vol.84 舌がんは切らずに治る!

健康・医療トピックス
口の中にできる口腔がんの50%を占めるのが『舌がん』。「できることなら舌を失いたくない」、と患者さんは思っています。 その声に応える治療が、舌がんの初期・早期の段階で行われています。それは『小線源療法』で、小さな放射線源を患部に挿入して行う放射線療法のひとつです。
舌がんの初期・早期とは病期でいうとI期・II期となります。

● I期 がんの大きさが2cm以下。
そして、リンパ節への転移がない。
● II期 がんの大きさが2cmを超えて4cm以下。
そして、リンパ節への転移がない。

I・II期の段階では手術も放射線も治癒率は80~90%で同じ。とりわけ、1cm未満の舌がんであれば、部分切除手術を行っても舌運動などの機能障害はまったくないので、ここでは手術を選択しても問題はありません。
小線源療法が選択肢としてあがってくるのは、舌がんの大きさが1~4cmくらいの場合です。治療成績は手術と変わらないものの、小線源療法は舌を失うことがないので、会話、味覚、唾液分泌、顎関節運動、舌運動といった機能障害が起きにくいのが特長です。
その小線源療法はひとつではなく、「セシウム針による治療」「イリジウムピン線源を使う治療」、そして「金粒子による治療」があります。
患者さんが放射線治療を希望し、適応と診断されると約7日間の放射線管理区域の専門病室への入院と併せ、約1~3週間の入院治療が行われます。小線源療法のどの治療を選択するか、どこに刺入するか、といった治療計画を決定して進められます。
いずれも舌への刺入、埋入は放射線治療室で局所麻酔をして行われます。
セシウム針は計画の場所に直接刺し入れます。針の長さは2、3、4cmと種類があり、病巣が針から5mm以上離れると放射線の効果はありません。 イリジウムピン線源は非放射性のガイド管針を刺し、その中にピンを刺し入れた後、ガイド管針を抜きとります。
そして、金粒子は直径0.8mm、長さ2.5mmの小さな円柱状の点線源。金を白金でメッキしたもので、永久埋入となります。
いずれの治療法でも7日で放射線量を70グレイにするのが標準治療線量。針の場合には、その線量に達したら抜きとります。
舌を切ることのない小線源療法を選択しようとするならば、舌がんが最大でも直径4cmまでの早期に発見する必要があることを十分に知っておきましょう。
(※舌がんの早期発見につきましては、この連載のvol.64をご参照ください)

vol.84 舌がんは切らずに治る!

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執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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