知っておきたい「子どもの頭痛と治療」

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頭痛は大人に限った病気ではなく、子どもに起きることもまれではありません。こうした小児の頭痛に注目し、診療に取り組む医療機関があります。東京医科大学病院では、2016年から小児科に小児頭痛外来を開設し、週1回診療を行っています。外来を始めたのは、山中岳先生です。「実は私も子どもの頃から頭痛があり、調べてみると小児の頭痛外来は少ないのです。それでやってみようと。患者さんは小学校高学年から中学生が多く、遠方から受診する方もいます。よく聞いてみると4~6歳頃から頭痛があったというお子さんも少なくありません」と話します。

vol.178 知っておきたい「子どもの頭痛と治療」

二つの頭痛が重なっていることも

頭痛の種類は、体や脳に原因となる疾患がなく、慢性的に頭痛を繰り返す「一次性頭痛」と、脳腫瘍や頭部外傷、副鼻腔炎、風邪などのウイルス性疾患によって起きる「二次性頭痛」に大きく分けられます。山中先生によると、子どもは一次性頭痛の「片頭痛」と「緊張型頭痛」がほとんどで、両方を合わせ持っていることも多いと言います。痛みは片頭痛の方がつらいのですが、中学生になるとストレスが増え、緊張型頭痛が毎日続いてつらい、と訴える子どももいます。

小児頭痛外来の治療とは

子どもの頭痛の治療には、薬物療法と薬を使わない治療(非薬物療法)があり、山中先生の外来では、頭痛を理解してどのように頭痛と向き合うかなどの非薬物療法に力を入れています。「子どもたちの中では、片頭痛と緊張型頭痛をひとくくりの頭痛と思ってしまいがちです。両者の違いをしっかりと説明し、教えることを大切にしています。理解して頭痛の違いが分かるようになると、精神的に落ち着くことが多いからです」。
また、片頭痛では、痛みを誘発する誘因があるため、それも説明します。誘因となるのは、ストレス、精神的な緊張、疲れ、睡眠の過不足、気候の変化、温度差、月経周期、食品などの他にスマホなどのブルーライトも因子になります。「片頭痛の誘因は、子どもによってさまざまですが、二つ重なると起きる確率が上がると言われています。しかし、天気は変えようがないので、季節の変わり目などは、片頭痛のリスクを少しでも下げるように、睡眠リズムに注意することなどを話します。また、チョコレートも誘因になるのでダメとよく書いてありますが、食べても痛くないなら控えなくてもいいのです。避ける必要がないものは無理に我慢しない。それだけでもストレスはだいぶ減ります」。

子どもの頭痛の薬物療法

緊張型頭痛は肩こりなどを伴うことが多く、長時間同じ姿勢をしないなど日常生活について指導します。そうすることで改善し、薬物療法が必要になることはほとんどありません。一方、片頭痛に対しては多くの場合、薬が必要になります。
片頭痛の薬物療法では、鎮痛薬のアセトアミノフェン、イブプロフェンが第一選択薬として用いられます。子どもでは、体重当たりの量を早期から服用すると効果があります。また、頭痛には吐き気や嘔吐を伴うことも多く、吐き気止めのドンペリドンも必要になります。これらの薬で効果がない場合は、トリプタン製剤という治療薬が使われます。これは大人に使用されており、効果が期待できますが、日本ではまだ子どもに対して保険適用になっていないため、本人や両親の承諾を得て処方します。
また、頭痛が起こる前に目が見えにくくなったり、キラキラしたものが見えたりすることがあり、これを「前兆」といいます。手足が動かしにくいなどの特殊な前兆を伴う片頭痛には、トリプタン製剤を使うことができません。子どもは前兆に気づかないことがあるため、注意が必要です。さらに、片頭痛のさまざまな誘因などを避けても日常生活に支障をきたす頭痛が頻回にみられる場合や、トリプタン製剤が使用できない場合は、痛みを起こしにくくする予防薬を検討します。

子どもの片頭痛の特徴

子どもは頭痛があっても、言葉でうまく伝えられなかったり、周囲の大人から気のせいと言われたりして放置されてしまうこともあります。的確なサポートを受けていない例では、不登校になっていることもあると山中先生は指摘します。
頭痛を訴える子どもの多くに片頭痛がみられ、子どもでも片頭痛は珍しくありません。子どもの片頭痛には、大人と比べて「頭の両側や全体が痛くなる」ことが多く、「吐き気や嘔吐を訴えやすい」、「ズキズキと脈に合わせた痛みがある」、「少し首を振っただけで痛みが増悪する」などの特徴があります。また、光や音、においに過敏になることがあり、頭痛が起きると部屋を暗くして横になってしまう子どもは、片頭痛の可能性が高いということです。
小児の頭痛外来は全国でも数が限られるため、頭痛があるときは、まず小児科に相談してみましょう。「頭痛のたびに嘔吐を頻回に繰り返す」など、気になる症状があるときは小児科医に話し、頭痛外来を紹介してもらってほしいと山中先生は話しています。

監修 東京医科大学 小児科学分野 准教授 山中 岳先生
取材・文 阿部 あつか

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