OMRON All for Healthcare

vol.113 女性の尿もれに効果 腹圧性尿失禁の「TOT手術」

LINEで送る 一覧に戻る
Vol.113 女性の尿もれに効果 腹圧性尿失禁の「TOT手術」 成人女性の4人に1人、40歳以上では女性の3人に1人が、何らかの尿のトラブルに悩んでいるといわれています。中でも多いのが、尿もれの悩みです。尿もれが気になって好きなスポーツができなくなった、バスツアーや団体旅行はトイレが心配で気がすすまない、おしゃれを楽しみたいのに着たい服が着られない……。このような悩みを恥ずかしいと感じ、年のせいと思い込んだり、諦めて気持ちが沈みがちという方も多いと思いますが、我慢は禁物です。尿もれは治すことができる病気です。安全性の高い手術方法も登場しています。

腹圧性尿失禁の症状

日常生活でふと感じる尿もれには、いくつかタイプがあります。このうち、女性に最も多いのが「腹圧性尿失禁」です。腹圧性といわれてもすぐにピンとこないかもしれませんが、このような場面で尿がもれることはないでしょうか?

腹圧性尿失禁をセルフチェック

こんなとき、尿がもれませんか? 次のような症状がひとつでも思い当たったら腹圧性尿失禁が疑われます。

□ 咳やくしゃみをしたとき
□ 大笑いしたとき
□ 重い物や荷物を持ち上げたとき
□ スポーツをしているとき
□ 階段の上り下りや下り坂を歩いているとき
□ 子どもや孫を抱きかかえているとき

腹圧性尿失禁は、おなかに「グッ」と圧力がかかったとき、膀胱に溜まった尿を保持できなくなってもれてしまうこと。尿意とは関係なく起こります。原因は、妊娠や出産、加齢などで尿道括約筋をはじめとする骨盤底の筋群がゆるんだり、尿道を支える組織が弱くなったりすることとされています。また、意外な原因としては腹筋運動も腹圧性尿失禁を悪化させるので要注意です。

腹圧性尿失禁の「TOT手術」

腹圧性尿失禁の治療には、パッドなどで尿もれを対処する方法、骨盤底筋訓練で骨盤底の筋力を強化する方法、薬物療法、手術療法などがあります。「軽く咳をしたときだけ尿がもれてしまう」。こんな場合は軽症です。骨盤底筋訓練や薬を用いた治療が選択されますが、効果がみられないときは、手術が有効です。腹圧性尿失禁の手術は「TVT手術」という方法が普及していますが、2012年9月、さらに安全性が高い「TOT手術」が健康保険の適用になり、期待が集まっています。
TOT手術は、中部尿道部にあたる腟壁と両足内股の付け根の部分の計3カ所を小さく切開し、専用キット(器具)を使って尿道と腟の間に幅1㎝のポリプロピレン製のテープを通して尿道を支えるもの。TVT手術もテープを用いて尿道を支えますが、TOT手術とは骨盤内での支え方が異なります。TVT手術はテープをU字型に植え込みます。一方、TOT手術はテープをV字型に植え込み、腹圧がかかって尿道がぐらりとゆれたとき、そっと支えて補強するものです。
日本におけるTVT手術は、患者の主観的な評価が92%と、効果の高い手術として浸透してきました。しかし、いくつかの合併症のリスクがありました。テープの吊り上げ過ぎによる「排尿困難」や手術中に膀胱に針を刺してしまう「膀胱穿孔」、血管や腸に針を刺してしまう「大血管損傷」「腸管損傷」などです。
新たに登場したTOT手術は、テープの通過経路がTVT手術と異なるため、大血管や腸を傷つけることがありません。また、手術に用いる専用の針の形状がらせん状をしていて膀胱を傷つけにくいこと、また排尿困難にもなりにくいことが大きな特長です。手術の器具が向上したことで合併症のリスクが低くなり、安全性が高まっています。
TOT手術にかかる時間は、30分前後。入院期間は数日程度で、術後、約2カ月は運動を控える必要があります。妊娠、出産を予定している人には禁忌ですが、合併症のリスクが低く、体への負担も少ないため健康に問題がなければ高齢者でも可能な手術です。

水分の摂り過ぎが一因となる尿のトラブル

ところで、たいして尿が溜まっていないにもかかわらず、膀胱が過剰に収縮してしまう過活動膀胱の人では、重症の場合、切迫性尿失禁をきたします。切迫性尿失禁とは、急に尿意が起こりトイレに行っても間に合わず、もれるタイプの尿失禁です。本来は軽度の過活動膀胱なのに、水分を摂り過ぎていることによって症状がさらに悪化し、切迫性尿失禁を起こしていることがあります。このような場合は、薬を処方されても十分には効果がでません。頻尿や尿もれが気になったら、水分を摂り過ぎていないか、排尿日記を書いてセルフチェックしてみましょう。
また、過活動膀胱と診断され、抗コリン薬を処方されたものの効果がみられず、泌尿器科を受診したところ、原因は腹圧性尿失禁だったというケースもあります。尿のトラブルは、なかなか人には打ち明けにくいもの。「尿もれ」だけでは、わからないことがたくさんあります。受診の際には、日常生活のどんな場面で、どのような症状があって困っているのか、恥ずかしがらずに泌尿器科の医師に話してください。具体的に伝えることが適切な診断と治療につながります。

監修 東京女子医科大学東医療センター
骨盤底機能再建診療部 泌尿器科教授 巴 ひかる先生

自身の「健康」についての考え方:ミュージシャン BEGIN 比嘉 栄昇さん


shadow
このページの先頭へ戻る