2008.02.08

vol.56 認知症...正しい知識で早期発見

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認知症にはさまざまなタイプが

Vol.56 認知症...正しい知識で早期発見 高齢社会の到来とともに、認知症への関心が高まっています。テレビや新聞などで認知症が取り上げられることも多いのですが、その一方で、認知症についてはまだ誤解も少なくありません。
最近は「アルツハイマー病」が話題になることが多く、認知症=アルツハイマー病と思っている人もいます。また、認知症は治らないと思い込んでいる人もいます。
でも認知症にはいくつかのタイプがあり、薬や食事などによって症状が改善されるものもあります。進行性の認知症であるアルツハイマー病の場合も、早くから治療を始めるほうが改善効果が高いことがわかってきました。
また認知症とよく似た症状がみられても、ほかの病気という場合もあります。自己判断で認知症と思い込むと、治療が遅れることにもなりかねません。
そのため認知症については、早めに受診して病名を確認し、適切な診断を受けることが大切だといえます。患者自身はもちろん、介護にあたる家族にとっても負担が少ないからです。
正しい知識を身に付け、早期発見につなげるとともに、予防や改善のために必要なことを知っておきましょう。

<認知症の主なタイプ>

(1) 脳血管性認知症 脳卒中(脳梗塞、脳出血)をきっかけに生じる認知症。背景には、高血圧や動脈硬化がある。
(2) アルツハイマー病 脳の委縮や老人斑(βアミロイドの沈着)を伴って、認知機能などが低下する認知症。明確な原因は不明。
(3) レビー小体型認知症 アルツハイマー病の一種で、特殊なタンパク質の固まり(レビー小体)が原因で生じる認知症。

※実際の症例では、これらを併発しているケースもあります。

脳血管性認知症を予防する

中高年になると動脈硬化などが原因で、脳卒中(脳梗塞や脳出血など)を起こしやすくなります。脳の一部がダメージを受けると、手足のまひや言語障害のほか、認知機能や記憶機能にも障害が及ぶことがあります。それが脳血管性認知症で、認知症全体の約20%を占めています。
認知症の初期症状というと「もの忘れ」を連想されるでしょうが、このタイプの場合には「やる気がなくなる」「できていたことができなくなる」といった生活行動面での変化が目立ちます。
例えば、仕事や趣味など物事への関心が薄れる、しっかりしていた人が不注意になる、着替えなど日常生活の手順がわからなくなる、居眠りが多くなる…といった症状です。
脳血管性認知症の場合、脳卒中を起こすたびに症状がストンと一段落ちるような感じで悪化します。そのため脳卒中を繰り返さないことが、予防にとって最も大切なことです。
一般に認知症は治らないと思われがちですが、このタイプは脳卒中の再発を防ぎ、リハビリを行うことで、症状が改善される可能性があります。それだけに「様子がおかしいな」と感じたら、早めに受診して脳梗塞のタイプなどを特定し、適切な治療を受けるようにしましょう(※1)。
脳卒中の再発予防には、生活上の注意も欠かせません。食事や運動の方法などについて、医師から指導を受けるようにします。とくに高血圧や動脈硬化がある場合には、細かい指導を受け、きちんとその指示を守る必要があります。
また、自分でも「身の回りのことは自分でする、積極的に人と接するようにする」など、脳やからだの機能を活性化する生活を心がけることが、予防につながります。

(※1)脳梗塞には、比較的太い血管に血栓ができるアテローム血栓性脳梗塞、細い血管が詰まるラクナ梗塞、心臓付近の血栓が脳に移動して起こる心原性脳塞栓などがあります。

アルツハイマー病は早期発見が大切

アルツハイマー病は現在、日本人の認知症の半数を占めるほどに増えています。
初期症状の一つが「もの忘れ」ですが、ある程度のもの忘れは中高年になるとほとんどの人が経験します。「あの人の名前、何だっけ?」「昨日の夕食、何食べたっけ?」といったことは、だれもが思い当たるはずです。これらは「ど忘れ」といわれるもので、あとから自分で思い出したり、家族や友人から教えてもらえば「ああ、そうだった」とすぐに納得できるものです。
しかし、もの忘れの症状が少しずつ重くなっていく場合には注意が必要です。少し前のことを忘れる、同じことを何度も言ったり聞いたりする、仕事や日常生活でうっかりミスを繰り返す…というように症状が悪化し、周りの人が「ちょっとおかしいな」と感じるケースです(軽度認知障害の段階)。
さらに症状が進むと、日付や時間、場所などがわからないといった状態になります。待ち合わせをしながら約束したこと自体を記憶していなかったり、食事をしたのに食べたことを忘れてしまう例もあります(アルツハイマー病の初期段階)。
アルツハイマー病は、このように何年もかけて症状が徐々に進行していきます。そのため本人も家族も、受診のきっかけがつかめないまま放置しているケースが少なくありません。
アルツハイマー病については近年、画像診断などの検査技術が進歩し、軽度認知障害のような早い段階でも診断ができるようになっています。早期発見ができれば、治療薬(進行抑制薬)によって進行を遅らせる効果も高くなります(※2)。
本人や家族などが「おかしいな」と感じた段階で、専門医のいる病院(もの忘れ外来など)を受診するようにしましょう。
また最近は、食事(野菜や果物)、適度の運動、趣味などを持ち人と交流すること…など、ライフスタイルの改善もアルツハイマー病の予防に効果的と考えられています。この点についても医師に相談した上で、積極的に取り組むことが大切です。

(※2)現在アルツハイマー病には根本的な治療薬はなく、進行を遅らせる塩酸ドネペジル(アリセプト)がほとんど唯一の薬として使用されています。この薬は、脳の情報伝達に必要とされるアセチルコリンの減少を抑え、認知機能の低下を改善するものです。

注目されているレビー小体型認知症

最近、レビー小体型認知症が日本人にも多いことがわかり、注目されています(※3)。
この認知症は、脳の神経細胞に特殊なタンパク質の固まり(レビー小体)ができて、認知機能が低下するものです(※4)。アルツハイマー病の一種ですが、症状にはかなりの違いがあります。
日付や時間、場所などの認識ができない症状もみられますが、それはあまり強くありません。最も特徴的なのは、幻視や妄想を伴うことです。 幻視というのは、いないはずの人の姿が見えることで、「部屋の隅に子どもがいる」と言ったりします。実際にはいないのですが、本人にははっきり見えるように感じるため、家族などが強く否定すると混乱したり興奮することもあります。
また「財布を盗まれた」「(配偶者が)浮気をしている」といった妄想を訴えたり、浅い睡眠状態のときに暴れることなどもあります。
さらにレビー小体はパーキンソン病の原因ともなるため、筋肉のこわばりや歩行障害、便秘や失禁など、パーキンソン病と同様の症状を併発する人もいます。
症状の改善には、アルツハイマー病に使われる塩酸ドネペジルが、レビー小体型認知症にはさらに有効とされているので、やはり早めに受診して適切な治療を受けることが大切です。また漢方薬の抑肝散が、幻視の解消に効果がみられる例も報告されていますが、副作用の可能性もあるので医師の指導のもとで使用するようにしましょう。

(※3)小阪憲司・横浜市立大学名誉教授らによって1976年以降に報告された新しいタイプの認知症。その後、日本人にも多いことが判明し、現在、認知症全体の20%程度を占めています。

(※4)レビー小体は、α-シヌクレインという有害なタンパク質の集まりです。α-シヌクレインはもともとパーキンソン病の原因物質として知られていましたが、最近の研究から脳幹部などに沈着するとパーキンソン病を、また大脳皮質などに沈着すると認知症を起こすことがわかってきました。

認知症と似た症状の病気

早期受診が大切なもう一つの理由に、認知症とほかの病気とを峻別することがあります。というのも、認知症とよく似た症状を示す病気がほかにたくさんあるからです。
例えば、正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫などです。
正常圧水頭症は、何らかの原因で脳の髄液の流れが悪化し、脳室が拡大する病気です。認知症とされる人のうち5~6%が、実際にはこの病気だと考えられています(※5)。
もう一つの慢性硬膜下血腫は、脳の硬膜の内側に少しずつ出血が起こり、血腫ができるものです。お年寄りの場合には転倒して頭を打ったあと、しばらくして起こることがあります。
どちらも脳の一部が圧迫されて障害を受け、認知症と似た症状が起こりますが、手術などによって治療することができます。
また、老人性のうつ状態、ビタミン不足による栄養障害、薬による副作用、肝臓や腎臓などの障害、不眠など、思いがけない病気によっても認知症と似た症状がみられることがあります。とくにお年寄りの場合は、ちょっとした感染症(例えば膀胱炎など)によっても情緒不安定になり、記憶や言動があやふやになったりすることもあるのです。
こうした病気の多くは、適切な治療を受ければ治すことができます。それだけに、「もしかしたら認知症?」と感じたときは、「年だから仕方がない」と決めつけるのではなく、受診して検査を受けるようにしましょう。

(※5)難病情報センターなどによる数値。

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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