vol.145 生活が不規則で、朝食を抜くことが多くなっています。少し疲れやすいくらいで特に不具合は感じないのですが、やはり良くないでしょうか?
生活習慣病Q&A
- 生活が不規則で、朝食を抜くことが多くなっています。少し疲れやすいくらいで特に不具合は感じないのですが、やはり良くないでしょうか?
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「少し疲れやすい」などの自覚症状がみられる場合には、今の生活習慣を見直すチャンスかもしれませんよ。朝食を抜いている人は肥満、糖尿病、心臓病になるリスクが高まることはよく知られています。なぜ、朝食を抜いてしまうのでしょうか。おそらく、その原因として多いのが、朝に食欲がないのと、朝食をゆっくりとる時間がないからではないかと思われます。その背景にあるのは、生活が不規則になるため夜の食事が遅くなり、睡眠時間を確保するためにすぐに寝てしまうことです。その結果、朝起きても食欲があまりありません。そして、睡眠不足のために朝食を食べるよりも寝ていることを優先してしまいます。「少し疲れやすい」のは、よい睡眠が不足している可能性があります。
最近の研究では、朝食を食べないだけでなく、夜遅い食事がメタボリックシンドロームや蛋白尿陽性など腎機能障害になりやすいこともわかっています。それでは、なぜ夜遅い食事をとると、肥満などの代謝異常を引き起こしやすいのでしょうか。夜早めの食事に比べ、夜遅い食事は寝るまでの時間が短いために、同じ内容の食事を食べていたとしても食後の熱産生の時間が短くなり、食後の血糖も上がりやすくなっています。また、食べてすぐに寝ると、胃腸の動きが鈍るので、胃がもたれやすくなったりもします。普通、人は起床する少し前から、自律神経の働きが活発となり、胃腸が活動を始めます。調子のよい時は、起床してすぐに「お腹が空いた。何か食べたい!」と思う準備が整っているわけです。ところが、夜遅い食事をとっている人は、それがありません。朝は食欲がないために、昼頃になってやってお腹が空いてくるのです。
1日の最初の食事が昼食の人は、同じ内容の昼食を食べても食後の血糖が上がりやすいことが知られています。つまり、同じくらいの食事をしていても、夜遅い食事と朝食を抜くことは糖尿病など生活習慣病になるリスクを高めているのです。11月14日は、インスリンを発見したバンティングの誕生日で「世界糖尿病デー」です。2014年のテーマは「健康的な朝食を食べよう!」でした。これは、健康的な朝食を食べることができるような生活リズムや環境を整える重要性を唱えているわけです。
「少し疲れやすい」などの自覚症状がみられる場合には、生活リズムの乱れや睡眠不足が疑われます。「少し疲れやすいと」という自覚症状が見られた時は今の生活習慣を見直すチャンスなのかもしれませんね。
先生のプロフィール

坂根 直樹 先生
独立行政法人国立病院機構京都医療センター
臨床研究センター 予防医学研究室室長
臨床研究センター 予防医学研究室室長
- 略歴
- 昭和64年 自治医科大学医学部卒業
昭和64年 京都府立医科大学附属病院(第1内科)研修医
平成3年 大江町国保大江病院内科
平成5年 弥栄町国保病院内科
平成6年 京都府保健福祉部医療・国保課
平成7年 綾部市立病院(内分泌科)
平成10年 大宮町国保直営大宮診療所
平成11年 京都府立医科大学附属病院修練医(第1内科)
平成13年 神戸大学大学院医学系研究科分子疫学分野(旧衛生学)助手
平成15年 独立行政法人国立病院機構京都医療センター(旧国立京都病院)
臨床研究センター 予防医学研究室室長 - ご専門
- 糖尿病、糖尿病教育、内分泌