2011.07.08

vol.97 夏なのに汗をかかない...甲状腺機能低下症かも

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甲状腺機能が低下すると

Vol.97 夏なのに汗をかかない...甲状腺機能低下症かも 「夏なのに汗をかかない」というと、大汗かきの方にはうらやましい話と思われるかもしれません。でも、甲状腺機能が低下し、甲状腺ホルモンの分泌量が不足状態になった場合にも、汗をかかないという症状がみられるので注意が必要です。

甲状腺ホルモンについては、名前が知られているわりに、どのような働きをしているのか知らない方が多いようです。甲状腺そのものはノドの近くにありますが、甲状腺ホルモンは全身の代謝(生命維持の働き)に関係しているため、不足するとからだ全体でいろいろな症状が起こってきます。
初期症状をみても、からだのだるさ、眠気、物忘れ、肌のかさつき、むくみ、脱毛、便秘など、人によってさまざまです。しかも、ゆっくり進行するため、病気ではなく加齢のせいと思うことが少なくありません。また、やる気がなくなり、脳の活動も緩慢になるため、うつ病や認知症(高齢者の場合)と間違われるケースもよくあります。
そうしたなかで、甲状腺機能低下症の特徴的なサインの1つが、「汗をかかないこと」です。これは、体温調節機能の低下によるものと考えられています。
甲状腺機能低下症は女性に多く、10~20人に1人といわれるほど、よくみられる病気です。とくに、中年期以降に発症しやすいので、40歳頃からは注意が必要です。いままでよく汗をかいていた方が、汗をかかなくなったり、さらにだるさをともなう場合には、甲状腺の検査を受けてみましょう。

慢性甲状腺炎に注意を

甲状腺機能低下症には、①甲状腺そのものの働きが低下するタイプ、②甲状腺を刺激するホルモンの不足によって働きが低下するタイプ(※1)、③甲状腺ホルモンに対する反応が鈍くなり機能しなくなるタイプなどがあります。
このうちの大半を占めるのが、①の甲状腺そのものの働きが低下するタイプで、その多くが慢性甲状腺炎(橋本病)に起因するものです(※2)。
慢性甲状腺炎は、リンパ球が甲状腺を異物として攻撃し、甲状腺組織が破壊される病気(自己免疫疾患)です。甲状腺の機能にはもともと余裕があるので、慢性甲状腺炎になっても、甲状腺ホルモンの分泌には異常がないこともあります(※3)。
ただし、慢性甲状腺炎の患者さんのうち、3~4人に1人が甲状腺機能低下症へと進行すると推定されているので、ときどき甲状腺ホルモンの検査を受けることが予防につながります。
実際に甲状腺機能低下症へと進行すると、前章で紹介したように人によってさまざまな症状(だるさ、眠気、物忘れ、むくみなど)が起こるようになります。
汗をかかない症状は、エアコンによる冷房病でもよく似た症状を起こすことがあります。冷房病の場合、適度な運動や入浴で汗を出すことで改善されますが、そうした方法でも症状が続くときには、甲状腺機能低下症を疑ってみましょう。

(※1)甲状腺ホルモンは、甲状腺刺激ホルモンなどの影響を受けて分泌されます。そのため甲状腺刺激ホルモンが不足した場合も、甲状腺の働きが低下することになります。

(※2)慢性甲状腺炎は、1912年に日本の橋本策博士によって発見されたことから、橋本病と呼ばれます。

(※3)慢性甲状腺炎の患者さんの半数程度には、甲状腺ホルモンの異常は認められず、治療の必要がない場合も少なくありません。一方、甲状腺がはれる症状がみられることがあり、はれが大きくなった場合、治療が必要なこともあります。

検査などから早期発見を

病院での検査で、コレステロール値やクレアチンキナーゼ値が高いことから、甲状腺機能低下症が発見されることがあります。
甲状腺ホルモンは、体内でのコレステロールの取り込みと排出をコントロールしています。甲状腺ホルモンが減ると、コレステロールの収支バランスがくずれ、血液中にあふれ出るため、コレステロール値が上昇すると推定されています。
高コレステロール血症は、心筋梗塞などのリスクを高める要因とされるだけに、循環器病の予防面からも甲状腺機能低下症の治療が重視されるようになっています(※4)。
もう一つのクレアチンキナーゼは、筋肉や脳の円滑な活動に必要とされる酵素の一種です。急性心筋梗塞や狭心症などでは高い数値を示すため、診断の重要な要素となっています。
甲状腺機能低下症でもクレアチンキナーゼ値が高くなるので、筋肉や循環器などに異常がない場合には、可能性を考慮したほうがいいでしょう。
甲状腺機能低下症と診断された場合、治療方法ははっきりしています。甲状腺の組織は一度壊れると修復できないため、外から甲状腺ホルモン剤を補給(服用)します。体内の甲状腺ホルモンと同じ性質なので、副作用はほとんどありませんが、症状の改善後もその状態を維持するため、長期にわたり服用する必要があります。

(※4)コレステロール値が高いと、まず高脂血症が疑われますが、ほかの症状などから甲状腺機能低下症の可能性が考えられる場合には、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度測定によって確認することができます。

日常生活で気をつけたいこと

一般に日本の食事には、ヨードを多くふくむ海藻類(コンブ、ワカメ、ノリ、ヒジキなど)が豊富です。ヨードは、甲状腺ホルモンの重要な成分なのですが、大量にとると逆にヨード過剰摂取により甲状腺機能低下症を起こすことがあります。
海藻類のなかでも、とくにコンブにはヨードが多くふくまれています。通常の食事からとる程度なら問題はありませんが、健康療法としてコンブなどの海藻類を多く食べ続けたり、サプリメントで大量にとったりしている方で、甲状腺機能低下症の症状がみられる場合は要注意です。
思い当たる方は、海藻類(とくにコンブやコンブ出汁の食品など)を控えめにしたり、海藻類中心のサプリメントを中止すると、症状が改善されることがあるので試してみましょう(症状の改善がみられない場合は、受診してください)。
慢性甲状腺炎と診断された方の場合も、ヨードを多くふくむ食品を食べすぎると、甲状腺ホルモンの分泌に影響を与えることがあるので注意が必要です。
また、喫煙も甲状腺ホルモンの分泌に悪影響を及ぼします。タバコにふくまれる化学成分のなかに、甲状腺の働きを低下させたり、甲状腺ホルモンの代謝機能を妨げる物質があるためと推定されています。
甲状腺機能低下症の予防のためには、禁煙を心がけましょう。
  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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