OMRON All for Healthcare

2007.12.10

vol.54 高血糖とがんとの密接な関係とは

LINEで送る 一覧に戻る

糖尿病とがんの共通点は

Vol.54 高血糖とがんとの密接な関係とは 血糖値が高い人は、アルツハイマー病やがんにかかりやすく、また心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすい…最近こうした調査結果が相次いで発表され、話題となっています。
例えば九州大学の調査では、糖尿病やその予備軍の人は、アルツハイマー病のリスクが4.6倍にも高まると報告されています。また、がんによる死亡リスクは3.1倍になり、心筋梗塞や脳梗塞になるリスクはそれぞれ2.1倍、1.9倍になるとされています(※1)。
血糖値が高いと、なぜこれらの病気になりやすいのでしょうか。そのメカニズムにはまだ不明の点が多いのですが、比較的わかってきている「高血糖とがん」との関係について、今回はご紹介しましょう。
一般的には、糖尿病(2型糖尿病)とがんは、まったく別の病気といえます。
しかし、どちらも生活習慣病であるという共通点があります。とくに「肥満、運動不足、喫煙」は、糖尿病にもがんにも関係する典型的な生活要因です。
また糖尿病は、すい臓から分泌されるインスリンの働きが悪化することから起こります。そのインスリンが実は、がん細胞の抑制や増殖にも関係しているらしいことがわかってきています。
ただし、がんにはさまざまな種類があります。どのようながんが、とくに注意が必要とされるのでしょうか。

(※1)九州大学の清原裕教授らが、福岡県久山町の住民約800人を対象に15年間にわたり追跡調査したもの。

注意したいがんの種類

厚生労働省の研究班の調査によると、糖尿病の人の場合、男性で約27%、女性では約21%、がんを発症するリスクが高くなるという結果がみられます(※2)。
この数値だけをみると、それほど大きなリスクとは感じないかもしれません。ところが、がんの種類別にみると、かなりリスクが高いものがあります(別表参照)。
男性の場合になりやすいのは、肝臓がん、腎臓がん、すい臓がんなどで、リスクは2倍前後にもなっています。女性では、卵巣がんのほかに、肝臓がんや胃がんでリスクが高くなっています。

<糖尿病既往とその後のがんとの関連>

既往なしの人を1とした場合のリスク
<男性 1.27>
・肝臓がん 2.24
・腎臓がん 1.92
・すい臓がん 1.85
・結腸がん 1.36
・胃がん 1.23

<女性 1.21>
・卵巣がん 2.24
・肝臓がん 1.92
・胃がん 1.85

(※2)厚生労働省研究班により全国各地の計10万人(40~69歳)を対象とした調査(2006年発表)。

がん発生のメカニズムとは

血糖値が高いと、なぜがんを発症しやすいのでしょうか。まだ明確にはなっていませんが、血糖値が高くなるとインスリンの分泌にも変化が生じ、それが関係していると推定されています。
肥満などの原因から血糖値が上がると、すい臓はより多くのインスリンを分泌するため、血液中のインスリン濃度が慢性的に高い状態を引き起こします(高インスリン血症)。また、インスリンと似ているIGF-1(インスリン様成長因子1)の分泌も盛んになります。
こうした物質の増加が、肝臓や腎臓、すい臓などの細胞に影響を及ぼし、細胞のがん化や増殖を引き起こすと考えられています(※3)。
また肝臓や胃では、肝炎ウイルスやピロリ菌などの感染も関係している可能性があります。
九州大学による久山町の調査では、高血糖に加えてピロリ菌の感染がある人の場合は、どちらもない人と比較すると、胃がんの発症リスクが3.5倍になるという報告もみられます。しかも高血糖の状態を放置している期間が長いほど、リスクが高くなる傾向があります。そのため予備軍段階から、きちんと血糖値をコントロールすることが大切だといえます。

(※3)高インスリン血症は動脈硬化を促進する要因ともなり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高めます。

予防には生活習慣の改善を

生活習慣の面でも、高血糖とがんには共通する要因がいくつかあります。とくに注目されているのは「肥満、運動不足、喫煙」の3つです。

(1) 肥満はなぜいけないのか

脂肪組織が増えると、TNF-αなどの抗インスリン物質の分泌量が多くなり、インスリンの働きが低下します(インスリン抵抗性の状態)。するとすい臓はインスリンを増産し、血液中のインスリン濃度が高くなります(高インスリン血症の状態)。その結果、糖尿病を招き、先ほど紹介したメカニズムによって、がんも発症しやすくなります。
肥満が解消されると、インスリンの働きも改善され、分泌量も適正になることがわかっています。糖尿病とがんの予防のために、肥満を放置せず、食生活(食事の種類や量など)を見直しましょう。

(2) 運動不足はなぜいけないのか

すい臓から分泌されたインスリンは、筋肉などにあるインスリン・レセプター(受容体)に取り込まれることで、ブドウ糖をエネルギーに変えます。運動不足になると筋肉量が減るため、筋肉中のインスリン・レセプターも少なくなり、インスリンが体内にあふれる状態になります(高インスリン血症)。その結果、(1)と同様に糖尿病とがんを発症しやすくなります。筋肉量は中高年になるほど低下しやすいので、血糖値が高めの人は定期的な運動を続けることが大切です(血圧が高い人は、運動を始める前に医師に相談してください)。

(3) 喫煙はなぜいけないのか

喫煙が、肺がんなど多くのがんに関係していることは、よく知られています。一方、糖尿病との関係については不明な点が多かったのですが、最近の研究から、喫煙はインスリンの働きを低下させ、糖尿病を発症するリスクを高める要因となることがわかってきています(※4)。
また喫煙は、糖尿病を悪化させ、網膜症や神経障害などの合併症のリスクも高めるので、血糖値が高めの人は禁煙を心がけましょう。

(※4)一例として、大阪ガス健康推進チームと大阪市立大学の調査報告(2000年)によれば、たばこを吸わない人が糖尿病になるリスクを1とすると、喫煙者のリスクは平均で1.47倍になるとされています。また、1日の喫煙本数が多いほど、あるいは喫煙年数が長いほど、糖尿病のリスクも高くなることから、喫煙と糖尿病の関連性が指摘されています。

自身の「健康」についての考え方:ミュージシャン BEGIN 比嘉 栄昇さん

この記事をシェアする

LINEで送る
このページの先頭へ戻る