2010.10.08

vol.88 「味覚の変化」が教えてくれること

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味が薄いと感じたら要注意

Vol.88 「味覚の変化」が教えてくれること 若いころとくらべると味の好みが変わった…そう感じている中高年の方は多いでしょう。
加齢による味覚の変化は、一般的には濃い味からあっさり味へと変わる、と思われています。ところがその反対に、中高年になって濃い味を好むようになる人も少なくありません。
なぜ、そんなことが起こるのでしょうか。私たちが感じる味覚には、大きくわけると甘味、酸味、苦味、塩味の4種類があります(※1)。これらの味を、私たちは舌にある味蕾(みらい)というセンサーで感じています。
中高年になるにつれ、味蕾の細胞が減少したり、感度がにぶくなったりすると、少しずつ味がわかりにくくなります。個人差はありますが、4つの味覚のなかでもっとも感度の低下を自覚しやすいのは塩味です。
塩味の感度が低下すると、たとえばみそ汁などの味に物足りなさをおぼえるようになります。いつもと同じみそ汁なのに、「なんだか薄い」と感じたら要注意。あるいは料理の味が薄いと感じ、しょうゆやソースをたっぷりかけたりしていませんか。もし、そんなことがあれば、塩味をはじめ味覚の減退が起こっている可能性があります。
一般に味覚の感度が低下すると、無意識のうちに濃い味付けのものを好むようになります。それだけ塩分やカロリーの摂取量が増え、その結果、高血圧や肥満の一因ともなってしまうのです。

(※1)甘味、酸味、苦味、塩味のほかに、旨味(うまみ)をくわえて5種類とすることもあります。

加齢によるさまざまな味覚変化

加齢にともなう味覚の変化は、味蕾によるものだけでなく、ほかにもさまざまあります。
唾液の減少もその一つ。唾液は食べ物を分解し、味を感じやすくする役割をもっています。それだけに唾液の分泌量が減ると、食べ物の味がわかりにくくなることがあります。
唾液の減少は自分ではわかりにくいのですが、なんとなく口のなかが粘つくようになったり、食べ物が飲み込みにくいと感じた場合には注意が必要です。
また、舌のうえに白いコケのようなもの(舌苔=ぜつたい)が多く付着した場合も、味を感じにくくなることがあります。舌苔は、味覚をにぶらせるだけでなく、口臭の原因ともなります。鏡で舌をみると自分でもわかるので、注意しましょう(胃の調子が悪いときも、舌苔が増えます)。
栄養のかたよりが原因で、味覚障害を起こすこともあります。その典型は、亜鉛不足です。
亜鉛は、味蕾の細胞がつくられるときに必要となる栄養素なので、不足すると味を感じにくくなります。若い人の場合は、ご飯(お米)をきちんと食べないために亜鉛不足を起こす例が多いのですが、中高年の場合には亜鉛の吸収力の低下が原因となりやすいのです。また、高齢者の場合には、食事の量が減ったり、同じようなものばかり食べることから、亜鉛不足を起こすこともあります。

気をつけたい薬の副作用と病気

味覚の変化の原因として、最近とくに注目されているのは薬の影響によるものです。
中高年になると、生活習慣病をはじめとした慢性的な病気の治療で、長期にわたり薬を飲み続けるケースが増えてきます。高血圧、糖尿病、心臓病などの治療薬のなかには、利尿作用によって亜鉛の排出を促進したり、亜鉛の働きを低下させたりするものがたくさんあります。
また、解熱鎮痛薬や消炎薬、睡眠薬、精神安定薬、抗生物質などにも亜鉛を体外へ排出させやすいものがあり、こうした薬の影響による亜鉛不足から味覚障害を起こす例は少なくありません(※2)。
薬による治療を受けているときに、食べ物の味がわからない、何を食べても変な味がするといったことがあったら、医師に相談してみましょう。
味覚の変化でもう一つ注意したいのは、病気によるものです。
口内炎や舌炎などがあると、食べ物がおいしく感じられないという経験はだれにでもあるでしょう。こうした病気は不快感があるのでわかりやすいのですが、同じ口のなかでも歯周病は自覚しにくいものの一つです。味覚の変化のほかに、歯磨きのときに出血しやすい、歯がぐらぐらするといった場合は、歯周病の影響も疑ってみましょう。
味覚の変化が、隠れた病気から起こる場合もあります。糖尿病や肝臓病、腎臓病、胃腸障害、ホルモン機能の低下、うつ病などの病気が、味覚の変化を起こしやすいことが知られています。たとえば、糖尿病の場合、神経や腎機能に障害を受けることで味覚障害を起こしやすくなると考えられています。
ただし、病気そのものが原因なのか、病気によるストレスや薬の影響なのかは、自分では判断できません。急激に味覚の変化が起こった場合は、まず医師に相談して原因を調べることが大切です。

(※2)亜鉛に影響を与える薬は、二百種類以上あることが知られています。

日常生活で注意したいこと

味覚の変化は、体調管理の目安になります。トシのせいとだけ考えずに、味覚の変化があった場合は次の点を見直してみましょう。
一つめは、薄い味をもの足りなく感じ、濃い味を好むようになっていないか。とくに、血圧や血糖値が高めの方は要注意。一般に、外食や市販の総菜、弁当などは濃い味付けになっています。こうした食事が増えていたり、さらにしょうゆやソースをたっぷりかけて食べていないでしょうか。
二つめに気をつけることは、亜鉛不足になっていないかどうか。亜鉛が不足すると、味覚障害だけではなく、ストレスを感じやすくなってイライラしたり、不眠になることもあります。
亜鉛はカキ、レバー、うなぎなどに多くふくまれています。これらは毎日のように食べるものではありませんが、日常の食事では牛や豚のもも肉、木綿豆腐、納豆、ゴマ、ナッツ類などを積極的にとることが大切。また、生活習慣病などで薬を飲んでいる方も、亜鉛不足にならないように食生活を見直してみましょう。
あまり知られていませんが、カルシウムや食物繊維にも亜鉛を体外へ排出する働きがあります。日常の食事程度なら影響はありませんが、サプリメントなどで多くとる場合には注意が必要です(骨粗しょう症などの治療でカルシウムを摂取している場合、味覚障害が起こったときは自己判断で薬をやめずに医師に相談してください)。
三つめは、口のケアがきちんとできているかどうか。歯磨きだけでなく、舌苔をためないように舌のブラッシング(歯ブラシで軽くこする)も大切です。歯周病の疑いがある場合は、早めに歯科で診察を受けましょう。
唾液の減少が考えられる場合は、食べ物をよく噛むと唾液の分泌が促進されるので、時間をかけてゆっくり食べる習慣をつけましょう。不安や緊張などのストレスから唾液が減少し、味覚の変化を起こすこともあります。ストレスがたまっていないか、生活全般を見直してみることも大切です。

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