vol.129 睡眠の質を高め、不眠への効果が期待される漢方薬

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Vol.129 睡眠の質を高め、不眠への効果が期待される漢方薬

毎日、ぐっすり眠れていますか。残業による長時間勤務やシフトワークでの不規則な勤務、インターネットの普及や24時間営業のお店の増加…といった就労形態や生活環境の変化にともない、特に就労者を中心に睡眠時間が減っています。また、高齢化が進み、男女ともに不眠を訴える人が増加。快適で質のよい睡眠に多くの人の関心が集まっています。
夜に眠れない、寝つきが悪い、寝た気がしないという訴えがあり、これに加えて日中に気分が落ち込む、眠気が強い、体調が悪いなどの機能障害がともなう場合、不眠症と診断されます。日本の不眠治療は、薬を用いた薬物療法が主流です。治療薬はベンゾジアゼピン系睡眠薬が広く用いられていますが、長期服用や過剰投与による依存や、朝まで作用が残る持ち越し効果、転倒、ふらつき、健忘などの副作用が問題となっています。こうした中、睡眠の質を改善する漢方薬の新たな効果が注目されています。

主観的な症状を改善、睡眠の質を高める「抑肝散」

研究報告したのは、東京慈恵会医科大学精神医学講座の小曽根基裕講師。漢方薬の中から、認知症の行動・心理症状(BPSD)に対する効果で注目される「抑肝散(よくかんさん)」に着目し、CAP法を用いて有効性を評価しました。CAP法(Cyclic alternating pattern)とは、近年、欧米で注目されている新しい睡眠評価法です。眠っているときの覚醒反応の脳波を解析するもので、熟眠感など主観に関する的確な指標とされています。
研究では、不眠症と診断された患者に抑肝散を1週間服用してもらい、服用前後の効果を調べました。その結果、抑肝散の服用後は睡眠の不安定さを表すCAP率が有意に低下。緊張感、平穏感、疲労感、頭重感、だるさなど睡眠の質といえる主観的な症状が改善し、副作用もないことがわかりました。小曽根講師は、「近年、漢方薬は基礎的な研究が進み、抑肝散はグルタミン酸系やセロトニン系の中枢神経系に働き、興奮の抑制に作用することがわかっています。ベンゾジアゼピン系睡眠薬の服用は、転倒率を2倍にするというデータがあります。認知症や転倒のリスクが高い人では、抑肝散を用いると作用の強い薬を使わずに済みます」と治療薬としての可能性に期待しています。

睡眠薬の増加は、誤った睡眠の知識も一因

ところで、睡眠時間について「1日8時間眠らないと病気になる」、「7時間、8時間が正常」。そう思っている人が多いのではないでしょうか。睡眠薬の使用が増え続けるのは、睡眠に対するこのような誤った知識にも一因があるといわれています。十分に眠れていないことが不安や恐怖になって、もっと眠らなくてはいけないと睡眠薬の服用につながり、使用量をますます増やしているというのです。

睡眠時間は個人差があり、変化する

人の睡眠時間は、年齢とともに変化していきます。赤ちゃんの頃は1日の3分の2は眠って過ごします。思春期になると睡眠時間は8時間ぐらいになり、50~60代では約6時間と、加齢とともに減っていきます。また、睡眠のパターンも変わります。高齢になると深い眠りが減って途中で目が覚める中途覚醒が増え、寝たり、起きたりを繰り返して早寝早起きにずれていきます。ナポレオンの睡眠時間は3時間、アインシュタインは10時間といわれていますが、睡眠時間は個人差があり、年齢とともに変化していくのがふつうです。まずはこのことを知っておきましょう。

不眠のきっかけと眠れないときの対処法

不眠は、あるとき眠れなくなり、つらい思いをするという体験から始まります。明日は眠れるだろうか…と心配になり、意識しすぎて緊張状態に陥り、慢性的な不眠が続いて睡眠薬の長期服用や過剰投与につながっていきます。
夜、どうしても眠れない。そんなときは、眠くなってからベッドに入るか、就寝時間を少し遅くずらしてみましょう。深夜のラジオを聞いたり、気持ちが落ち着くまで読書をしてもかまいません。起きていることを怖がらないことが大事です。眠れないのに無理にベッドに入って眠ろうとするのは、逆効果。かえって「眠れない条件づけ」になってしまいます。

不眠には必ず原因があります。しかし、日本では原因を探し出さないまま睡眠薬を服用している人が多いといわれています。快適な睡眠を得るには、安易に睡眠薬に頼らず、まずは自分にとって最適な睡眠時間を把握することから始めましょう。最近は、睡眠を測定する家庭用の睡眠計も増えてきています。睡眠時間がよくわからないときは、自分の睡眠を客観的に確認できる測定器を活用するのも一つの方法です。

監修
東京慈恵会医科大学 精神医学講座講師 小曽根 基裕先生

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