vol.174 旬の魚で血管の老化を改善しよう!

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ヘルシーライフ

寒さが厳しくなるにつれて気になり始めるのが血管の病気。心筋梗塞による心停止は秋から増え始め1月がピークになっていることがわかっています1)。日頃の健康管理が重要ですが、冬は血管の老化を改善するチャンスでもあります。動脈硬化や循環器疾患の予防に有効な成分として知られるDHAやEPAは魚介類に多く含まれ、夏よりも冬に獲れる魚の方が多いとされています。DHAやEPAは、脂肪に含まれる成分のため、脂がよくのる季節の魚に多いのです。例えば、春獲りカツオのDHAは120mgですが、脂がのった秋獲りカツオは970mg(共に生で可食部100gに対する量)と8倍以上差があります2)。脂がのったおいしい旬の魚を利用して、血管の老化を改善していきましょう。

血管に対するDHAとEPAの作用

日本人は欧米人と比べて、食塩の摂取量が多く高血圧の有病率が高いことから脳卒中を発症するリスクが高いのですが、その一方で、血清コレステロールが低いため、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)の発症リスクは比較的低いとされています3)。この理由の一つとして、欧米人で血清コレステロールを増やす飽和脂肪酸を多く含む牛や豚など動物性脂肪の摂取が多いのに対して、日本人では魚を多く食べる習慣があるからではないかと考えられています。さまざまな研究でも、魚に含まれるDHAやEPAには、血栓を溶かす作用や中性脂肪の低下が認められ、動脈硬化を抑制する作用があると報告されています4)5)
ちなみに、グリーンランドのイヌイット人は魚を常食とするために血管障害が少ないという話6)は有名ですが、DHAやEPAの健康効果については、世界中で多くの研究結果が発表されています。米国のハーバード大学の研究によると、脂肪の多い魚なら週に2皿食べるだけで、死亡率を低下させるという報告もあるようです7)
DHAとEPAは、多価不飽和脂肪酸の一種で、健康成分として知られているオメガ3(n-3)系脂肪酸の仲間です。このオメガ3系脂肪酸は体内で作り出すことができないため、「必須脂肪酸」といわれ、食事で摂る必要があります。厚生労働省の指導によると、DHAの摂取目安量は1日に30~40代の男性は2.0g、女性は1.6g、50~65歳未満の男性は2.2g、女性は1.9gとなっています8)

vol.174 旬の魚で血管の老化を改善しよう!

成分を有効利用するには刺身や鍋で食べる

DHAとEPAはマグロ、サンマ、サバ、ブリ、イワシなど青背の魚に多く含まれますが、より有効に摂るには料理方法に工夫が必要です。DHAとEPAは脂の成分のため、天ぷらやアヒージョでは成分が油に溶け出てしまいます。有効に成分を利用するには、脂がそのまま摂れる鮮度のいいお刺身やカルパッチョがおすすめです。DHAやEPA摂取を目的とする場合は、赤身よりも脂身を選びましょう。クロマグロ(別名ホンマグロ)の脂身の刺身なら50gで成人女性の目安量に達します(クロマグロの可食部100gに対して3600mgのDHAが含まれている)2)。ただし、脂質の多い魚が良いからと食べ過ぎには注意しましょう。
とはいえ、脂身の刺身を毎日食べるのは、家計へのダメージが大きいもの。そこで、賢く摂るには、寒い冬に嬉しいホカホカの鍋がおすすめです。汁を一緒に摂ることで、成分を有効に摂取できます。また、出汁が効いているので薄味でもおいしくいただけます。ブリ鍋、イワシやサンマのツミレ鍋、またアンコウ鍋もいいでしょう。アンコウの身にはDHAとEPAはごく少量しか含まれていませんが、アンコウのきもには群を抜いて多く含まれています2)。そのほか調理方法としては、ホイル焼きなども魚油を逃さず摂取できるのでおすすめです。

干した魚や加工品は塩分に注意

DHAやEPAが多い魚でも干しものや加工品には注意しましょう。イクラ、スジコ、シメサバにも多く含まれていますが、摂り過ぎは塩分摂取過多になるため気を付けましょう。塩分の過剰摂取は、血圧を高めることが分かっています9)。せっかく血管の健康のためにDHAとEPAを摂っても、塩分摂取が多いと逆に病気のリスクを高めることになってしまいます。
鍋の味付け場合も同様です。塩、醤油、みそは控え目に、出汁の味を楽しみ、酢やトウガラシなどの塩分以外の調味料を利用して味を工夫してみましょう。

<参考資料>

  1. 国立循環器病研究センター プレスリリース「冬場は心筋梗塞による心停止が増加」
    https://www.ncvc.go.jp/pr/release/003108/
  2. 女子栄養大学出版部「八訂 食品成分表2023」
  3. 日本循環器学会「2023 年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン」
    https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/03/JCS2023_fujiyoshi.pdf
  4. W Oosthuizen, et al. Thromb Haemost. 1994 Oct; 72(4): 557-62.
  5. W S Harris, et al. Am J Clin Nutr. 1997 May; 65(5 Suppl): 1645S-1654S.
  6. E Dewailly, et al. Am J Clin Nutr. 2001 Oct;74(4):464-73.
  7. Mozaffarian, D. et al. JAMA. 2006 Oct 18; 296(15):1885-99.
  8. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
    https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
  9. 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会 編. 高血圧治療ガイドライン2019. ライフサイエンス出版, 2019

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