vol.22 更年期障害を上手に乗り切る 女性の場合・男性の場合

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更年期障害と主な症状

気候の変化が大きい春は、ホルモンバランスの乱れから体調不良を起こしやすい時期です。体温や心拍数などの調節機能がうまく働かず、よく風邪を引く、疲れがひどい、眠れない、イライラするなどさまざまな症状がみられます。原因がよくわからない体調異変が続くときは、更年期障害の可能性を考えてみましょう。
ちなみに、更年期とは一般的に40代後半から50代後半を指すことが多いのですが、非常に個人差があります。

●女性と更年期障害

女性には、閉経の前後に女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少することから、更年期特有の症状がよくみられます。ほてりと発汗(ホットフラッシュ)、冷え、イライラ、めまい、動悸、息切れ、頭痛、疲労、不安、不眠、憂うつ感などが代表的な症状です。これらがいくつか重なり、検査をしても個別の原因がはっきりしないため「不定愁訴」ともいわれています。
なかでもホットフラッシュは、急にからだが熱くなり汗が止まらなくなる症状で、女性に多くみられます。冷えやめまい、頭痛、不眠、不安なども目立つ症状です。これらは、エストロゲンの減少が自律神経に影響を及ぼし、さまざまな調節機能が乱れることで起こる症状です。

●男性と更年期障害

更年期障害は従来、女性だけのものと思われてきました。ところが最近は、中年男性にもよく似た症状が起こることがわかっています。男性の場合、加齢によって男性ホルモン(テストステロン)が減少していきます。女性のエストロゲンほど急激な変化ではありませんが、それだけ症状が自覚しにくいともいえます(*1)。
手足の冷え、イライラ、動悸、息切れ、不眠など、女性と共通の症状がみられますが、なかでもとくに多いのは、疲労感や倦怠感(だるさ)です。疲れがなかなかとれず、体力が落ちたと感じる人が少なくありません。
また、仕事や趣味に対する意欲や気力がなくなる、といった症状もよくみられます。テストステロンは活力や積極性の源泉となるホルモンだけに、その減少が影響していると考えられています。
また、性欲の低下やED(Erectile Dysfunction:勃起障害)も目立つ症状です(*2)。個人的な問題だけに人知れず悩み、自信を喪失したり、疲れや年齢のせいとあきらめてしまいがちですが、実は更年期障害のひとつであることが少なくありません。

(*1)テストステロンの減少程度は個人差が大きく、更年期に相当する年齢も40~60代と幅広いことも特徴のひとつです。


(*2)ED(勃起障害)とは、性交機会の75%(4回に3回)以上に、勃起が不十分なために性交(挿入など)ができない状態をいいます。テストステロンの減少に加え、ストレスの影響も大きいことが知られています。

vol.22 更年期障害を上手に乗り切る 女性の場合・男性の場合

更年期とからだの変化

女性のエストロゲンの減少や男性のテストステロンの減少は、からだ自体にもさまざまな影響を及ぼします。

●女性のからだの変化

女性の場合、閉経がもっともはっきりした変化ですが、その前から生理が不規則になったり、しばらく生理がなくなったりすることがあります。
またエストロゲンには、悪玉コレステロールを減らして動脈硬化を予防したり、骨を丈夫にする働きがあります。そのためエストロゲンの減少によって、動脈硬化による心臓病や高血圧、あるいは骨量の減少による骨粗しょう症が起こりやすくなります。不定愁訴のような症状がなくても、更年期以降の女性は生活習慣病のリスクが高くなるので、十分な注意が必要です。

●男性のからだの変化

エストロゲンと比較すると、テストステロンについての研究はまだ遅れています。しかし泌尿器系の症例などから、テストステロンの減少によって前立腺肥大症を起こしやすいことがわかっています。そのため、さまざまな排尿障害はひとつのサインとみることができます(排尿に時間がかかる、勢いがなくなる、残尿感がある、頻繁にトイレに行くなど)。
また、テストステロンは発毛とも関係しているため、個人差はありますが、その減少によって脱毛が起こりやすい傾向もみられます。

更年期を乗り切る1 ストレスの解消

私たちのからだは、ストレスを受けるとさまざまなストレスホルモンを分泌します(*3)。これが循環器系や呼吸器系、消化器系、免疫系などに影響するため、動悸、息切れ、食欲不振、疲労などをひき起こし、更年期障害を悪化させる原因となります。また、エストロゲンやテストステロンなどのバランスをくずし、老化現象を早めることにもつながります。
そのためストレス解消は、更年期を上手に乗り切る基本ともいえます。更年期に多いストレスには、次のようなものがあります。

●女性の更年期のストレス

(1)子どもの受験、就職、結婚など
(2)子育てが終わり、夫と向き合う時間が多くなる
(3)女性としての自信の喪失。

●男性の更年期のストレス

(1)仕事上での重責やリストラ
(2)家庭内の問題(夫婦の危機、離婚など)
(3)男性としての自信喪失

男女に共通しているのは、更年期のストレスは「自分の生き方や老後」にかかわるものが多いことです。それだけ大きな課題ですが、自分の人生を見直し、これからを考えるいい機会でもあるのです。その準備期間だととらえ、やりがいのある仕事や趣味、サークル活動を見つける努力をしたり、夫婦関係を再構築して新たな信頼関係を築くことが、ストレスの解消につながります。

(*3)ストレスホルモンには多くの種類がありますが、血管を収縮させ血圧を上昇させるカテコールアミン、イライラの原因となるコルチゾール、長時間労働による疲労時などに増えるノルアドレナリンなどの作用が知られています。

更年期を乗り切る2 生活の改善

生活習慣の乱れも、更年期障害を悪化させる原因のひとつです。とくに睡眠不足や運動不足は、大きな影響を及ぼします。
不眠などの睡眠障害そのものが更年期障害のひとつですが、その状態が続くと疲労がたまり、精神的にも落ち込みやすくなります。夜更かしの習慣がある人は、思い切って早寝早起きに切り替えてみましょう。また、寝付けない人や途中で目覚めやすい人は、病院で誘眠剤などを処方してもらい、眠りの質を向上させることも大切です。就寝前にウォーキングなどの軽めの運動をして、からだを適度に疲れさせると眠りやすくなります。
ストレスが続いている時は、ストレスホルモンなどの影響で呼吸が浅くなり、血液の流れも悪くなっています。ウォーキングや水泳などの有酸素運動は、呼吸を深くし、血液循環もよくするので、定期的な運動を取り入れることも更年期障害の解消に役立ちます。

更年期を乗り切る3 食事の改善

更年期になると、それまでの食事の好みなどが固定化し、新しいものを食べない傾向があります。そのため更年期に不足しがちな栄養分がとれず、症状を悪化させることも少なくありません。更年期は高血圧や糖尿病などの生活習慣病を発症しやすい時期でもあるので、食生活をきちんと見直してみることが大切です。

●女性と食事

大豆に多く含まれているイソフラボンは、体内でエストロゲンと同じ働きをする物質として知られています。不定愁訴の改善だけでなく、骨量を増やしたり、コレステロール値の上昇を抑える作用もあるので、更年期の女性には欠かせない食品です。大豆の煮豆や納豆、豆腐、おからなどの大豆食品を積極的にとりましょう。
骨粗しょう症の予防には、カルシウムとその吸収を助けるビタミンDとKも一緒にとると効果があります。

●男性と食事

男性のテストステロンの生成を補助するのが、ミネラルのひとつである亜鉛です。亜鉛が不足すると、精巣や前立腺の働きが悪くなり、疲れやすくもなります。亜鉛を多く含む食品には、カキ(牡蠣)や魚介類、海藻類、ナッツ類、レバーなどがあります。亜鉛は体内で吸収されにくい栄養素ですが、ビタミンCを一緒にとると効率よく吸収されます。
また、免疫力を低下させないためには、ビタミンB群・C・Eなどの抗酸化ビタミンも積極的にとる必要があります。

更年期障害と治療

日常生活に支障をきたすような症状の場合には、医師の診断を受けることも大切です。最近は男性向けの更年期外来をもつ病院も増えています。

●ホルモン補充療法(HRT:Hormone Replacement Therapy)

ホルモン補充療法とは、不足しているホルモンを補充することで症状を改善する治療法です。女性の場合は、エストロゲンやプロゲステロンを飲み薬や貼り薬で補充します。男性の場合は、テストステロンを注射によって補います。
人によっては大きな改善効果がみられますが、知っておきたいのはリスクです。女性の場合には、乳がんや心臓病などのリスクが高くなることが指摘されています(*4)。また子宮がんについても、リスクがあるとされています。そのためこれらのがんの経験者や可能性のある人には適用できません。男性の場合にも、前立腺がんや前立腺肥大症のリスクが高まるとされています。
したがって男女いずれの場合も、事前に医師と十分に話し合い、ホルモン補充療法を行う場合には、定期的にがんなどの検査を受ける必要があります。

●漢方療法ほか

ホルモン補充療法ができない人や望まない人には、漢方薬や向精神薬、睡眠薬などによる治療も行われます。漢方薬は、体質や症状によってはかなりの効果がみられます。ただし、漢方薬にも作用が強いものや副作用があるものもあるので、自己流の使い方ではなく、医師の指導を受けるようにしましょう。

(*4)女性のホルモン補充療法には、エストロゲンだけを投与する方法とプロゲステロンを併用する方法とがあります。アメリカではNIH(National Institute of Health:国立衛生研究所)が1991年から15年計画で、女性の更年期に関する大規模臨床試験を進めています。その過程の2002年7月に、「エストロゲンとプロゲステロンを併用するホルモン補充療法によって乳がんや心臓病のリスクが高まる」ことが指摘されました。

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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