vol.26 生活習慣病にも大きく関係している「不眠」

健康・医療トピックス
糖尿病などの生活習慣病の予防・改善には「食事」「運動」が強く指導されてきました。が、ここへきて、「睡眠」が大きく関係していると指摘され始めるようになりました。こころが大きく関係する心身症には「睡眠」が強く関係することはわかっていました。それは心身症の原因のストレス解消に睡眠が貢献しているからです。それが、遂に生活習慣病でも指摘されるようになったのです。
働く世代の調査から、生活習慣病と睡眠の深い関係を指摘したのが久留米大学医学部精神神経科教室の内村直尚助教授。35~59歳の勤労者7800人を対象に「生活習慣病と睡眠」に関する調査を行いました。有効回答は6084人、平均年齢は43.8歳。調査が実施されたのは2004年12月17日~27日でした。
その結果、糖尿病・高脂血症・高血圧症の生活習慣病を持つ人は持たない人に比べて不眠の人が33.1%対26.6%と多少多く、眠りの質においても 37.8%対30.1%と、悩む人の多い傾向がありました。これを生活習慣病の治療を行っている人と放置している人とで比べると、35.2%対38.7%で、放置している人がより眠りの質が劣る傾向がみられました。これを男女で見ると、男性より女性で生活習慣病を持つ人が、より睡眠の質が劣っていました。
実際、これを裏付けるような研究報告が1999年、最も権威あるイギリスの医学雑誌『Lancet』に発表されています。18歳から27歳までの健康な男性11人を対象に、4時間睡眠を6晩実行してもらい睡眠不足の状態に。すると、朝食後の血糖が平均115から135へと上昇。つまりインシュリンのコントロールを悪化させたのです。その後、12時間睡眠を6晩行ってもらうと、食後血糖値は元に戻りました。
『Lancet』の報告は一つの例ですが、このように、生活習慣病と睡眠には大きな関係があり、睡眠不足は明らかに生活習慣病を悪化させるのです。それにもかかわらず、内村助教授の調査からは、不眠への対処を全く行っていなかった人が43.1%、約2人に1人もいたのです。
糖尿病、高血圧、高脂血症などの治療において、主治医から不眠を聞かれないときは、積極的に患者側から訴えることが大事です。的確な不眠治療で、生活習慣病を上手にコントロールしましょう。
vol.26 生活習慣病にも大きく関係している「不眠」

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執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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