vol.186 「変形性膝関節症の再生医療」と膝の病気

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Vol.186 「変形性膝関節症の再生医療」と膝の病気

中高年になると増えてくる膝(ひざ)の痛み。その多くが「変形性膝関節症」です。男性より女性に多く発症し、60歳以上では、女性の2人に1人は膝に変形性変化があるといわれています。変形性膝関節症は、膝の関節軟骨がすり減り、太ももの骨とすねの骨がぶつかり、関節を包む滑膜が増えて痛みや炎症を起こします。膝の痛みは、治療してもなかなか治らないことがあり、このような変形性膝関節症に、近年、再生医療が行われています。

整形外科の分野で治療が広がる再生医療

これは、「PRP療法」(多血小板血漿療法)という治療法。自分の血液の血小板を用いて、傷んだ組織の回復を促進させる再生医療です。北里大学メディカルセンター 整形外科・ひざ関節センターでは、2019年から変形性膝関節症の他に、ゴルフ肘、骨折、肉離れなどの治療に用いる予定です。再生医療を提供しようとする医療機関は、再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づいて、事前に「再生医療等提供計画」の申請が定められています。同センターの占部憲教授は、「私どもの申請が認定再生医療等委員会を通り、厚生労働省に許可されました。治療を行っている病院はすでにありますが、大きな医療機関では少ないので、きちんと評価しながら質の高い医療を提供していきたい」と抱負を話します。

再生医療の効果と注意点

PRP療法は、患者さんから採取した血液を遠心分離機にかけ、血小板の多い成分を抽出し、これを注射で注入します。欧米では行われている治療で、プロ野球の選手が受けたことで話題になりました。変形性膝関節症では、飲み薬や関節内注射の治療で痛みがよくならない場合、効果があることが分かっています。
ただし、健康保険は適用されないため、医療費は自己負担です。治療回数が決まっていないなどの課題もあります。再生医療については、厚生労働省が「再生医療等提供機関一覧」で治療を行っている医療機関を公表しているので、検討するときは、ホームページで確認し、医師とよく相談することが大切です。

痛みが似ている膝の病気

膝関節の構造は複雑で、膝が痛む病気は、変形性膝関節症だけではありません。痛みをやわらげる飲み薬や関節内注射を続けてもよくならないときは、他の病気も疑われます。痛みが似ている病気を覚えておきましょう。

  • 半月板損傷
    半月板は、膝関節の関節軟骨の間にあってクッションの役目をしています。高齢者では、日常生活の動作でも切れてしまうことがあります。「日本人の変形性膝関節症は、膝の内側が痛くなる人が8割ですが、半月板損傷では、切れた部位によって内側や外側が痛くなります。特に内側半月板後角損傷は、非常に痛みます」(占部教授)。半月板の断裂は、エックス線検査では分からないため、MRI検査を受けるようにしましょう。
  • 偽痛風(ぎつうふう)
    偽痛風は、ピロリン酸カルシウムの結晶が関節にたまって発症します。膝関節が痛むことが多く、急激に炎症が進みます。「膝が腫れて痛い」「膝に水がたまる」「熱っぽい」という症状が現れます。比較的高齢の人に発症します。
  • 関節リウマチ、膠原病、化膿性関節炎
    偽痛風以外の関節炎では、関節リウマチや膠原病、化膿性関節炎などがあります。化膿性関節炎は関節の中に細菌が侵入し、感染によって発症する関節炎です。頻度は少ないのですが、糖尿病の患者さんや抵抗力の低下している高齢者などでは、急に発症することがあります。
  • 特発性膝骨壊死(とくはつせいひざこつえし)
    膝が痛くて歩けない。このような痛みは、特発性膝骨壊死でも起こります。原因は不明で膝の血流が悪くなり、骨が弱くなって体重がかかる場所がへこむように折れます。痛みは、膝関節の骨と骨のすき間や膝の内側に現れ、骨壊死の範囲は人によって異なります。

手術という選択と痛みの予防対策

変形性膝関節は保存療法をしても痛みが治らず、日常生活に支障がある場合は、手術を検討します。骨を矯正して体重がかかる位置を変える「骨切り術」(こつきりじゅつ)と、膝関節を人工関節に置き換える「人工関節置換術」があります。
手術はできればしたくないと考える人が多いのですが、痛みで歩けない時間が長くなるほど、健康寿命に影響すると占部教授。「私が手術した患者さんで最もご高齢の方は、91歳です。手術はご自分の脚で歩きたいかどうか。痛くない膝で歩きたいと思ったら、いくつになってもなれる方法があります」。
また、変形性膝関節症では、膝が曲がらず正座ができなくなる前に、膝が伸ばせなくなっています。両脚を伸ばして座り、膝の裏側が下につかなかったら、脚はまっすぐに伸びていません。「膝の痛みはこの段階から意識し、進まないようにすることです。痛みがあったら早めに診察を受けて、適切な保存療法を始めることが大切です」(占部教授)。

監修 北里大学メディカルセンター 副院長 整形外科・ひざ関節センター教授 占部 憲先生
取材・文 阿部 あつか

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