また最近は、中高年のうつ病が社会的な問題となっています。その背景には、リストラや老後への不安などといったさまざまな要因がありますが、うつ状態になる人の脳では、ノルアドレナリンやセロトニンといった神経伝達物質の減少がみられます。
ノルアドレナリンは集中力や積極性に関係する物質で、セロトニンは気分を調節する物質です。そのためこれらが不足すると、仕事や遊びに対する持続性や関心が薄らぎ、イライラ感や気分の落ち込みが生じやすくなります。つまり、うつ病の症状が出てくるわけです。セロトニンが不足すると、そこからつくられるメラトニンという誘眠物質も不足し、眠れないといった睡眠障害が起こります。そのため脳が休養できなくなり、神経伝達物質の働きがさらに低下するという悪循環におちいることにもなります。
ドーパミンは、「快感ホルモン」ともいわれるように、楽しさや心地よさといった感情を生み出す物質です。子供の頃はドーパミンの分泌が盛んなので、ちょっとしたことでも楽しく感じ、大喜びします。それだけやる気も出てきます。ところが年齢とともにドーパミンの分泌量が減少するため、中高年になると物事への感動が薄らぎ、楽しいと感じることも少なくなりがちです。
ドーパミンにはもうひとつ、体の動きをコントロールする重要な役割もあります。中高年になると、体の動きがスムーズでなくなるのは、ドーパミンの減少が一因といわれています(*3)。
- *3ドーパミンは過剰になると統合失調症を、不足するとパーキンソン病を発病しやすいことが知られています。また、中高年男性の性的能力の衰えも、ドーパミンの減少が関係しているといわれています。