vol.54 歯周病が引き起こす全身病

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Vol.54 歯周病が引き起こす全身病 日本人に最も多い細菌による感染症は、歯周病といわれています。厚生労働省の「歯科疾患実態調査」によると、45~54歳の中年層では88%もの人にその兆候がみられます。一方、アメリカの場合、アメリカ歯科医師会の調査では、65歳以上の80%の人が歯周病と発表されているので、日本人のほうがより多いといえます。これは、アメリカのほうが正しい歯磨き習慣があるからでしょう。
この歯周病、実は口腔内の疾患というだけではなく、全身の病気に影響しています。今日、初めて分かったことではなく、医聖ヒポクラテス(紀元前 460-377年)はすでに2400年も前に「口の中に慢性感染症があると全身の健康を害する」と指摘するのみならず、「その慢性疾患を治すと全身の健康を回復できる」とまで言っています。それが今、次第に科学的根拠を持って、歯周病は全身病と密接な関係があることが分かってきたのです。

「ヘルシーライフ」の連載第12回では、「歯周病と心臓疾患」の関係を紹介ましたが、それ以外にも多くの病気が引き起こされています。 関連性のある疾患に“夜の暗殺者”といわれている「誤嚥(ごえん)性肺炎」があります。肺炎は日本人の死因の第4位です。誤嚥性肺炎は高齢者に多く見られます。口から食道へと入っていくはずの飲食物が誤って気管支に入ってしまい、免疫力が低下している高齢者では肺の中へつばと一緒に入った歯周病菌が増殖し、死に結び付いてしまいます。
誤嚥性肺炎以外には、肥満、糖尿病、メタボリックシンドロームとの関係も大きく指摘されています。
マウスを使った実験により歯周病が肥満に結び付くことが分かりました。歯周病菌が出す毒素をリポ多糖といいますが、そのリポ多糖をマウスの皮下に4週間連続して埋め込んだ結果、肝臓に脂肪が沈着し、肥満へと結び付いたのです。歯周病菌から出たリポ多糖が、歯肉の炎症部分から血液中に入り込んでいくので、歯周病があると肥満に結び付くのです。
そして、肥満になるとインスリンの分泌が少なくなったり、働きが悪くなって、その結果、糖尿病に結び付いてしまいます。
さらに、歯周病から肥満、糖尿病に結びつくメカニズムは、メタボリックシンドロームと強い関係もあります。メタボの危険因子で中心になるのが肥満です。歯周病は肥満をつくり、糖尿病をつくります。肝臓に脂肪を蓄積させるので高脂血症を生み出します。つまり、メタボ・サイクルなのです。
また、女性にしっかり認識してほしいのが「歯周病と早産・低体重児出産」です。7151人の妊婦を分析対象とした調査では、そのうちの1056人が早期低体重児出産をしているという結果がでました。そして、歯周病を持つ妊婦は早期低体重児出産のリスクは歯周病を持たない妊婦の2.83倍にもなります。早産では2.27倍、低体重児出産リスクでは4.03倍と報告されといます。
今後、もっと大規模な調査が必要と指摘されてはいるものの、リスクが分かっているので、できる限りリスクとなる歯周病を改善すべきでしょう。

歯肉に炎症が起き、重症化すると歯を失う歯周病の治療は、歯肉より上は患者さんが責任を持って徹底的にブラッシングし、そして、歯肉より下は歯周病を得意とする歯科医に責任を持って対応してもらうのが大事です。
歯科医はスケーラーや超音波スケーラーという器具を使って歯周病の原因であるプラーク(細菌そう)と共に歯石を取り除きます。
一方、歯肉から上のコントロールがしっかりできない患者さんに対しては、1カ月に1回、定期的に歯科衛生士による歯磨き指導とプラーク・コントロールが行われます。これを行わないと、治療後4週間で元の木阿弥になることが研究で分かっているからです。まずは、正しい食後の歯磨きを徹底しましょう。
  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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