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動悸は心拍を通常より強く・速く、あるいは不規則に自覚する状態を指します。「バクバクする」「一拍抜けて強く打つ」といった表現が手がかりです。めまいは、ぐるぐる回る回転性、ふわふわする浮動性、起立時に視界が暗くなる立ちくらみに大別されます。安静でも数分以上持続する、胸痛・失神・片側の脱力・ろれつ困難を伴う、あるいは階段や坂での息切れが明らかに増えたといった所見があれば、早めの医療相談を検討してください。
最初に呼吸を整えます。肩の力を抜き、背筋を保ったまま長く吐いて自然に吸う腹式呼吸を数分行います。転倒予防のため座位(可能なら横になり下肢を軽く挙上)を取り、衣服やベルトをゆるめます。高温・人混みでは涼しい場所へ移動し、脱水が疑われる場合は少量ずつの水分補給を心がけます。発症時刻、持続、誘因、概ねの脈拍数を簡潔に記録しておくと、受診時の診断がスムーズに進みます。
症状が改善せず増悪する、短期間に反復する、仕事や家事に支障が出る場合は、計画的な受診が妥当です。市販薬の自己調整や処方薬の中断は避け、服薬中の薬剤・既往歴・症状記録を持参してください。安全性の確保と鑑別精度の向上につながります。
起床・就寝時刻をできるだけ一定に保ち、6〜8時間の睡眠を確保します。就寝前30分はスクリーンオフ、朝は自然光を浴びて体内時計を整えます。長時間の同一姿勢を避け、1〜2時間ごとに短い休憩とストレッチを挟むと、血圧変動や過換気の予防に有効です。
発汗が増える季節や運動時は計画的な水分補給を行い、必要に応じて塩分・電解質も補います。食事は鉄・たんぱく質(赤身肉・魚・大豆・葉物)を意識し、過度の減量や朝食抜きは避けます。カフェイン・アルコール・喫煙は量とタイミングを管理し、とくに午後遅い時間のカフェインと就寝前の飲酒は控えます。緊張が高まったときは、吐く→吸うの順で呼吸を整えると過換気を抑制できます。
強い胸痛・圧迫感、会話や歩行が困難な呼吸困難、失神・片側の脱力・構音障害を伴う場合は、救急受診の対象と考えます。時間依存的に重篤化する疾患(急性冠症候群、脳血管イベント等)を見逃さないため、自己判断での経過観察は推奨されません。
心拍の乱れや胸部症状が前景にある場合は循環器内科、耳鳴り・耳閉感・回転性めまいが強い場合は耳鼻咽喉科の受診が有用です。背景要因が不明瞭で全身症状が多い場合は内科を起点とし、必要に応じて連携診療を受けると効率的に鑑別が進みます。
頻脈性・不整脈性の動悸にはβ遮断薬、カルシウム拮抗薬、適応に応じて抗不整脈薬を用います。内耳性のめまいには抗めまい薬や制吐薬を短期に併用し、症状緩和を図ります。心不全では利尿薬やACE阻害薬/ARB、必要によりSGLT2阻害薬などを組み合わせ、うっ血と負荷を調整します。貧血・甲状腺機能異常・低血糖などが基礎にある場合は、原因治療を優先します。薬剤の開始・変更・中断は必ず主治医の指示に従ってください。
発作性上室性頻拍・心房細動では、再発や合併症リスクを踏まえカテーテルアブレーションを選択する場合があります。徐脈性不整脈ではペースメーカーの適応を検討します。内耳疾患では頭位変換法(BPPV)や前庭リハビリが有用です。治療後は定期通院で症状経過・脈拍・血圧・体重・浮腫を確認し、必要に応じて治療を段階的に最適化します。
腹式呼吸の習慣化は過換気の抑制に有効で、認知行動療法は予期不安の軽減に寄与します。症状日記(発症時刻、持続、誘因、同時症状、脈拍概数)を継続すると、再発パターンの把握と治療調整が容易になります。服薬アドヒアランスを維持し、生活行動(睡眠・運動・栄養)の再現性を高めることが、長期的な再発抑制につながります。
めまいを伴う動悸への対応は、適切な初期介入、予防的な生活管理、妥当な受診判断、根拠に基づく治療の四本柱で成り立ちます。強い胸痛や神経症状、回復しにくい持続的なめまいを伴うときは、ためらわず受診してください。原因の層別化と生活習慣の最適化を継続することで、再発の抑制と生活の質の維持が期待できます。
三菱京都病院顧問 循環器専門医 医学博士 桝田 出
【経歴】
1980年 東京慈恵会医科大学卒業
慈恵医大第3内科、国立循環器病センター、京都大学第2内科などを経て現職。
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