2013.03.08

vol.117 中高年らしい「良い睡眠」とは

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睡眠にも「加齢変化」がある

Vol.117 中高年らしい「良い睡眠」とは 中高年になるにつれ、「よく眠れない」とか「途中で目が覚める」といった睡眠に関する不満の声が多くなります。しかし、その理由がよく分からないまま、ほとんどの方は「トシのせい」とあきらめているようです。
じつは、中高年の睡眠には、興味深い傾向がみられます。一般に、睡眠時間は高齢になるほど短いと思われていますが、『国民健康・栄養調査』によると、成人の1日の平均睡眠時間は高齢になるほど長くなっています(※1)。たとえば男性の場合、睡眠時間が6時間以上の人の割合は20歳代~40歳代は50%台ですが、50歳代は67%、60歳代は76%、70歳以上は82%と増えていきます。また女性の場合は、60歳代が67%、70歳以上が77%となっています。
その一方で、睡眠に対して不満を感じている人も、高齢になるほど多くなるのです。たとえば、この1ヵ月間に眠れないことが「頻繁にあった」「ときどきあった」という人は、男性は50歳代が50%、60歳代が56%、70歳以上が59%。女性も50歳代が57%、60歳代が64%、70歳以上が63%で、いずれも若い世代よりかなり多くなっています。
平均睡眠時間が長ければ、それだけ十分な睡眠がとれていると思われがちです。ところが中高年の場合、「長時間寝ているのに不満も増える」というパラドックス(矛盾)が生じているのです。
なぜ、こうした現象が起こるのでしょうか。それは、睡眠にも加齢による変化があるからです。その加齢変化とはどういうものなのかを知って、中高年らしい「良い睡眠」にアプローチしましょう。

(※1)厚生労働省『国民健康・栄養調査(平成22年)』。対象は20歳以上の成人。

加齢変化① 深い眠りの減少

睡眠の加齢変化には、2つの大きな特徴がみられます。
1つは、「深い眠りが少なくなる」ことです。
睡眠には、深い眠り(ノンレム睡眠)と浅い眠り(レム睡眠)があります。深い眠りは、睡眠の前半に多くみられ、脳の休息である「熟睡」に相当します。その熟睡時間が、中高年になると減少してきます。個人差はありますが、若い頃(20歳代、30歳代)とくらべると、50歳以上では半分から3分の1程度にまで減少します(自分の睡眠の傾向は、睡眠計でも知ることができます)。
その一方で、浅い眠りの時間は相対的に長くなります。浅い眠りは脳が活動している状態なので、ちょっとした刺激(音、光、温度など)で目が覚めます。そのため、中途覚醒や早朝覚醒が起こりやすくなります。
また、脳の活動は、夢を見ることにもつながります。リラックスできる楽しい夢ならいいのですが、中高年になると過去のつらいことや体調の不安などが夢になり、寝ながらストレスを感じることも少なくありません。
こうした深い眠りの減少と浅い眠りの増加が背景となり、「長時間寝ているのに、熟睡した感じがしない」という状態になりやすいのです。
なぜ深い眠りが減少するのか、その理由はまだよく分かっていません。深い眠りのときには成長ホルモンが多く分泌されますが、中高年になるとその必要がなくなるから、という説もあります。
しかし、深い眠りは、起きている時間の長さや昼間の活動量などに影響されやすいことも知られています。つまり、1日の総睡眠時間が長かったり、からだをあまり動かさない生活(運動不足)になるほど、深い眠りが得られないのです。

加齢変化② 体内時計の乱れ

睡眠の加齢変化の第2は、「体内時計の乱れ」です。
私たちのからだには、睡眠や血圧、体温などの1日のリズムを調整する体内時計(時計遺伝子)があることは、よく知られています。そのうちの睡眠のリズムには、体内時計と連動して、睡眠ホルモンといわれるメラトニンの分泌が大きな影響を与えています。メラトニンは、私たちが活動する朝から日中にかけては減少し、夜間に増えることで、からだを眠りに誘う働きをしています。
ところが中高年になるにつれ、夜間のメラトニンの分泌量が減少するため、それが体内時計の乱れとなり、睡眠障害を引き起こす原因になることが指摘されています。
さらに最近の研究から、体内時計の新しい側面がいろいろ分かってきています。体内時計は、中心となる親時計が脳の視交叉上核という部分にありますが、それ以外に子時計(末梢時計)が脳の海馬や肝臓、心臓などの内臓にも数多くあり、それらが一体となって全体の調整システムを形成しているのです。
また従来は、体内時計をリセットする要素として、光の影響(光同調性)が知られていました(※2)。たとえば、太陽の光をしっかり浴びることで、体内時計が正しいリズムをつくるのです。
しかし、それだけでなく体内時計のシステムは、体温変化や食事時間などさまざまな要素とも関係していることが分かってきています。たとえば、中高年になるにつれ体温の日内変動(1日の変化)が少なくなりますが、その影響で時計遺伝子を活性化するタンパク質の働きが弱まることが報告されています。また、規則正しく食事をしないと、肝臓などの末梢時計がリセットされにくいことも判明しています。
一般に体内時計は、加齢によって前倒し状態(朝も夜も早くなる)になりやすいのですが、いま紹介した光の量、体温の変化、食事時間などの影響も受けやすく、それらが睡眠の加齢変化をもたらす要因となっています。

(※2)人間の体内時計は、約24.5時間の周期をもっています。朝日などの光を浴びることで、1日24時間の周期にリセットされると考えられています。

中高年の「良い睡眠」のために

睡眠の加齢変化の特徴(深い眠りの減少、体内時計の乱れ)を踏まえて、「良い睡眠」にチャレンジしてみましょう(睡眠形態には個人差があるので、自分に適した方法を実行して下さい)。

<深い眠りを増やす>
①起きている時間を長くする
徹夜をした翌日は熟睡できた、という経験をもつ人は多いはず。起きている時間が長くなると、深い眠りを得やすくなります。一般に、中高年になると就寝時刻が早くなりますが、本当に眠くなるまでは寝ないのも1つの方法です。また、夕食後テレビを見ながら居眠りする方が少なくありませんが、家事や軽い運動などでリフレッシュして、起きている時間を長くしてみましょう。
②活動量を増やす
1日の活動量が少ないと、深い眠りも減ります。ウォーキングなどの運動を一定時間する、積極的に買い物や展覧会などに出かける、仕事や家事ではこまめにからだを動かすなどの方法で、活動量を増やしましょう。活動量計や歩数計で継続して測定すると、自分の活動量の増減を知る目安になります。
③生活習慣病をきちんと管理する
糖尿病や高血圧があると、睡眠が不十分になりがちです。また逆に睡眠に問題があると、糖尿病や高血圧が悪化しやすくなります。血糖値や血圧をきちんと管理することも大切です。

<体内時計をリセットする>
①太陽の光を浴びる
明るい時間に外出して太陽光を浴びると、夜間にメラトニンの分泌が盛んになり、睡眠に入りやすく、体内時計もリセットされやすくなります。
②夕方に運動をする
夕方に適度の運動をして体温を上昇させると、夜間に向けて体温が低下して眠りに入りやすくなります。体温の変動にメリハリをつけることは、体内時計にも良い影響を及ぼします。
③食事は規則正しく
体内時計は、規則正しい時間に食事を摂ることでもリセットされます。とくに朝食は、体内時計のリセットに重要とされています。
④深夜の室内照明は暗めにする
夜遅くまで強い光の下にいると、メラトニンの分泌が低下し、睡眠障害を起こしやすくなります。夜遅くなったら、間接照明やスタンド照明に切り替え、支障のない程度の明るさにして、睡眠の体勢を整えましょう。また、パソコンやテレビなどのモニター画面も強い光源なので、インターネットやメール、ゲームなどを夜遅くまでやらないことも大切です。

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