vol.104 腸内細菌の乱れによって起こる過敏性腸症候群

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Vol.104 腸内細菌の乱れによって起こる過敏性腸症候群 通勤中、電車や車の中で急におなかが痛くなる。会議や試験の前になるとどうもおなかの調子が乱れがち…。こんな症状で困っているものの、一時的なものだと自己判断して放置している方は多いと思います。長期間にわたって症状が続いている場合は、「過敏性腸症候群」という病気の可能性があります。
3カ月前から腹痛や腹部の不快感があり、下痢や便秘などの便通異常の症状が月に3日以上あり、①排便によって腹痛や腹部の不快感が軽快する ②発症した時に排便の回数に変化がある ③発症した時に便の形状に変化があるという3つの項目のうち2項目以上が当てはまる場合に、「過敏性腸症候群」として診断されます。
下痢や便秘といったおなかの不調は、日常生活でしばしば経験すること。病院に行くほどでもないと軽く考えがちですが、「1日に何度もトイレに駆け込む」「トイレが心配で外出するのが不安」「会社や学校に行きたくない」というほど悩んでいたら、生活にかなり支障をきたしている状態です。早めに適切な治療を受けた方がいいでしょう。

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群は、腸に原因となる異常が見当たらないのに、腹痛や腹部の不快感、下痢、便秘といった便通異常が起こることが特徴です。命にかかわる病気ではありませんが、日常生活の質を著しく低下させます。消化器科を受診する人の3割がこの病気という報告もあり、消化器の分野では「21世紀に残された病気」として病態の解明と治療法の確立が課題とされています。

腸内細菌が過敏性腸症候群の原因のひとつ

腸に異常が見られないのに、なぜ、痛みや不快感、便通異常が起こるのでしょうか。その原因は複数あると考えられ、はっきりとは解明されていませんが、最近の研究から「腸内細菌」が誘因であることがわかってきました。
過敏性腸症候群の人は、そうでない人と比べて腸を拡張する刺激に対して敏感に反応します。その原因のひとつとして、腸内細菌のバランスが崩れることによって悪玉菌が増え、腹痛や腹部の不快感といった知覚過敏が起きやすいということがわかってきたのです。こうした研究を踏まえて、抗生物質が治療に有効という報告も少しずつ出てきています。
腸と脳は密接な関連があり、お互いに情報を伝え合って機能しています。脳の中枢神経は、腸の運動や分泌、免疫機能、血液の流れなどを調節し、腸からも脳に情報が伝達されています。私たちがストレスを感じると脳から腸にその情報が伝えられます。すると腸の運動を亢進させるだけでなく、腸内細菌のバランスにも影響を及ぼすのです。

過敏性腸症候群のタイプと治療法

過敏性腸症候群のタイプは、下痢症状が多い「下痢型」、便秘症状が多い「便秘型」、下痢と便秘の症状を繰り返す「下痢と便秘の混合型」などに分けられ、治療の第1ステップは、食事の指導と生活習慣の改善です。昼夜逆転や夜型の生活スタイル、不規則な食生活、睡眠不足は腸の働きに影響し、症状を増悪させるからです。
また、下痢や便秘などの便通異常は、服用している薬や食品によって起きていることがあります。下痢をしやすい人では、乳糖、人工甘味料、マグネシウムを含む食品を取り過ぎている場合もあるので、薬やサプリメント、食品の内容をチェックすることも大事です。

薬による治療では、まずは「ポリカルボフィルカルシウム」を用いることが基本とされています。この薬には水分を吸収してゲル化する作用があり、下痢と便秘の両方に効果があります。下痢に対しては水分を吸収し、便秘では便の容量が増えるように水分を吸収し、便を適度な硬さにして腸の蠕動運動を起こしやすくします。
腸の動きを調整する薬では、「トリメブチンマレイン酸塩」や「ラモセトロン塩酸塩」などの薬が用いられています。ラモセトロン塩酸塩は、2008年に男性の下痢型に承認された新しい薬です。過敏性腸症候群の人では、脳から腸にストレスが伝わると腸の粘膜からセロトニンが過剰に分泌され、腸の運動が高まって下痢や知覚過敏が起こります。この薬はセロトニンの働きを阻止することで症状をよくする効果があります。
その他、便秘に対しては下剤、下痢には整腸薬、おなかの痛みには抗コリン薬などが処方されます。

善玉菌が増える環境を整えてあげよう

腸を健康に保つには、ヨーグルトや乳酸菌飲料をとっていればいいと思いがちですが、口から摂取して腸にたどり着ける菌の数は限られます。補うだけでなく、善玉菌が増える環境を整えてあげることも腸を守る大事なポイントです。忙しいからとパンやおにぎり、市販のお弁当などで食事を済ませていると、野菜や芋、豆、海藻類、果物などの食品が不足しがちです。食物繊維が足りず、善玉菌も増えてくれません。
過敏性腸症候群は、ストレスや生活のリズム、腸内細菌の乱れなどが微妙にかかわって発症します。おなかの不調を感じたら、ストレスと上手に向き合いながら、ふだんの食事内容やバランス、食事時間なども見直してみましょう。

監修 国立精神・神経医療研究センター病院 総合内科部長 大和 滋先生

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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