vol.77 排尿トラブル...前立腺肥大症のチェックを

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ヘルシーライフ

増えている前立腺肥大症

最近どうも尿の出方がおかしい、回数が多くなった、終わったあとも尿意が残る…中高年になると、こうした排尿トラブルが多くなります。その原因には、過活動膀胱(かかつどうぼうこう)(※1)、腎臓や尿管の障害などさまざまなものがありますが、男性の場合に注意したいのが前立腺肥大症です。
前立腺は男性だけにある生殖器の一つで、精液の一部をつくるほか、排尿をコントロールする役目があります。前立腺は尿道を囲む位置にあるため、なんらかの理由で前立腺が肥大化すると尿道が圧迫され、いろいろな排尿トラブルが起こります。
原因はまだ明確になっていませんが、男性ホルモンの一種アンドロゲンが加齢によって減少すると、不足したアンドロゲンを取り込もうとして前立腺が肥大化するのではないか、と推測されています。
したがって男性の場合、前立腺肥大症は加齢にともなってだれにでも起こりうる病気だといえます。厚生統計協会の調査では、この15年間で患者数が3倍と急増しています(※2)。しかも受診している人は、潜在数の1割程度と考えられているので、実際にはとても多くの人が排尿トラブルをかかえていることになります。
トシのせいで仕方ない、受診がちょっと恥ずかしい…そんなふうに思っていませんか。放置していると、尿漏れなどで日常生活に支障をきたしたり、とつぜん尿が出なくなったり(尿閉)、トイレを気にして水分を控えすぎ脱水症状や脳梗塞などのリスクを高めてしまうこともあります。
また、腎臓に障害を起こしたり、症状が似ている前立腺がんに気づかないこともあります。初期段階なら生活改善や薬で治る可能性も高いので、早めに受診しましょう。

(※1)過活動膀胱は、加齢にともなう神経系のトラブルや膀胱の柔軟性の低下などによって、トイレが近い、我慢できなくなるなどの排尿トラブルを起こす病気です。近年知られるようになった病気ですが、高齢化にともない患者数が急増しています。前立腺肥大症が原因で、過活動膀胱になるケースもあります。

(※2)厚生統計協会の「患者調査(2002年)」によると、前立腺肥大症の患者数は1987年の約13万5000人に対し、2002年には約39万8000人となっています。しかし、まだ受診していない人が10倍程度いると推測されています。

vol.77 排尿トラブル...前立腺肥大症のチェックを

前立腺肥大症の症状とは

前立腺肥大症になると、人によって次のような症状がみられます。

(1) 尿の勢いがよくない。
(2) 尿が途中で途切れる。
(3) 終わったあとも尿が残っている感じがする(残尿感)。
(4) お腹に力を入れないと尿が出にくい(腹圧排尿)。
(5) トイレの回数が多い(頻尿)。
(6) 睡眠時に何度もトイレにいく(夜間頻尿)。
(7) 尿意を感じると我慢できない(尿意切迫)。
(8) 尿意があるのに出ない(尿閉)。

このうち典型的な初期症状といえるのが、(1)、(2)、(3)です。排尿に時間がかかり、終わったかなと思うとまだ出る、終わったばかりなのに残尿感があって落ち着かない、といった状態になります。それだけで前立腺肥大症とはかぎりませんが、受診のきっかけにしましょう。
(5)と(6)の頻尿も、わかりやすい自覚症状の一つ。一般に正常な排尿回数は、起きている時間帯で4~6回程度、夜間(睡眠中)は0~1回程度(多くても2回)とされています。急に寒くなった日や、薬の影響などで排尿回数が増えることはありますが、起きている時間帯に8回以上、あるいは夜間に2回以上行くようになったら要注意です。
(7)の尿意切迫は、尿意を感じると我慢ができず、トイレに駆け込んでも間に合わないといった状態です。(8)の尿閉と同様、日常生活に支障をきたしますし、自分ではコントロールできない状態なので、早く受診する必要があります。

前立腺肥大症のチェックをしてみよう

検査で病気を特定することが大切

前立腺肥大症と聞くと、前立腺がんを連想する方も多いのではないでしょうか。前立腺がんも患者数が急増していて、中高年男性には注意が必要な病気の一つです。
ただし、前立腺肥大症と前立腺がんは、まったく違う病気です。
前立腺肥大症は尿道に近い内腺という部分が肥大しますが、前立腺がんの多くは尿道から遠い位置にある外腺に発生します。しかし、がんが進行すると尿道を圧迫し、尿が出にくいといった前立腺肥大症とよく似た症状がみられるようになります。
また、前立腺がんの場合には、排尿時に痛みを感じたり、血尿が出ることもあります。ただ、こうした症状は腎臓や尿管に結石ができたときにも起こります。
したがって尿の勢いが弱くなったり、残尿感があるといった初期段階で受診し、検査を受けることで、まず何の病気かをしっかり見極めることが大切です。
前立腺肥大症は、直腸診(医師が肛門から指を入れて調べる)や超音波検査などで、比較的容易にみつけることができます。前立腺が肥大していても軽度の場合には、日常の注意を守るだけでも改善できます。
軽症の段階なら、薬(α1遮断薬や抗男性ホルモン薬など)で症状を改善できますし、人によっては漢方薬が効くこともあります(※3)。ただし、症状の改善には数カ月程度はかかるので、副作用などもふくめて、医師からよく話を聞くようにしましょう。
薬の効果がみられず、尿が出ないなど症状が悪化した場合には、手術が必要となります。電気メスやレーザーで肥大した内腺部分を取り除く手術が主体です。レーザー手術はからだへの負担が少ないのですが、まだ実施していない病院もあるので事前に確認してください。

(※3)α1遮断薬には降圧作用があるので、高血圧の治療を受けている方は医師に告げてください。副作用としては、α1遮断薬には起立性低血圧やめまい、抗男性ホルモン薬には性欲減退、勃起障害が起こることがあります。

日常生活で注意したいこと

尿の出方がおかしいと感じると、多くの方は自己流でなんとかコントロールしようと思うでしょう。その典型は、水分の摂取量を減らすことです。
でも、水分をとらないと尿の量も増えないので、よけいに尿の出方が悪くなります。トイレに行っても少しずつしか出ず、反対に残尿感ばかり感じるようにもなりかねません。
また、尿の量が少ないと老廃物をうまく排出できず、腎臓や膀胱にかかる負担も大きくなります。高齢者の場合には、脱水症状を起こして生命にかかわる危険も出てきます。
日常生活で大切なことは、まず水分をきちんととること。ただし、からだを冷やすとトイレが近くなるので、温かいお茶などを十分にとるように心がけましょう。
座ったままの姿勢でいると、下半身の血流が悪くなり、前立腺にも悪影響を及ぼします。自宅にいるときも、時々軽い屈伸運動で下半身を動かすことを心がけましょう。週に3~4回はウォーキングや散歩をして、下半身の血流を改善させることも大切です。
ウォーキングなどのコースの途中に、トイレを利用できる場所(図書館や公園、ストアなど)を何カ所かチェックしておくと、尿意を感じたときにあわてずに済みます。
また、便秘も尿道を圧迫し、排尿状態に影響します。日ごろからヨーグルトや食物繊維の多い食べ物を積極的にとり、便秘にならないようにすることも大切です。
風邪薬や抗アレルギー薬などの中にも、前立腺肥大症の症状を悪化させるものがあります。知らずに飲んでいることもあるので、治療を受けるときには医師に確認しましょう。

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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