をもっていることがわかっています(※2)。
Q熱に感染しても、健康な人なら風邪をひいた程度の症状で済みます。しかし、治療が遅れて悪化させると、気管支炎や肺炎、髄膜炎などを起こすことがあり、油断はできません。
Q熱に限らずペット感染症の多くは、健康な人の場合には症状は軽く、なかには気が付かない人もいるほどです。ところが免疫力が弱いお年寄りや子どもの場合には、悪化しやすい傾向がみられます。また、糖尿病の人やその予備軍といえる血糖値が高めの人なども、悪化しやすいので注意が必要です(※3)。
ペットを飼っていて、次のような症状がみられたときには、早めに受診しましょう。

1.原因不明の発熱や倦怠感、下痢などが続いた場合
2.ペットにかまれたり、引っかかれた傷が化膿し、治りにくい場合
3.原因不明の皮膚病が起きた場合


受診したときには、どんなペットを飼っているかを、医師に告げることも大切です。

(※2)猫などの動物自身は、Q熱の病原菌をもっていてもほとんど発病しません。また、ワクチンも開発されていないので、予防のためには動物病院でペットの検査を受け、治療しておくことが大切です。

(※3)糖尿病になると、血液の流れが悪化したり、免疫力が低下し、皮膚疾患になりやすかったり、傷などが治りにくくなる傾向がみられます。ペット感染症が悪化しやすいのも、同様の理由からと考えられています。

知っておきたい主なペット感染症

日本では50種類以上のペット感染症が確認されていますが、主なペット感染症には次のようなものがあります。

●オウム病
オウムやセキセイインコ、カナリアなどの小鳥から感染する病気です。病原菌(クラミジア菌)は鳥の糞や唾液などに含まれているため、乾燥した糞が飛んだものを吸い込んだり、鳥がくしゃみをしたり、口移しでエサを与えたときなどに感染を起こします。オウム病も、発熱、頭痛、せき、倦怠感など、インフルエンザや風邪とよく似た症状がみられます。

●猫引っかき病
猫に引っかかれたり、犬にかまれたりしたとき、病原菌(バルトネラ菌)が感染し、傷口が化膿する病気です。免疫力が低下していると、リンパ節が腫れたり、髄膜炎を起こすこともあります。ノミが媒介することもあるので、ノミの駆除も大切です。

●パスツレラ症
犬や猫にかまれたり、引っかかれたりしたとき、病原菌(パスツレラ菌)が原因で起こる感染症です。ほとんどの犬や猫がもっている菌で、通常は感染しても炎症程度で済みますが、悪化すると敗血症になることもあります。

●Q熱
猫による感染が中心ですが、犬にもみられ、病原菌(コクシエラ菌)に感染すると、前述したようにインフルエンザのような症状を起こします。

●トキソプラズマ感染症
猫の糞中にみられる寄生虫(トキソプラズマ原虫)が原因となる感染症です。健康な人には症状はほとんど出ませんが、妊娠中の女性が初めて感染した場合には、流産や胎児への影響が懸念されます。ただし、感染しても抗生物質などで治療できるので、主治医に猫を飼っていることを告げ、検査を受けておくと安心です。

●エキノコックス症
北海道のキタキツネや犬の糞に混じった、寄生虫(サナダムシ)の卵が原因となる感染症です。卵はヒトの体内でふ化し、肝臓に寄生して成長するため、感染すると5~10年後に肝機能障害を起こしやすくなります。最近、北海道以外の地域の飼い犬からも発見され、ペットへの広がりが懸念されています。

●食中毒
食中毒というと食べ物を連想しますが、爬虫類やカメなどさまざまな動物の糞に混じっているサルモネラ菌などに感染した場合も、下痢や腹痛などの食中毒を起こすことがあります。

狂犬病の予防注射を忘れずに

日本国内では狂犬病はみられなくなっていますが、最近、2つの理由からまた注目されています。
ひとつは海外旅行のときに、犬などにかまれるケースです。路上で見かけた犬をなでようとしたり、エサをやろうとしてかまれる人が増えています(※4)。海外では犬に対する狂犬病の予防注射が徹底されていない地域(国)も多く、報告されているだけで年間3万~5万人もの人が亡くなっています。
それだけに海外で犬などにかまれた場合には、早めに病院で発病を防ぐワクチン注射をしてもらうことが大切です。狂犬病はもし発病すると、ほぼ100%の確率で死に至る恐ろしい感染症です。ただし発病前なら、かまれた後でもワクチンは効果があります。
狂犬病は犬だけでなく、海外ではアライグマやコウモリなどから感染したケースも少なくありません。こうした動物にはできるだけ触れないようにし、かまれた場合は病院でワクチン接種を受けるようにしましょう。
狂犬病が注目されているもうひとつの理由は、犬の飼い主のモラルの低下です。日本では狂犬病が撲滅されたこともあって、その怖さを知らない飼い主が多く、法律で義務付けられている犬への予防注射を受けない人が増えているのです。そのため輸入動物などから、ペットの犬への感染が懸念されています。
狂犬病にかかると犬は凶暴になり、みさかいなく人をかもうとします。非常に危険なので、犬を飼う場合には必ず狂犬病の予防注射を受けるようにしましょう。

(※4)都立駒込病院の報告(高山直秀医師による調査)では、海外旅行中に犬などにかまれ、帰国後に予防のため同病院を受診した人は、1990年代前半には数人~10人程度でしたが、2000年には80人前後にまで急増しています。

ペットと上手に付き合うには

ペット感染症が増えている原因のひとつは、家庭でのペットとの付き合い方が必要以上に密になっていることです。
ペットを室内で飼う人が増え、子どものようにかわいがる人も少なくありません。ペットには癒し効果もあるので、フレンドリーな付き合いは大切ですが、同時にさまざまな病原菌をもっていることを忘れてはいけません。
例えばペットに口移しや自分のはしなどでエサを与えたり、ペットと同じベッドで寝ていると、どうしても唾液や糞尿が付きやすくなり、感染の機会も多くなってしまいます。また室内で飼っているペットは、ストレスなどから人にかみついたり、引っかいたりすることもあります。
それだけにペットを飼う場合には、人の生活とけじめをつけるようにし、しつけをしっかり行うこと。また、運動などでペットのストレスを解消してやることが大切です。

次のことを守って、ペット感染症を予防しましょう。

  • 過剰な触れ合いはしない
  • ペットに触れたら手を洗う
  • ペットのトイレはいつも清潔にしておく(トイレの片付け後はよく手を洗う)
  • ペットが使用するタオルなどはこまめに洗う
  • ペットにかまれたり、引っかかれたときは、傷口をよく洗い、消毒しておく
  • 犬の予防注射と登録を必ず行う
  • エキゾチックアニマル(犬、猫以外の小動物、爬虫類、鳥類、その他)は、とくに幼児やお年寄りのいる家庭ではできるだけペットにしない
  • 風邪(インフルエンザ)や皮膚病などの症状が出たら早めに受診する
  • 日ごろからかかりつけの動物病院を見つけ、ペット自身の健康管理に気を付ける

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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