2010.03.10

vol.81 肝がんの予防のために

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急増している肝がん

肝がん(肝臓のがん)で亡くなる人の数は、1975年には年間1万人前後でしたが、1995年に3万人を超え、2000年代になると3万3000 人~3万5000人と大幅に増えています。
その7割以上は男性で、肺がん、胃がんに次いで大腸がんと同じ程度の死亡者数になっています。また、女性の死亡者数も、男性よりは少ないものの、乳がんとほぼ同じ程度です(※1)。
そのわりに肝がんに対する関心が低いのは、肝臓という臓器は忍耐強く、慢性肝炎などを起こしても自覚症状がほとんどないことがあげられます。それだけ、早期発見がしにくいともいえるでしょう。
しかし、日本人の肝がんには、大きな特徴がみられます。数種類ある肝がんのうち、「肝細胞がん」が90%以上を占めること(※2)、また、肝細胞がんの 90%近くは、C型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスの感染が原因という点です。
つまり、C型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスに感染しているかどうかをチェックし、それらに起因する慢性肝炎を発症していないかどうかをチェックすることで、肝がんの可能性をある程度知ることが可能なのです。
現在、日本にはC型あるいはB型肝炎ウイルスに感染していながら、自分では知らない人、あるいは治療を受けていない人が150万人~200万人もいると推定されています。
そのため、厚生労働省や社団法人日本肝臓学会などによって、検診でC型肝炎ウイルスなどの感染の有無を調べ、慢性肝炎などになっている場合には積極的に治療をすることで、肝がんを予防する対策が進められています。
肝がんは40歳代から増えはじめ、とくに60歳代からは急増します。中高年の方は、 C型肝炎ウイルスなどの有無を調べることが望まれます。

(※1)がんによる死亡者数の順位は、男性では (1)肺がん、(2)胃がん、(3)大腸がん、(4)肝がん、(5)膵がん。女性では (1)大腸がん、(2)肺がん、(3)胃がん、(4)乳がん、(5)肝がん、となっています(2007年度)。

(※2)肝がんには肝細胞がんのほか、肝臓内の胆管にできる胆管がんなど数種類があります。日本では肝細胞がんが90~95%、胆管がんが5%程度を占めますが、それらの混合タイプもみられます。また、他の臓器からの転移性の肝がんもあります。

検査受診で早期発見を

C型あるいはB型肝炎ウイルスには、どのようにして感染するのでしょうか。その最大の原因は、C型肝炎ウイルスなどが発見される以前におこなわれていた輸血や血液製剤の使用、あるいは注射針の使いまわしなどの、血液感染によるものと推測されています(※3)。
C型肝炎ウイルスなどに感染しても、すぐに発症するわけではありません。例えば、肝がんの原因の約80%を占めるC型肝炎ウイルスの場合、感染後20 年~30年をかけて慢性肝炎、肝硬変、そして肝がんへと進行していきます。肝臓に障害が起き、くり返し細胞が破壊されるうちに遺伝子に異常が起こり、肝がんになると推測されています。
C型肝炎ウイルスに感染した人のうち、70%程度が持続的に感染状態となり、やがて慢性肝炎を発症する可能性があります。また、慢性肝炎の半数程度が、肝硬変や肝がんへ進行するといわれています。
厚生労働省では、1994年(平成6年)以前に出産時や手術時の出血のさいに止血剤のフィブリノゲンの投与を受けた可能性のある方や、1992年(平成4 年)以前に輸血や大きな手術を受けた方などを中心に、感染の有無を調べる検査受診を呼びかけています。対象者などの詳細を知りたい場合は、インターネットで「厚生労働省 C型肝炎ウイルス 検査受診」で検索すると、該当する画面をみることができます。
B型肝炎ウイルスの場合は、もっと短期間で肝細胞の遺伝子に影響を与え、肝臓の機能がそれほど悪化していなくても、肝がんが発生する可能性があります。 40歳代など中年期の肝がんには、このタイプも少なくありません。
輸血や手術などの経験がなくても、当時はまだ注射針の使い回しもみられました。もし感染が持続している場合には、中高年の方は発症しやすい年齢を迎えているといえます。肝がんの予防のために40歳以上の方は一度、肝炎ウイルスの検査受診をしたほうがいいでしょう。それが慢性肝炎の早期発見にもつながります。

(※3)現在は病院で行なわれる輸血や血液製剤、注射針などによる肝炎ウイルスの感染は、基本的には無くなっています。その一方で、若い世代に増えている覚せい剤の回し打ちなどによる感染も懸念されています。

コーヒーが肝がん予防に

C型肝炎ウイルスなどの感染検査を受けた結果、慢性肝炎が判明する人は少なくありません。
慢性肝炎になると、かつては治療法がなく、また、肝がんへの進行をおさえる方法もありませんでした。しかしその後、インターフェロンに一定の効果があることが分かり、さらに抗ウイルス薬リバビリンとの併用(2001年~)、効果が持続するペグインターフェロン(2003年~)などの治療法の進歩によって、治療効果は大幅に上昇しています。ウイルスそのものは除去できなくても、肝細胞の破壊をおさえ、肝がんへの進行を予防する治療もできるようになっています。
それだけに慢性肝炎と分かった場合は放置せず、肝臓の専門医の治療を受け、肝がんの予防に取り組むことが大切です。
また最近、厚生労働省研究班によって、興味深い報告がなされました。それはコーヒーに肝がんの予防効果がみられるというものです(※4)。
コーヒーなどに含まれるポリフェノールには、以前からがんを予防する抗酸化作用があるといわれてきました。そこでコーヒーと肝がんの発症リスクとの関係を長期にわたって調査したところ、コーヒーを飲まない人のリスクを1とすると、

1日に1杯未満の人  0.67
1日に1~2杯飲む人  0.49
1日に3杯以上飲む人  0.54

という結果になっています。つまり、コーヒーを1日1~2杯飲む人は、発症リスクが半分程度に低下することがわかったのです。
すでに慢性肝炎を発症している人についても同様の調査を実施した結果、コーヒーを「1日1杯未満の人 0.56」、「1日1~2杯の人 0.40」、「1 日3倍以上の人 0.78」となっています。慢性肝炎になっていても、コーヒーを1日1~2杯飲む人のリスクは半分以下になっています。
ただし、たくさん飲んでもリスクが低くなるわけではありませんし、かえって胃に負担をかけることもあるので注意しましょう。また、ポリフェノールを含む飲み物でも、今回の調査では緑茶には肝がん予防の効果がみられませんでした。

(※4)厚生労働省研究班による40~69歳の男女約2万人を対象とした13年間(1993~2006年)に及ぶ調査。2009年発表。

ミニコラム

現在、肝がんの原因ではC型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスの感染が最大のものとなっています。その一方で近年、慢性的なアルコールの飲みすぎや、アルコールを飲まなくても肥満や糖尿病などを背景とした脂肪肝から、肝硬変や肝がんへと進行するケースも目立ってきています。とくに若い世代では、C型肝炎ウイルスなどの感染リスクは大幅に低下していますが、こうした生活習慣に起因する肝がんにも十分に注意する必要があります。

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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