2003.09.10

vol.3 脳が元気になると、脳卒中や痴呆も予防できる(食べ物編)

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脳と健康の密接な関係

Vol.3 脳が元気になると、脳卒中や痴呆も予防できる(食べ物編) 私たちの脳は、重さにすると全体重の約2%にすぎませんが、食事などから得るエネルギーの約18%を消費しています。これは体中のすべての筋肉が消費するエネルギーとほぼ匹敵するほどです。脳がこれほど大量のエネルギーを必要とするのは、千数百億個といわれる膨大な数の神経細胞の活動を支えるためです。 神経細胞というのは、生きていくために必要なあらゆる情報を伝達するケーブルのようなものです。神経細胞にはたくさんの接点(シナプス)があって、神経細胞どうしがつながって情報交換のネットワークが形成されています。このシナプスの部分で、情報をやり取りする役目をしているのが、アセチルコリンやノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミンといった神経伝達物質です(*1)。 近年の脳の研究によって、神経伝達物質は私たちの健康と深いつながりがあることが分かってきました。たとえばアセチルコリンは、記憶や認知能力に関係する物質で、これが不足すると痴呆症状が起こります。日本人の痴呆のおよそ半数を占めるアルツハイマー型痴呆では、実際にアセチルコリンの減少が確認されています(*2)。

(*1)神経伝達物質は現在分かっているだけでも二十数種類あるといわれています。ここで取り上げたアセチルコリン、ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミンは、そのうち脳での働きが比較的よく分かっているものです。そのほか女性ホルモンのエストロゲンも、神経細胞の働きに影響をもっていることが知られています。
(*2)アルツハイマー型痴呆の治療に使われる代表的な薬は、アセチルコリンの働きをよくすることで、症状を改善し、進行を抑えるタイプの薬です。このことからも、アセチルコリンがアルツハイマー型痴呆に大きな影響を及ぼしていることが分かります。

心や感情も神経伝達物質に影響される

また最近は、中高年のうつ病が社会的な問題となっています。その背景には、リストラや老後への不安などといったさまざまな要因がありますが、うつ状態になる人の脳では、ノルアドレナリンやセロトニンといった神経伝達物質の減少がみられます。
ノルアドレナリンは集中力や積極性に関係する物質で、セロトニンは気分を調節する物質です。そのためこれらが不足すると、仕事や遊びに対する持続性や関心が薄らぎ、イライラ感や気分の落ち込みが生じやすくなります。つまり、うつ病の症状が出てくるわけです。セロトニンが不足すると、そこからつくられるメラトニンという誘眠物質も不足し、眠れないといった睡眠障害が起こります。そのため脳が休養できなくなり、神経伝達物質の働きがさらに低下するという悪循環におちいることにもなります。
ドーパミンは、「快感ホルモン」ともいわれるように、楽しさや心地よさといった感情を生み出す物質です。子供の頃はドーパミンの分泌が盛んなので、ちょっとしたことでも楽しく感じ、大喜びします。それだけやる気も出てきます。ところが年齢とともにドーパミンの分泌量が減少するため、中高年になると物事への感動が薄らぎ、楽しいと感じることも少なくなりがちです。
ドーパミンにはもうひとつ、体の動きをコントロールする重要な役割もあります。中高年になると、体の動きがスムーズでなくなるのは、ドーパミンの減少が一因といわれています(*3)。

(*3)ドーパミンは過剰になると統合失調症を、不足するとパーキンソン病を発病しやすいことが知られています。また、中高年男性の性的能力の衰えも、ドーパミンの減少が関係しているといわれています。

脳を元気にする食べ物

ブレイン・フーズという言葉を聞いたことがありますか。ブレイン・フーズとは、脳を活性化させる食べ物のことです。
その代表的なものは、大豆食品(大豆の煮豆、豆腐、納豆、枝豆、おから、きな粉など)です。大豆には、レシチンやチロシンという栄養素が多く含まれています。レシチンは、体内でアセチルコリンに変わります。またチロシンには、ノルアドレナリンやドーパミンの分泌を高める作用があります。それだけに神経細胞の活性化には、大豆食品が最適だといえるでしょう。
レシチンは、ビタミンCと一緒にとるとアセチルコリンの生成がより高まります。レシチンを多く含む食べ物には、ほかに卵黄や小麦全粒粉があります。一方のチロシンは、鶏肉や魚介類、乳製品にも多く含まれています。
成人の場合、脳の神経細胞は、1日平均10万個のペースで死滅していきます。これを補うには脳の原料であるたんぱく質が必要ですが、良質のたんぱく源である大豆食品は、その意味でも脳の老化予防に非常に重要な食品だといえます。

セロトニンが不足するときれやすくなる

私たちの気分を調節しているセロトニンは、トリプトファンというアミノ酸から生成されます。そのとき炭水化物を必要とするため、主食となるご飯やパンをしっかり食べることが大切になります。
よく「朝食を食べない子供はきれやすい」といわれるのは、セロトニンの不足によりイライラ感がつのることが原因です。また、失恋した女性などにみられる過食は、心の満足感を得たいためにセロトニンを補おうとする無意識の行為だといわれています。
そうした特殊な例は別にしても、セロトニンは加齢やストレスなどによっても減少しがちなので、本当に主食の炭水化物をしっかりとる必要があるのは、中高年の人だといえるでしょう。
また炭水化物は、体内ではブドウ糖に変わります。このブドウ糖こそ、脳の基本的なエネルギー源です。しかし、脳ではブドウ糖の蓄積ができないので、どんどん消費されます。それだけに3食をきちんと食べること、そして主食をしっかり食べることが、脳を元気にする基本であるといえます。

魚を食べると、なぜ頭が良くなるの?

DHA(ドコサヘキサエン酸)も、神経細胞の活性化には欠かせないものです。「魚を食べると頭が良くなる」という歌(「おさかな天国」)が少し前にはやりましたが、魚の脂肪にはDHAが豊富に含まれています(*4)。
私たちの体内では、DHAは脳の神経細胞や目の網膜に多くみられます。とくに神経細胞ではシナプスの働きを良くする作用があり、DHAが増えるとアセチルコリンなどの神経伝達物質が活性化されるので、記憶力や理解力などが向上します。反対に痴呆症の人の脳では、神経細胞のDHAが減少していることが知られています。
ただDHAは酸化されやすく、また神経細胞も活性酸素による酸化障害を受けやすいという弱点があります。ですから魚を食べるときはできるだけ新鮮なものを選ぶようにし、同時に抗酸化作用をもつビタミンCやカロチノイドなどを含む食品(野菜、果物類)と一緒にとることが大切です。

(*4)DHAはほとんどの魚の脂肪(脂)に含まれていますが、とくに豊富なのはイワシやサバなどの青魚です。

脳の活性化と生活習慣病

大豆(レシチン、チロシン)や魚(DHA)には、もうひとつ重要な働きがあります。それは、善玉コレステロール(HDL)を増やし、反対に悪玉コレステロール(LDL)や中性脂肪を減らして、血液をサラサラにしてくれること。つまり動脈硬化を予防する働きがあるのです。DHAには血小板の凝固を防ぎ、血栓ができるのを予防する効果もあるといわれています。
日本人の死亡原因の第1位はがん(悪性腫瘍)ですが、それに次いで多いのが心臓病(心筋梗塞、狭心症など)と、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)です。どちらも血管系の病気で、その直接的な原因となるのが動脈硬化です。
また、アルツハイマー型痴呆と並んで日本人に多い脳血管性痴呆は、脳梗塞や脳出血が原因となって発症します。
それだけに、脳を元気にする食べ物をとることは、同時に動脈硬化や痴呆などの生活習慣病の予防にもつながることになります。
  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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