vol.139 糖尿病の治療をしています。最近職場でインフルエンザが流行っているのですが、特に気をつけなければならないことはありますか?
生活習慣病Q&A
- 糖尿病の治療をしています。最近職場でインフルエンザが流行っているのですが、特に気をつけなければならないことはありますか?
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糖尿病の人はインフルエンザにかかりやすく、また、重症化や入院のリスクが高いことが報告されています。予防接種、手洗い、水うがい、外出時のマスク着用といった一般的なインフルエンザ予防策に加え、良好な血糖コントロールと、抵抗力をつけるための生活習慣に気を配りたいものですね。インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって起こる呼吸器感染症で、38度以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状が突然現れるのが特徴です。特に12月から3月にかけて流行します。
どの年齢層であってもインフルエンザにかかる可能性はありますが、特に子どもと高齢者で重症化しやすいことがわかっています。また、カナダの調査では、糖尿病の人のインフルエンザの発症率は糖尿病でない人よりも高く、インフルエンザのために入院するリスクは糖尿病でない人に比べて6%高かったと報告されています(※1)。
インフルエンザの予防には、予防接種が最も有効です。予防接種の効果は接種の2週間後から5カ月ごろまで続くと考えられており、年ごとに流行が予測されるインフルエンザウイルスの型に合わせて製造されています。「去年インフルエンザになったから今年は予防接種を受けないでおこう」「予防接種を受けたのにインフルエンザになった」という人がいますが、インフルエンザの予防接種は発症を完全に予防することだけを目的とはしていません。インフルエンザにかかっても、重症化しないこと、さらには重症化しても死亡まで至らないようにする効果が期待されています。糖尿病の人は、インフルエンザの流行までに予防接種を受けておくことが推奨されていますので、かかりつけの先生に相談してみましょう。
糖尿病の人がインフルエンザにかかると、強い炎症が起こるためにインスリンの働きが悪くなり、血糖値が上昇することがあります。「食事をしていないのに血糖値が上がる」という状態になることもありますので、糖尿病治療薬を飲んでいる人は、そのときの対処についてかかりつけの先生に尋ねておくといいですね。また、血糖コントロールが悪いと感染症に対する抵抗力が低下します。インフルエンザが流行する前に、かかりつけの先生と対策を相談しておきましょう。
インフルエンザの流行時には、マスクの着用、外出後の手洗いやうがい、部屋を乾燥させない、人混みや繁華街への外出を控えるなどの配慮が必要となります。そして何よりも大切なのが、感染症に対する抵抗力をつけておくことです。感染症に対する抵抗力を高めるのは、良質な睡眠、栄養バランスのとれた食事、そして運動習慣です。冬に向けて、睡眠・食事・運動により一層配慮した生活を心がけましょう。
【参考文献】 (※1) Lau D, et al: Diabetologia 57: 690-8, 2014
先生のプロフィール

坂根 直樹 先生
独立行政法人国立病院機構京都医療センター
臨床研究センター 予防医学研究室室長
臨床研究センター 予防医学研究室室長
- 略歴
- 昭和64年 自治医科大学医学部卒業
昭和64年 京都府立医科大学附属病院(第1内科)研修医
平成3年 大江町国保大江病院内科
平成5年 弥栄町国保病院内科
平成6年 京都府保健福祉部医療・国保課
平成7年 綾部市立病院(内分泌科)
平成10年 大宮町国保直営大宮診療所
平成11年 京都府立医科大学附属病院修練医(第1内科)
平成13年 神戸大学大学院医学系研究科分子疫学分野(旧衛生学)助手
平成15年 独立行政法人国立病院機構京都医療センター(旧国立京都病院)
臨床研究センター 予防医学研究室室長 - ご専門
- 糖尿病、糖尿病教育、内分泌