vol.188 「ストレス冷え」自覚症状のない冷えもご用心!

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Vol.188 「ストレス冷え」自覚症状のない冷えもご用心!

手足が冷たい、足が冷えて眠れない……。冷えは女性に多い悩みですが、温めても治りにくい冷えは、自律神経と深く関わっている場合があります。冷えは万病の元と言われますが、冷えの自覚症状のない人やさまざまな症状の背後に冷えが存在していることもあります。暮らしの中の冷えのリスクや効果のある漢方治療を知って、冷え対策を心がけましょう。

最近増えている「ストレス冷え」

暖かい部屋に入ると、すぐに手足が温かくなりますか。それとも、なかなか温かくならないですか。みなさんは、どちらでしょうか?
漢方の診療に詳しい東京女子医科大学 東洋医学研究所 副所長の木村容子准教授は、「手足などの末梢の血流は、自律神経の働きによって調節されていますので、ストレスがかかって交感神経が緊張すると、末梢血管は収縮して血行が悪くなります。手足がなかなか温かくならない人は、自律神経の働きが乱れているために血流の調節がうまくいっていない可能性があります。これを〝ストレス冷え〞と私は呼んでいます」と話します。
ストレス冷えはこの他にも、冷えの自覚症状はあるのに診察しても冷えがない人、逆に足が氷のように冷えていても自覚症状がない人など、冷えの認識にずれが生じていることもあると言います。

冷えの研究から分かってきたこと

冷えは本人が自覚的に感じる症状ですが、客観的な評価もされています。例えば、冷え症の人が寒冷刺激を受けた場合、冷えを訴える部位の血流量は減少し、実際に皮膚温の低下が認められるという報告があります。また、手足の冷えを訴える人では、寒冷刺激を受けた際に皮膚温の回復が遅延している場合があります。ラットの実験では、オスよりメスの方が血管拡張の反応が遅いという報告もあり、一般的に女性に冷え症が多いということを裏付ける結果と考えられています。

冷えと自律神経に効く漢方薬

冷えの診療は漢方が得意とする領域で、漢方薬の効果が認められています。治療では、問診や脈、舌、腹部などを診察し、漢方の基本概念である気血水(きけつすい)や五臓六腑などのどこに問題があるかによって処方を決め、心身のバランスを整えます。
手足が冷える場合は、当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、呉茱萸(ごしゅゆ)、生姜(しょうきょう)など、体を温める生薬が入った漢方薬が用いられます。主な処方として、冷えに頭痛や腰痛が伴う場合は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎくかごしゅゆしょうきょうとう)、乾燥症状が伴う場合は、四物湯(しもつとう)、足は冷えるが手はほてり、唇の乾燥がある場合は、温経湯(うんけいとう)などが使われます。
また、自律神経の乱れによる冷えは、体を温めて血行をよくするだけでは治りにくく、自律神経の働きを整える治療が必要です。「漢方薬では、柴胡(さいこ)の入った加味逍遙散(かみしょうようさん)などを用います。さらに、漢方治療では〝養生〞が基本となりますので、患者さんに合わせた生活のしかた(養生指導)も一緒に行います」(木村准教授)。

女性ホルモンや病気による冷えもある

女性の冷えは、女性ホルモンの乱れから自律神経に変調をきたすことも多く、このような場合は、冷えだけでなくのぼせの症状も現れます。また、甲状腺の機能低下、貧血、低血圧、膠原病(こうげんびょう)などによって、冷えの症状がみられることがあります。病気による冷えは、原因に対する治療が重要です。冷えの症状が続くときは、医療機関に相談しましょう。

便利な生活や高齢化も一因

そのほか、肩こり、頭痛、腰痛、不眠、むくみ、疲れやすい、やる気や元気がない、肌のくすみやしみ、乾燥なども、実は冷えによって起きやすい症状です。不調を訴えて受診しても体が冷えていることに気づいていない人は多く、注意が必要です。
こんな生活が習慣になっていないでしょうか。

□朝食は抜くことが多い

□冷たい飲み物や食べ物を年中食べている

□運動不足である

□夜更かしや昼夜逆転の生活をしている

□入浴はシャワーのみ

これらはすべて体を冷やします。「朝食を抜くと体温が上がる機能は働かず、筋肉不足では熱が生み出せません。昼夜逆転は日内リズムを乱して、日中に体温が上がらない人もいます。便利な生活がかえって冷えを助長している可能性があります」(木村准教授)。
また、漢方では、加齢とともに体が「陽(新陳代謝が高い状態)」から「陰(新陳代謝が低下した状態)」に変わると考えます。このため、冷えとは無縁だった男性も冷えやすくなります。
強いストレスによって自律神経の働きが乱れると、体温調節がうまくいかなくなり、冷えやすくなります。また、便利な生活や加齢によって、誰にでも冷えが起きる可能性があります。放っておくと身体や精神の諸症状、美容面にも影響します。患部を温めるだけでなく、生活全般を見直して冷えをもたらしている原因にも気をつけましょう。

監修 東京女子医科大学 東洋医学研究所 副所長 准教授 木村容子先生
取材・文 阿部 あつか

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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