vol.197 大人の長引く咳にご用心

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Vol.197 大人の長引く咳にご用心

寒暖の差が大きい秋の入口は、咳や痰に気を付けましょう。市販の咳止め薬にも注意する必要があります。咳や痰を安易に考えて、診察を受けないと自分でも思いもしない病気になっている可能性があります。大人の長引く咳や最新の治療について紹介します。

大人の長引く咳では、「咳喘息」に注意

風邪と思って2~3週間咳が続き、咳だけ止まらない場合は、咳喘息(せきぜんそく)の可能性があります。咳喘息は、大人の長引く咳の代表的な原因です。「コン、コンと乾いた咳が出て、胸の音を聞いたり、レントゲン検査を行ったりしただけでは診断できません。咳喘息の中には気管支喘息の前段階と考えられるものがあり、放置すると喘息に移行することがあるため、適切な診療をして気管支喘息にしないことが重要です」(松瀬教授)。咳喘息は、医師でも気づきにくい呼吸器の病気です。治療は吸入ステロイド薬を定期的に用います。市販の咳止め薬ではよくならいため、知っておきたい病気です。

「誤嚥性肺炎」にも気を付けよう

一方、咳や痰を出したくても出せない人もいます。高齢者や脳梗塞、寝たきり、体力が低下した人などです。風邪をひくと咳や痰を市販薬で止めようとしますが、咳がまったく出ないと痰がたまりやすくなります。「食中毒を起こすと下痢をするのと一緒で、咳や痰は体によくないものを出そうとするので、痰が多くても咳が出ないお年寄りなどでは、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)になったりします。咳や痰は悪いことばかりではないのです」(松瀬教授)。
咳や痰が出るのは、本来、体に備わった反射です。異物を咳で弾き飛ばし、痰で洗い流しています。自分で体を動かしにくい人では、家族や周囲の人が咳や痰を出すことにも配慮を忘れないようにしましょう。

脳が関わる咳の治療事情

元来、咳や痰は外から体内に侵入しようとした異物を取り除き、自分の体を守るためのものです。最近の研究から、その咳に脳が関わっていることが分かっています。たとえば、「明日大事な発表があるけれど、夜中に咳が出で眠れないかも」など咳に精神的な不安があると脳にも影響するのです。このようなときは、精神安定剤などを併用することがあります。
また、「大声を出す」「辛いものを食べる」「麺をすする」「階段を駆け上がる」など咳が出やすい行動を避ける生活指導を受けることが重要です。

咳が長引いたときの受診の仕方

大学病院の呼吸器内科には、1カ月以上たって紹介状を持って受診する人や、心配して発症から1~3日で来院する人など様々です。しかし後者では、早すぎて原因がよく分からないこともあります。1カ月以上長引いて、原因が分からず受診するときは、

  • いつ出るのか
  • どんなときに出やすいのか
  • 肺などに持病はないか
  • これまでに効いた薬、効かない薬はあるか

などをよく理解して受診先の医師に伝えましょう。「お薬手帳があるとそのヒントになります。あなたの大切な情報です」(松瀬教授)。

市販の咳止め薬は続けない

咳や痰には10年を超えて症状が続いたり、精神的な要因が絡んでいたりすることがあります。さらに近年は、市販の咳止め薬で薬物依存になる人が増加しています。薬物依存は、身近な市販薬でも起きます。自分で使うときは上手につき合いたいものです。「急性期に決められた量を飲むのは、問題ないと思います。しかし、2カ月もたっているのに咳が続いているのは、何か原因があるはずです。市販薬を何箱も買って飲み続けていたり、市販薬を飲み切っても咳が出るようだったら病院へ行くべきです」(松瀬教授)。
市販の咳止め薬は気軽に購入できます。しかし、咳や痰には肺がんや結核、おもにタバコが要因になるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など多くの原因があり、分からないまま市販薬を飲み続けていると重要な病気を見逃すことがあります。自分で原因がはっきりしないときは、呼吸器科やアレルギー科を備えた総合病院を受診するようにしましょう。

監修 東邦大学医療センター 大橋病院 呼吸器内科 教授 松瀬 厚人先生
取材・文 阿部 あつか

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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