vol.141 皮下脂肪と内臓脂肪の違いはなんでしょうか?生活習慣病に関係があるのはどちらの脂肪なのでしょうか。
生活習慣病Q&A
- 皮下脂肪と内臓脂肪の違いはなんでしょうか?生活習慣病に関係があるのはどちらの脂肪なのでしょうか。
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皮下脂肪と内臓脂肪はいずれも体脂肪のことですが、蓄積する場所が異なります。糖尿病や高血圧などの生活習慣病を引き起こすリスクが高いのは、「内臓脂肪」です。人間の身体の2割前後は、脂肪でできています。例えば、体重70kgで体脂肪率20%の人なら、体脂肪量は14kgあるという計算になります。その中で大半を占めるのが、皮下にある皮下脂肪です。一方の内臓脂肪は、肝臓などの周りにべったりとついているようなイメージがありますが、実際は胃や腸の周りにある大網脂肪や腸間膜脂肪がその代表です。女性は皮下脂肪が多く、男性は内臓脂肪がつきやすいことがわかっています。
生活習慣病と強く関連しているのは「内臓脂肪」です。内臓脂肪は、皮下脂肪に比べて1個の脂肪細胞の大きさが小さく、代謝活性が高いことがわかっています。胃や腸と直結しているために、門脈を通じて肝臓に糖分や遊離脂肪酸などのエネルギーを送ることができるので、エネルギーの出し入れがしやすいのです。 そのため、内臓脂肪は食べ過ぎによって増えやすくなっています。食事を制限した場合はその逆で、まず内臓脂肪から消費されます。預金に例えると、内臓脂肪=普通預金、皮下脂肪=定期預金ということになります。
内臓脂肪の量は、日本では一般的には腹部CTスキャンを用いて測定されます。内臓脂肪面積、つまり身体の断面積に占める脂肪の面積が100cm2を超えると内臓脂肪型肥満となります。これは、体積に換算すると3kg程度の内臓脂肪が蓄積していると考えればわかりやすいでしょう。ウエスト周囲径でいうと、男性なら85cm、女性なら90cmが内臓脂肪面積100cm2に相当します。しかし、ウエスト周囲径だけでは皮下脂肪が多いのか、内臓脂肪が多いのかの区別はつきません。腹部CTスキャンなら皮下脂肪と内臓脂肪を区別することができますが、腹部CTスキャンには被曝という問題があるため、繰り返しの測定が困難でした。そこで最近では、腹部生体インピーダンス法という方法で簡単に測定することができるようになっています。
一方の皮下脂肪は、外部からの圧力に対するクッション、また寒さ対策の役割を担っています。ただし、皮下脂肪が異常に増えると見た目だけでなく、膝や腰など整形外科的疾患のリスクが高まります。皮下脂肪を減らすために、食事療法や運動療法は辛いからと脂肪吸引術を試みる人がいますが、脂肪吸引術では内臓脂肪の量は変わらないため、糖尿病や脂質異常症などの改善は期待できません。それどころか、脂肪吸引術は皮下脂肪の量を減らしてしまうため、よけいに内臓脂肪が増えてしまう可能性もあります。 お腹がポッコリ出てきた方は、内臓脂肪が異常に蓄積している可能性があります。一度、腹部CTスキャンや腹部生体インピーダンス法で測定し、内臓脂肪の蓄積具合をチェックしてみてはいかがでしょうか。
先生のプロフィール
坂根 直樹 先生
独立行政法人国立病院機構京都医療センター
臨床研究センター 予防医学研究室室長
臨床研究センター 予防医学研究室室長
- 略歴
- 昭和64年 自治医科大学医学部卒業
昭和64年 京都府立医科大学附属病院(第1内科)研修医
平成3年 大江町国保大江病院内科
平成5年 弥栄町国保病院内科
平成6年 京都府保健福祉部医療・国保課
平成7年 綾部市立病院(内分泌科)
平成10年 大宮町国保直営大宮診療所
平成11年 京都府立医科大学附属病院修練医(第1内科)
平成13年 神戸大学大学院医学系研究科分子疫学分野(旧衛生学)助手
平成15年 独立行政法人国立病院機構京都医療センター(旧国立京都病院)
臨床研究センター 予防医学研究室室長 - ご専門
- 糖尿病、糖尿病教育、内分泌