vol.181 イライラの原因は、もしかしたら「月経前症候群」

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Vol.181 イライラの原因は、もしかしたら「月経前症候群」

女性の社会進出とともに、月経に伴うさまざまな病気が知られるようになりました。「月経前症候群(PMS)」もその一つです。PMSは、月経前の3~10日の間に続く精神的または身体的な症状の総称で、特定の精神症状には「月経前気分不快障害(PMDD)」という病名がつけられています。PMSは女性の50~80%にあるといわれていますが、症状がひどいと認識し、治療している人は少ないようです。女性特有の症状や感情の揺らぎは、PMSやPMDDが原因ということがあります。その特徴や治療などを知っておきましょう。

診断基準と知っておきたい症状

PMSの診断基準は、過去3回の連続した月経周期のそれぞれ月経前5日間に次のような症状が一つでもあれば診断されます。
情緒的な症状……抑うつ、怒りの爆発、いらだち、不安、混乱、社会からのひきこもり。
身体的な症状……乳房の張り、腹部の膨満感、頭痛、関節痛、体重の増加、四肢のむくみ。
PMDDは、著しい情緒不安定、著しいいらだちや怒り、対人関係の摩擦、著しい抑うつ、絶望感、自己否定感、著しい不安、緊張などの精神的な症状が診断の基準とされています。
昭和大学病院の産婦人科で思春期や女性相談の外来を担当し、数多くの月経トラブルを診療している白土なほ子講師は、「PMSは思春期から性成熟期(20~40代)の女性に多く、症状は一つにとどまりません。大きく分けて、心と体、社会的な症状があります。学校を休む、仕事に行けない、イライラして人にあたるなどは社会的な症状で、うつうつとして落ち込む、眠くてしかたがないという人もいます。診断基準は、どれも症状の強弱は問わないため、今後の検討が必要な基準です」と話します。

PMSの原因

PMSの原因は、はっきり分かっていませんが、排卵後から月経までに多く分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)が関わるといわれています。この期間は、妊娠に備える黄体期。プロゲステロンは、基礎体温を上げ、子宮内膜を厚くし、食欲を増進させ、体内の水分の排出を抑えて、妊娠に適した体づくりに働きます。月経前の身体的な症状は、それらによるものと推測されます。また一方では、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの調節などにも関与するため、精神的な症状を起こす一因になっていると考えられています。

診断のポイントとおもな治療

PMSの症状確認は、問診後に症状を記入する基礎体温表を毎日つけてもらい、評価します。2~3カ月記録すると、いつ、どんな症状が出やすいかが分かります。診断にはこの記録が重要ですが、症状によっては、婦人科の診察(内診・外診)、経膣(ちつ)・経腹・経直腸超音波検査、ホルモン検査などを行い、器質的な異常の確認や病気の鑑別をします。
治療は、生活改善と薬物療法があり、軽症から中等度では、規則正しい生活や十分な睡眠などが指導されます。薬物療法は、最初に漢方薬を使うことが多いようです。「漢方薬は思春期の子どもやその保護者にも抵抗感がなく、処方しやすい薬です。イライラなどの症状は、加味逍遙散(かみしょうようさん)や抑肝散(よくかんさん)、月経痛や月経困難症などがあれば当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、むくみには柴苓湯(さいれいとう)、のどがつかえる症状には、半夏厚朴湯(はんげこうぼうとう)などを処方します」(白土講師)。

月経の間隔をあける新しい治療法もある

漢方薬以外では、ピル(経口避妊薬)や抗うつ薬(SSRI)などが用いられます。ピルは、一時的に排卵を止めて、症状を改善するために処方します。漢方薬や鎮痛薬だけでは、効果がないときに有効な治療です。また、「最近では、ピルの服用を継続するホルモン療法も行われています。子宮内膜症に伴う疼(とう)痛の改善、月経困難症に適応のある治療で、最大120日まで月経の間隔を空けることができます。症状がひどい場合は、偽閉経療法で月経を止めることもありますが、月経が来るたびに不快な症状が多くて困るという人に行います」(白土講師)。
抗うつ薬のSSRIは、うつ症状が強い人に月経前だけ適量を処方することがあります。うつ病などの精神疾患がある場合は、適切な治療が受けられるように心療内科や精神科を紹介します。

月経前の諸症状は、婦人科に相談しよう

PMSの症状は、月経のある女性のほとんどが経験します。ただし、重症度は明確な基準はなく、治療を受けるかは本人次第です。また、月経前に乳房が張るのは、当たり前の症状ですが、月経周期の基礎知識を知らないために悩んでいる人が意外に多い、と白土講師は指摘します。「症状があるのは、女性として成熟したということ。そのことも知ってほしいと思います。また、月経前にイライラして子どもに当たってしまう。勤務中に人に当たってしまうのでうまくいかない。これらは社会生活をしている女性の典型的な症状です。PMSなのか、PMDDなのか、何が問題か分からないときは、遠慮なく婦人科で相談してください」。

監修 昭和大学医学部 産婦人科学講座 講師 白土 なほ子先生
取材・文 阿部 あつか

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