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血圧ラボ 血圧基礎知識編血圧の基本

血圧とは

病院では発見できない仮面高血圧に注意①

夜間の血圧が高いことによるリスクとは

病院で測定した血圧値が正常であったとしても、それ以外の時間や場所で測定してみると血圧が高い人がいます。そのような例は、診察時には高血圧がかくれていることから「仮面高血圧」と呼ばれています。毎日の家庭血圧測定や頻回計測が大切だといわれているのは、病院では発見できないこの「仮面高血圧」が潜んでいる可能性があるからなのです。

仮面高血圧はイベントリスクが高い

仮面高血圧は、診察室外血圧が上昇している時間帯によって、「早朝高血圧」、「昼間高血圧」、「夜間高血圧」という3つに分類されます(図)。仮面高血圧の人は診察室血圧が高い患者さんと同様に、心血管イベントリスクが高いことがわかっています。また、仮面高血圧の人は、脳心血管疾患が持続性高血圧※の人より早く進行するといわれており、その脳心血管疾患リスクは正常血圧の人を1とすると、持続性高血圧の人が2.94倍、仮面高血圧の人は3.86倍にもなります。
仮面高血圧のリスクが高いのは、降圧療法中の患者さん、正常高値血圧の人(130~139/85~89mmHg)、喫煙者、飲酒量の多い人、ストレスが強い人、肥満・メタボリックシンドローム・糖尿病を有する人などです。このような人では、診察室血圧が正常かどうかにかかわらず、積極的に家庭血圧や24時間血圧計(ABPM※※)を測定することが推奨されています。

※持続性高血圧:診察室血圧が140/90mmHg以上と高く、なおかつ診察室外血圧も基準値以上の高血圧
※※ABPM :血圧を1日中連続して測定できる携帯型自動血圧計

夜間高血圧に注意

一般的に血圧は、昼間の覚醒時より夜間の就眠時の方が低くなります。しかし、高血圧患者さんの中には、

  • 夜間血圧が昼間の血圧と比較して上がる人(夜間昇圧型,riser型)
  • 夜間血圧と昼間の血圧が変わらない人(昼間と比べ10%未満、夜間非降圧型,non-dipper型)
  • 夜間血圧が昼間の血圧と比較して下がる人(昼間の血圧の10%~20%、夜間降圧型,dipper 型)
  • 夜間血圧が下がりすぎる人(昼間の血圧の21%以上、夜間過降圧型,extreme-dipper 型)

のようにいろいろなタイプがあります。
これらのタイプの中で、睡眠中も血圧が下がらず、夜間の血圧が高い場合を、「夜間高血圧」といいます。また、夜間血圧が昼間の血圧と比較して高い夜間昇圧型(riser型)は、心血管イベントのリスクが高く、特異度の高い夜間高血圧です。夜間血圧の上昇は、心血管イベントリスクの増加、認知・身体機能の低下と関連しているため、注意が必要です。夜間血圧をターゲットにした降圧療法のエビデンスは確率されていませんが、夜間血圧を下げることができれば、同程度に診察室血圧値を下げて得られる心血管イベント抑制率よりも2倍以上の効果(低減率)が期待できるという報告があります。
高血圧治療は24時間にわたって正常血圧であることが望まれますので、診察時の血圧が正常でも、早朝や夜間など、診察時以外の時間帯で血圧が高い場合は、かかりつけ医とよく相談し、あらゆる時間帯で正常血圧となるよう取り組みましょう。

【図】仮面高血圧の種類(日本の高血圧治療ガイドライン)

【図】仮面高血圧の種類(日本の高血圧治療ガイドライン)
日本高血圧学会発行:高血圧治療ガイドライン2014 “第2章 血圧測定と臨床評価”:15-27

参考

高血圧治療ガイドライン2014 第2章血圧測定と臨床評価
特定非営利活動法人「日本高血圧協会
吉田哲郎:日本臨牀2018; 76(8): 1442-1447
Hermida RC, et al: J Am Coll Cardiol 58: 1165-1173,2011.
高血圧治療ガイドライン作成委員会 他:一般向け高血圧治療ガイドライン解説冊子「高血圧の話」

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