vol.7 ビタミンで効果的に生活習慣病を予防する

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ビタミンの薬理作用

ビタミンはよく自動車の潤滑油にたとえられます。3大栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質)をガソリンとすれば、ビタミンはさまざまな機能がスムーズに働くようにする潤滑油のような働きをしているからです。
こうした調節機能のほかに、最近注目されているのはビタミンの薬理作用、つまり薬のように病気の予防や治療に役立つ働きです。すでにビタミンK2のように骨粗しょう症の治療薬として使われ、さらに肝臓がんの再発予防にも効果があると期待されているものもあります(*1)。
また、ビタミンCには抗酸化作用があり、がんの予防に効果があることは以前から知られていました。それだけでなく最近は、大量(1000~2000mg)に使うと、アポタンパクA-Iに働きかけてHDL(善玉)コレステロールを増やす効果があることから、高脂血症や動脈硬化の改善に役立つこともわかってきています。
こうした薬理作用に関する研究を基礎に、日常生活でのビタミンの使い方にも、大きな変化がみられるようになっています。

(*1)佐賀医科大学や東京大学の臨床研究で、既存の骨粗しょう症治療薬(ビタミンK2薬)を使用することで、肝臓がんの再発を3分の1程度に抑えられることが報告されています。ビタミンK2は納豆に多く含まれていますが、ワーファリンなどの抗血液凝固薬の作用を防げる働きもあるので、こうした薬を使用している人には注意が必要です。

vol.7 ビタミンで効果的に生活習慣病を予防する

ビタミンの相乗・相互作用

ビタミンを効果的に使う方法のひとつとして、複数のビタミンの相乗作用、あるいは相互作用が注目されています。
従来は、「効果があるとされるビタミンだけをとっていれば、病気の予防ができる」と考えられてきました。たとえばβカロチンはがん予防に、またビタミンE は心臓病の予防にというようにです。ところがその後の研究から、βカロチンを多くとるとかえってがんの発生を促進するという報告(*2)や、ビタミンEの錠剤を飲んでいても心臓病のリスクは低くならないといった報告までみられるようになっています。
そもそもβカロチンが注目されたのは、緑黄色野菜をたくさん食べる人にはがんが少ないという疫学調査がもとになっています。しかし、緑黄色野菜にはβカロチンだけでなく、αカロチンなどのカロチノイドが含まれています。αカロチンにも強い抗酸化作用があることがわかり、カロチノイド類の相乗作用によって抗がん効果が発揮されると考えられるようになっています。
したがってβカロチンだけをサプリメントなどでとるより、緑黄色野菜やそのジュースをとるか、ほかのカロチノイド類と一緒にとることが大切だといえます。

実際に生活習慣病になった人の体内では、いろいろなビタミン類が減少していることが知られています。たとえば肺がんなどのがんではβカロチンやビタミンE、狭心症などの心臓疾患ではビタミンC・Eやβカロチン、糖尿病ではビタミンAのほかB1とCの血中濃度が、それぞれ低下している傾向がみられます。
こうしたことからも、医師の指導によって治療目的でひとつのビタミンを大量にとる場合は別として、日常生活では複数のビタミンを上手にとることでその効果を高め、病気の予防につながるといえるでしょう。

(*2)βカロチンは体内でビタミンAに変わることから、ビタミンと同様の作用をもつ物質(ビタミン様作用因子)とされています。βカロチンの抗がん作用には、まだ明確になっていない面があります。βカロチンは活性酸素の働きを抑え、抗がん作用をもたらすものの、活性酸素にはがん細胞を攻撃する一面もあるため、必要以上に活性酸素が減少するとかえってがんが発生しやすくなるのではないか、という説もあります。

ビタミンCとEは一緒にとると効果的

ビタミンの相互作用のなかで、もっとも効果がはっきりしているのはCとEです。
どちらにも抗酸化作用がありますが、ビタミンEは体内で発生する活性酸素の働きを弱め、みずからが酸化すると効力を失ってしまいます。そのときビタミンE をふたたび活性化させるのが、ビタミンCなのです。したがってEをとるときはCも一緒にとることで、抗酸化作用がより向上することになります。
この2つは、動脈硬化の予防に相互効果をもたらすことがわかってきていますが、そのほかビタミンB1やB2、葉酸などにも同様の効果があると考えられています。
またビタミンBには、多くの種類があります。細かくみると、B1にはエネルギーの産生(疲労回復)、B2には皮膚や粘膜の保護、B12には血液(赤血球)の形成などの役割があります。
しかし、食べたもののエネルギー代謝を高めるという点では共通しています。そのため、日常生活の健康維持のためにはB群という形でまんべんなくとるほうが効果的だとされています。ちなみに胎児の発育や、心臓病・脳卒中などの予防に効果があると話題になっている葉酸も、ビタミンBのひとつです。

サプリメントを上手にとるには

ビタミンは食べ物からとるのが基本ですが、サプリメントを使っている人も少なくないようです。しかし、安全と思われているビタミン剤でも、とり方によっては副作用が出ることもあります。多くとる場合には医師や薬剤師に相談しましょう。また、それぞれのビタミンの特徴について知っておくことも大切です。
ビタミンには、水溶性と脂溶性のものがあります。水溶性ビタミン(B群、C)は尿と一緒に排出されてしまうので、多めにとっても心配ありません(*3)。一度にまとめてとるよりは、1日数回に分けてとるほうが効果的です。
ただし、水溶性ビタミンでも、B6や葉酸のように許容上限摂取量(1日に摂取できる上限の量)が決められているものもあるので、説明書をしっかり読んでおきましょう。
一方、脂溶性ビタミン(A、D、Eなど)は体内に蓄積しやすいので、必要以上にとらないようにしましょう。体内でビタミンAに変わるβカロチンも脂溶性です。 たとえばビタミンAは眼精疲労や皮膚疾患の改善に効果がありますが、その一方で過剰に摂取すると骨折のリスクを高めることが報告されています。ビタミンD はカルシウムと一緒にとると吸収を高める効果がありますが、大量にとるとビタミンD過多症におちいりやすいので注意が必要です。ビタミンEについては、目立った副作用は報告されていません。
また、脂溶性ビタミンは油に溶けやすいので、空腹時よりも食後にとったほうが吸収もよくなります。

(*3)ビタミンCは体内で代謝されてシュウ酸をつくるため、腎臓や尿管結石の原因となることがあります。結石のある人、なったことのある人、またなりやすい人は、必要以上にCをとるのはやめたほうがいいでしょう。

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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