vol.185 サルコペニア、フレイルとは何ですか?

生活習慣病Q&A
サルコペニア、フレイルとは何ですか?
サルコペニアは「加齢による筋肉量の減少」、フレイルは「虚弱」を意味しています。超高齢社会の中、健康寿命を延ばすために注目されている言葉です。

サルコペニアとは「筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態」を示す言葉です。サルコペニアは、特に高齢者の身体機能障害や転倒のリスク因子になり得るとされています。一方、フレイルとは「加齢に伴い身体の予備能力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態」を示しており、いわゆる「虚弱」です。言い換えると、介護が必要になる前段階とも表現できます。サルコペニアが筋肉量の減少にターゲットを置いているのに対して、フレイルの方が体重減少、倦怠感や活動度の低下などの項目が入っており概念が大きいと考えられます。歩行速度の低下で秒速0.8mとは、横断歩道を青信号の間に渡り切れる速度です。ペットボトルのふたが開けるのが大変になったら、握力が低下しているかもしれません。「ここ1年で体重が2、3kg減り、特になにもしていないのに以前に比べて疲れやすくなり、買い物や集まりに出るのが億劫になった」という人はフレイルが心配ですね。
どちらも原因として、加齢や栄養不足、身体活動量の低下、さまざまな疾患の合併などが挙げられます。さらに、サルコペニア(筋力の低下)がフレイル(虚弱状態)に繋がるなど、ふたつの状態はお互いに関連し合っています。
現在、健康寿命(援助が必要ない・要介護状態でない期間)を延伸させるために国を挙げた取り組みが行われていますが、そこでもサルコペニアとフレイルへの対策が重要視されています。手軽に取り入れられる対策としては、バランスの良い食事をしっかり摂取すること、適切な運動を行うなどが挙げられます。具体的には、筋力を低下させないために、筋肉の素となる栄養素であるたんぱく質やアミノ酸を積極的に摂取するようにしましょう。また、運動に関してはレジスタンス運動(筋肉に負荷をかけて行う運動)が効果的であるとされています。専門家の指導を受けて、サルコペニアやフレイル対策をすることが大切です。

表 サルコペニアとフレイルの比較
サルコペニア フレイル
意味 加齢による筋肉量の減少 虚弱
判定 65歳以上
歩行速度低下(秒速0.8m以下)
握力低下(男性26kg、女性18kg未満)
筋量低下
体重減少(6か月で2~3kg以上)
倦怠感
活動量低下
握力低下(男性26kg、女性18kg未満)
歩行速度低下(秒速1m未満)

先生のプロフィール

坂根 直樹先生

坂根 直樹 先生

独立行政法人国立病院機構京都医療センター
臨床研究センター 予防医学研究室室長
略歴
昭和64年 自治医科大学医学部卒業
昭和64年 京都府立医科大学附属病院(第1内科)研修医
平成3年 大江町国保大江病院内科
平成5年 弥栄町国保病院内科
平成6年 京都府保健福祉部医療・国保課
平成7年 綾部市立病院(内分泌科)
平成10年 大宮町国保直営大宮診療所
平成11年 京都府立医科大学附属病院修練医(第1内科)
平成13年 神戸大学大学院医学系研究科分子疫学分野(旧衛生学)助手
平成15年 独立行政法人国立病院機構京都医療センター(旧国立京都病院)
臨床研究センター 予防医学研究室室長
ご専門
糖尿病、糖尿病教育、内分泌

関連コラム

商品を見る