2011.03.10

vol.93 胃・十二指腸潰瘍を悪化させない

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胃・十二指腸潰瘍の原因とは

Vol.93 胃・十二指腸潰瘍を悪化させない 春は気候や環境(職場や住まいなど)の変化に加え、食事会の機会なども増え、胃の調子がおかしくなりやすい季節です。
ちょっとした胃の不調なら、市販の胃腸薬でも対処できますが、胃痛や腹痛(上腹部)、あるいは吐き気などの症状をくり返す場合には要注意。胃や十二指腸に、潰瘍(粘膜などにできるキズ、ただれ)が生じている可能性があります。
胃・十二指腸潰瘍の痛みは、キリキリと差し込むようなタイプが多く、不快なだけでなく、仕事や家事にも支障をきたします。十二指腸潰瘍の場合は空腹時に痛みが起こりやすく、睡眠中に起こると夜中に目がさめ、不安なども重なって睡眠障害におちいることもあります。
また、潰瘍を放置していると、そこから出血(吐血、下血)したり、穴(穿孔:せんこう)があいて激痛におそわれ、生命にかかわることもあります(※1)。人によっては痛みをあまり感じず、急に出血や穿孔を起こすこともあるので、吐き気や胸焼けをくり返す場合にも注意が必要です。
胃・十二指腸潰瘍の原因といえば、ほとんどの方がまず「ストレス」を連想するでしょう。ところが最近の知見から、直接の原因は「ピロリ菌と薬(抗炎症薬や鎮痛薬など)」であることがわかっています。ストレスは、症状を促進する要因の一つとされています。
胃・十二指腸潰瘍は、早めに対処をすれば治しやすい病気です。くり返す痛みや吐き気を我慢せず、受診して原因を確認し、適切な治療を受けるようにしましょう。

(※1)胃・十二指腸潰瘍による穿孔は、急性腹膜炎などを併発して緊急手術を必要とすることもあるので、激しい痛みがある場合は我慢せずに受診しましょう。

ピロリ菌と胃・十二指腸潰瘍

胃・十二指腸潰瘍の第一の原因とされるのが、胃の粘膜などに生息するピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)です。胃液は強い塩酸のため、ふつうの細菌は生きていけませんが、ピロリ菌はアンモニアをつくって胃酸を中和しています。また、活動中に活性酸素やある種の毒素も発生します。こうしたアンモニアなどの物質が、粘膜を傷つけ、潰瘍を起こす原因であることがわかっています。
ピロリ菌の感染者は中高年に多く、40歳以上の約半数(60歳以上では約7割)にも及び、全体では約6000万人もいると推定されています。
ピロリ菌に感染していると、まず慢性胃炎を起こしやすく、それが悪化すると胃・十二指腸潰瘍へと進みます。胃潰瘍と十二指腸潰瘍では発生の仕組みが少し違いますが、どちらもピロリ菌に感染していると発症しやすい点は共通しています。
とくに、胃・十二指腸潰瘍になりやすいのは、仕事や人間関係などでストレスが多い人、慢性的な食べすぎ・飲みすぎでいつも胃に負担をかけている人、胃液が多く胸焼けしやすい人、タバコをよく吸う人、きちょうめんで細かいことが気になる人…などです。
こうしたタイプで、もし胃痛や上腹部痛をくり返す場合は、潰瘍の治療だけでなくピロリ菌の検査もしてみましょう。内視鏡(胃カメラ)による検査のほか、呼気による簡単な検査法もあるので、医師と相談してください(※2)。
また、胃・十二指腸潰瘍の治療は現在、ほとんどが薬(H2ブロッカーなど)による方法です(※3)。高齢の方のなかには、かつての切除手術のイメージをもっていて、なかなか受診したがらない方もいますが、悪化させないうちに薬で治療するほうが、からだへの負担も少なくなります。

(※2)ピロリ菌が発見された場合、除菌治療をおこなうと再発予防に効果があります。胃・十二指腸潰瘍の治療の1つとしておこなう除菌治療には、保険が適用されます。
(※3)一部のH2ブロッカーは市販されていますが、病院では用量が大きく、効き目の強いものが処方されます。また、種類も多く、その人の症状に合った薬が処方されます。市販薬で一時しのぎはできても、症状をくり返す場合は受診しましょう。

薬が原因の潰瘍とは

胃・十二指腸潰瘍の原因として、近年注目されているのが薬によるもの(薬剤性)です。それも特別な薬でなく、私たちが日常的に使用している薬のなかに、潰瘍を引き起こしやすいものがあるのです。
たとえば中高年の方には、慢性的な関節痛、腰痛などの緩和のために、抗炎症薬や鎮痛薬などを飲んでいる方が多いはずです。こうした薬の成分には、胃の粘膜を荒らす作用をもつものが少なくありません。
そのほか風邪などの治療に使われる解熱鎮痛薬やせき止め薬、さらに抗アレルギー薬、抗血栓薬、あるいは心筋梗塞などの再発予防のための低用量アスピリンなど、影響を受けやすい薬は数多くあります。
こうした薬を服用していても、胃などにほとんど影響を受けない方もたくさんいます。その一方で、薬による胃・十二指腸潰瘍の場合、痛みなどをあまり感じないまま悪化し、いきなり出血や穿孔を起こして危険な状態におちいるケースもあります。そのため厚生労働省は、薬に起因する胃潰瘍に対する予防指針を示しています(※4)。
薬剤性の胃・十二指腸潰瘍は自分では気づきにくいので、もともと胃炎などを起こしやすい方は、医師と相談して胃腸薬を併用するなどの予防策をとることも大切です。
また、抗炎症薬や鎮痛薬などを長期間使用している場合は、定期的に胃・十二指腸の検査をして潰瘍ができていないか確認したほうがいいでしょう。

(※4)厚生労働省『EBMに基づく胃潰瘍診療ガイドライン(平成19年)』では、非ステロイド系抗炎症薬などによる胃潰瘍を予防する指針が示されています。

日常生活で注意したいこと

胃・十二指腸潰瘍の直接的な原因は、ピロリ菌と薬によるものですが、症状を悪化させる要因には、ストレスや食事など日常の生活習慣が関係しています。
たとえば、ストレスを受け続けると自律神経の働きが乱れ、胃粘膜などの血流が悪化し、傷つきやすくなります。また、脂肪分の多い食事は、胃酸の分泌を活発にするため、やはり胃粘膜を弱らせる原因となります。
さらに、アルコール、香辛料の多い食べ物、コーヒーや紅茶などカフェインの多いものなども、いずれも胃酸の分泌を促進します。
ふだんは平気でも、胃の調子がよくないときは、こうした飲食物がきっかけで潰瘍の症状が悪化しやすくなります。胃が重く感じたり、少し痛みがあるとき、あるいは胸焼けを起こしたり、ゲップが多いときなどは、こうした飲食物をひかえて、できるだけ胃に負担をかけないようにしましょう。
とくによくないのは、仕事や人間関係で問題をかかえてストレスを感じているときに、やけ食い・やけ飲みをすることです。また、仕事や家事が忙しく、睡眠不足気味のときに、宴席などでつい食べすぎたり飲みすぎたりすることも要注意です。ストレスに暴飲暴食がくわわると、潰瘍が一気に悪化し、いきなり出血したりすることもあるので、十分に注意する必要があります。
どんなときも「腹八分目」と「刺激物は控えめに」を心がけることが、胃・十二指腸潰瘍の予防につながります。
  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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