vol.187 テレビの健康番組でアディポネクチンという物質がメタボに関係があると紹介されていました。詳しく知りたいのですが。

生活習慣病Q&A
テレビの健康番組でアディポネクチンという物質がメタボに関係があると紹介されていました。詳しく知りたいのですが。
脂肪細胞から分泌される「善玉アディポカイン」であるアディポネクチン。内臓脂肪が増えるとメタボリックシンドロームや動脈硬化を予防するアディポネクチンが減少してしまいます。生活習慣の改善でアディポネクチンの上昇に取り組んでみては、いかがでしょう。
近年、脂肪細胞はエネルギーを貯蔵するだけの臓器ではなく、ホルモンなどの物質を出す分泌臓器であることがわかってきました。それらを総称してアディポカインといいます。
アディポカインには、動脈硬化を進める方向に働く、TNFαなどのいわゆる「悪玉アディポカイン」と、それとは逆に、予防的に働くアディポネクチンの「善玉アディポカイン」があり、テレビの健康番組や雑誌などで話題となりました。ヒト成人の脂肪細胞の大きさは70~90ミクロンくらいなのですが、食べすぎると余分なエネルギーが脂肪細胞にたまり、大きくなります。脂肪細胞が大きくなると、善玉アディポカインであるアディポネクチンの分泌が少なくなります。特に、内臓脂肪が蓄積するとアディポネクチンが減少することが知られています。内臓脂肪が蓄積して、血糖・血圧・脂質に異常をきたすメタボリックシンドロームではアディポネクチンの分泌が低下しています。また、アディポネクチンにはインスリンの効きをよよくしたり、脂質異常や慢性炎症を抑える働きもあります。そのため、最近では認知症や脂肪肝との関連にも注目が集まっています。
では、このアディポネクチンを増やすにはどうしたらいいのでしょうか? 巷のアディポネクチン分泌促進サプリメントには明確なエビデンスはありません。内臓脂肪を減らすことが最も効果が高く、禁煙、魚油を積極的にとる健康的な食事、運動、睡眠不足の解消なども効果がありそうです。ポッコリお腹が気になる人は、内臓脂肪の減少にトライしてみてはいかがでしょう。
参考
1. Achari AE, Jain SK: Adiponectin, a Therapeutic Target for Obesity, Diabetes, and Endothelial Dysfunction. Int J Mol Sci. 2017;18(6).
2. Ng RC, Chan KH: Potential Neuroprotective Effects of Adiponectin in Alzheimer's Disease. Int J Mol Sci. 2017;18(3).
3. Wu JH, Cahill LE, Mozaffarian D: Effect of fish oil on circulating adiponectin: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. J Clin Endocrinol Metab. 2013;98(6):2451-9.
4. Sirico F, Bianco A, D'Alicandro G, Castaldo C, et al: Effects of Physical Exercise on Adiponectin, Leptin, and Inflammatory Markers in Childhood Obesity: Systematic Review and Meta-Analysis. Child Obes. 2018;14(4):207-217.

先生のプロフィール

坂根 直樹先生

坂根 直樹 先生

独立行政法人国立病院機構京都医療センター
臨床研究センター 予防医学研究室室長
略歴
昭和64年 自治医科大学医学部卒業
昭和64年 京都府立医科大学附属病院(第1内科)研修医
平成3年 大江町国保大江病院内科
平成5年 弥栄町国保病院内科
平成6年 京都府保健福祉部医療・国保課
平成7年 綾部市立病院(内分泌科)
平成10年 大宮町国保直営大宮診療所
平成11年 京都府立医科大学附属病院修練医(第1内科)
平成13年 神戸大学大学院医学系研究科分子疫学分野(旧衛生学)助手
平成15年 独立行政法人国立病院機構京都医療センター(旧国立京都病院)
臨床研究センター 予防医学研究室室長
ご専門
糖尿病、糖尿病教育、内分泌

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