vol.7 糖尿病の薬物療法で注意したい「低血糖症」
健康・医療トピックス
わが国の糖尿病患者は、予備軍も合わせて1,620万人に突入しました。日本人の6.3人に1人が糖尿病もしくは糖尿病予備軍とは、まさに糖尿病は“国民病”といっても過言ではないでしょう。
糖尿病は、早期に血糖をしっかりコントロールすると薬物療法にまで進まないものの、症状がないだけについつい甘く考えがちで、放っておくと結局、薬物療法を行わざるを得なくなる人が少なくありません。
この薬物療法を行っているときに最も注意しなければならないのが“低血糖症”です。低血糖症は、“薬の副作用”と言われていますが、正しくは薬の効き目が強すぎ、血糖値(血液中のブドウ糖の量)が低下しすぎた状態のことで、最悪の場合、意識不明の重体におちいることがあります。
昔は救急車で運ばれても原因がわからないと手遅れになるケースもありましたが、今では救急車で運ばれると必ず血糖値を測りますので、死に至るケースはほとんどなくなりました。
健康な人の場合は、空腹時血糖値は70~100mg/dlくらいで安定しています。ところが、糖尿病でインスリン注射や経口血糖降下薬を服用中の場合は、食事を摂るのが遅くなったり、いつもより激しい運動をした後などに低血糖が起きやすくなります。
普段、血糖値がかなり高い人は70mg/dlくらいですでに低血糖の症状が出てくるケースもありますが、普通は60mg/dl以下になって強い空腹感、疲れ、生あくびなどの症状が出てきます。そして、50mg/dlを切るようになると動悸、発汗、ふるえといった典型的な症状のほか、物が二重に見えたり、めまいなどの症状も起きてきます。
症状に気付いたら、スティックシュガーを20g食するか、果汁100%のジュースを250cc飲みましょう。これで低血糖は改善されます。ですから薬物療法を行っている人は、常に携帯に便利なスティックシュガーを持ち歩きましょう。
ただ、経口血糖降下薬でも腸からのブドウ糖の吸収を抑えるα-グルコシダーゼ阻害薬を服用中の人は、スティックシュガーを食して低血糖を改善しようと思っても、α-グルコシダーゼ阻害薬の作用ですぐには砂糖が分解されません。このような人の場合は、ブドウ糖の粉末剤を携帯することが不可欠です。
動悸、発汗、ふるえの状態で対応できず、30mg/dlを切るようになるとけいれんが起き、意識不明に――。
このような状態のときに家族が周りにいて気付いたとしても、砂糖やジュースを飲ませるのはやめましょう。注意しないと肺炎を起こすこともあるからです。すぐに救急車で病院へ運び、的確な治療を受けましょう。
低血糖では血糖コントロールの乱れにより危険な状態にもなるので素早い対応が大事です。それには次のような理由があります。体内には血糖を上げるホルモンと下げるホルモンが分泌されていて、それぞれ重要な役割を担っています。血糖を上げるホルモンにはグルカゴン、アドレナリン、コーチゾール、脳下垂体の成長ホルモンなどがあります。一方、血糖を下げるホルモンはインスリンのみです。低血糖になると体は血糖を上げようと、血糖を上げるホルモンを大量に分泌します。すると、分泌過剰から、今度は高血糖に――。まさに、血糖コントロールは乱れに乱れてしまいます。これを避けるためにも、素早く低血糖を察知して対応することが大事なのです。
糖尿病は、早期に血糖をしっかりコントロールすると薬物療法にまで進まないものの、症状がないだけについつい甘く考えがちで、放っておくと結局、薬物療法を行わざるを得なくなる人が少なくありません。
この薬物療法を行っているときに最も注意しなければならないのが“低血糖症”です。低血糖症は、“薬の副作用”と言われていますが、正しくは薬の効き目が強すぎ、血糖値(血液中のブドウ糖の量)が低下しすぎた状態のことで、最悪の場合、意識不明の重体におちいることがあります。
昔は救急車で運ばれても原因がわからないと手遅れになるケースもありましたが、今では救急車で運ばれると必ず血糖値を測りますので、死に至るケースはほとんどなくなりました。
健康な人の場合は、空腹時血糖値は70~100mg/dlくらいで安定しています。ところが、糖尿病でインスリン注射や経口血糖降下薬を服用中の場合は、食事を摂るのが遅くなったり、いつもより激しい運動をした後などに低血糖が起きやすくなります。
普段、血糖値がかなり高い人は70mg/dlくらいですでに低血糖の症状が出てくるケースもありますが、普通は60mg/dl以下になって強い空腹感、疲れ、生あくびなどの症状が出てきます。そして、50mg/dlを切るようになると動悸、発汗、ふるえといった典型的な症状のほか、物が二重に見えたり、めまいなどの症状も起きてきます。
症状に気付いたら、スティックシュガーを20g食するか、果汁100%のジュースを250cc飲みましょう。これで低血糖は改善されます。ですから薬物療法を行っている人は、常に携帯に便利なスティックシュガーを持ち歩きましょう。
ただ、経口血糖降下薬でも腸からのブドウ糖の吸収を抑えるα-グルコシダーゼ阻害薬を服用中の人は、スティックシュガーを食して低血糖を改善しようと思っても、α-グルコシダーゼ阻害薬の作用ですぐには砂糖が分解されません。このような人の場合は、ブドウ糖の粉末剤を携帯することが不可欠です。
動悸、発汗、ふるえの状態で対応できず、30mg/dlを切るようになるとけいれんが起き、意識不明に――。
このような状態のときに家族が周りにいて気付いたとしても、砂糖やジュースを飲ませるのはやめましょう。注意しないと肺炎を起こすこともあるからです。すぐに救急車で病院へ運び、的確な治療を受けましょう。
低血糖では血糖コントロールの乱れにより危険な状態にもなるので素早い対応が大事です。それには次のような理由があります。体内には血糖を上げるホルモンと下げるホルモンが分泌されていて、それぞれ重要な役割を担っています。血糖を上げるホルモンにはグルカゴン、アドレナリン、コーチゾール、脳下垂体の成長ホルモンなどがあります。一方、血糖を下げるホルモンはインスリンのみです。低血糖になると体は血糖を上げようと、血糖を上げるホルモンを大量に分泌します。すると、分泌過剰から、今度は高血糖に――。まさに、血糖コントロールは乱れに乱れてしまいます。これを避けるためにも、素早く低血糖を察知して対応することが大事なのです。

※このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。
執筆者プロフィール

松井 宏夫
医学ジャーナリスト
- 略歴
- 1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。