vol.49 熱中症の対処法・予防法を知っておこう

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熱中症が急増している

高温の日が続く盛夏、気を付けたいのが熱中症です。とくに都市部では近年、熱中症になる人が急増しています。東京消防庁管内では、6~9月に熱中症のため救急車で搬送された人の数が1996年には197人であったのに対し、2005年には918人にも達しているほどです(※1)。
熱中症はニュースでも取り上げられるので、名前を知っている人は多いでしょう。でもその一方で、思い違いも少なくありません。あなたは次のように思っていませんか。

1. 熱中症はお年寄りが気を付ける必要がある。
2. 熱中症というのは一つの症状(病気)だ。
3. 熱中症の改善や予防には水分をとればいい。

これらはいずれも正しい知識とはいえません。
例えば1. 熱中症はお年寄りに限らず、10歳以上の世代では発症数に大きな差はありません(※2)。だれでもいつでも、ちょっとした油断から熱中症になりうることを知っておきましょう。

(※1)東京消防庁管内の救急搬送の数値。最も多いのが7月と8月で、この2ヵ月の比較でも1996年(179人)、2005年(688人)と急増しています。

(※2)熱中症で救急搬送された人の世代別人数(東京消防庁管内、2005年)。10歳未満(19人)、10歳代(128人)、20歳代(108人)、 30歳代(89人)、40歳代(82人)、50歳代(93人)、60歳代(86人)、70歳以上(173人)。70歳以上の数値が多いのは、80歳代、 90歳代などを含むため。

vol.49 熱中症の対処法・予防法を知っておこう

熱中症には3つのタイプがある

熱中症は一つの症状(病気)と思っている人も多いのですが、実は次のような3つのタイプがあります。

(1) 熱けいれん

大量に汗をかいた時、血液中の塩分濃度が低下することで起こります。主な症状は、足や腹部などの筋肉のけいれんで、こむら返りのように痛みを伴うことが少なくありません。

(2) 熱疲労

汗をかくことによる脱水症状や、からだの熱を放散するために血管が拡張して血圧が低下することで起こります。主な症状は、めまい、吐き気、頭痛、失神などです。

(3) 熱射病

体温調節機能に障害を起こし、体温が急激に上昇することで起こります。主な症状は、発熱(40度くらいの高熱)と意識障害で、放っておくと非常に危険です。

この3つのタイプで気を付けたいのは、対処法が違うことです。一般に熱中症では、水分を十分にとることが症状の改善や予防には必要とされます。ところが、(1)の熱けいれんの場合には、水だけを飲むとかえって悪化してしまいます。 なぜそんなことが起こるのか、まず熱けいれんについて知っておきましょう。

熱けいれんには塩分補給を

熱けいれんは、炎天下での長時間の仕事やスポーツ(野球、ゴルフ、サッカー、テニスなど)で、大汗をかいたあとに起こりやすい症状です。
汗をかくと、私たちのからだからは水分だけでなく、塩分(ナトリウム)などのミネラル類も大量に失われます。とくに血液中の塩分濃度が低下すると、電解質の不足から筋肉がけいれんを起こしやすくなります。足の太ももやふくらはぎ、お腹の筋肉などが急にけいれんを起こした場合には、熱けいれんを疑う必要があります。
熱けいれんが起きた場合に注意したいのは、水だけを飲むと血液中の塩分濃度がさらに低下し、症状が悪化しやすいことです。ナトリウムを含むスポーツドリンクや、食塩水(水500ミリリットルに対し、塩3~4グラム程度)を飲むようにしましょう。
塩分と水分を補給してしばらく休んでいれば、通常の熱けいれんなら治まります。ただし、からだが熱くなり、意識もはっきりしないような場合には、次に説明する熱射病などを併発している可能性もあるので、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。

熱疲労と熱射病の対処法

熱疲労の場合は、脱水症状や血圧の低下から、さまざまな症状がみられます。なんとなく気分が悪くなって、顔も青白くなり、さらにのどの渇き、めまい、倦怠感、吐き気、頭痛、発熱などを伴うこともあります。
対処法としては、木陰など風通しのよい涼しい場所に移動し、洋服のボタンやベルトなどをはずし、水分を多めにとって休むようにします。熱けいれんと区別がつきにくいこともあるので、できればスポーツドリンクや食塩水を飲むほうがいいでしょう。
熱疲労の状態を放置していたり、気が付かないでいると、汗が出なくなり、体温が急激に上昇し(40度くらいになる)、熱射病に陥ります。意識がもうろうとし、受け答えがきちんとできない、自分では動けないといった重い症状が起こります。
だれかが熱射病で倒れた場合には、すぐに救急車を呼ぶようにしましょう。処置が遅れると生命にかかわることもあるので、救急車を待つ間も、周囲の人に呼びかけて涼しい場所へ移し、からだを冷やします。洋服を脱がせ、からだに冷水を浴びせたり、冷たい濡れタオルを当て、うちわなどであおいで冷やします。とくに首の両側、わきの下、内股の付け根をアイスパックなどで冷やすと、体温を下げるのに効果的です。

熱中症にかかりやすいタイプとは

だれでも熱中症になる可能性がありますが、とくに次のような人は注意が必要です。

・毎年夏バテしやすい人

体力や持久力に自信がない人は、暑い時期には無理をせず、睡眠や休息を十分にとることが大切です。

・スポーツをする人

体力に自信があっても、過信は禁物。炎天下でのスポーツはできるだけ避けます。

・夏風邪をよくひく人

夏風邪などを放置していると、抵抗力が低下し、暑さもこたえやすい状態になります。

・肥満気味の人

太っている人には汗かきの人が多く、塩分などのミネラル分を消失しやすいので注意が必要です。

・高齢の人

高齢になると、暑さやのどの渇きを感じにくくなります。外出時はもちろん、自宅など室内にいるときにも定期的に水分をとることが大切です。

熱中症の予防のために

熱中症は、ちょっとした注意で予防することができます。次のようなことを心がけましょう。

・気温が急上昇した日はとくに注意

急に気温が高くなった日に、熱中症は多発します。天気予報で最高気温を確認し、暑くなりそうな日は服装や水分補給には十分に注意します(※3)。

・出かけるときは帽子や日傘を

帽子や日傘があると、直射日光を避け、からだが感じる温度を下げることができます。

・こまめに水分をとる

のどが渇いていなくても、1時間に一度くらいは水分の補給を。

・スポーツ時には塩分補給も

屋外でスポーツや長時間の仕事をする場合は、スポーツドリンクか食塩水を用意し、こまめに飲むようにします。梅干を用意しておくのもいい方法です(※4)。

・体調が悪いときは無理をしない

風邪をひいているとき、寝不足気味のときなどは、無理をしないこと。

・おかしいなと感じたら休む

外出時には、意識的にときどき休憩をとるようにします。また、めまいや気分が悪くなったときは、早めに涼しい場所に移動し、休むようにします。

(※3)前日まで最高気温が30℃以下だったのが、急に35℃以上になった日と、その後の数日は、とくに多発しやすいので注意が必要です。

(※4)高血圧の治療などで塩分調整をしている人は、医師に相談してください。

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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