vol.35 男性に多い頚椎症性脊髄症の手術のタイミング

健康・医療トピックス
頚椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)の手術が増えています。頚椎症の治療を得意とする施設の整形外科では、年間の手術数は1995年に10例程度だったのが、10年たった2005年には約50例にまで増えているのです。

その頚椎症性脊髄症とは、頚(くび)の脊椎が年を重ねることで変化が生じてきて、脊椎をつくる椎骨に骨棘(こつきょく)という新しい骨ができたり、椎骨と椎骨の間でクッションの役割をしている椎間板が薄くなったり、靭帯(じんたい)が厚くなったりして、脊髄を圧迫するようになった病気です。
症状は「手足がしびれる」「指の感覚が鈍い」などの四肢の感覚障害と、「手指が使いづらく、はしを持てない、服のボタンが留めにくい」「足がふらつき、手すりにつかまらないと歩けない」などの運動障害です。
50歳以降の人に多く、男女比では男性が女性の約2倍となっていまが、その理由ははっきりしません。また、頚の外傷経験があったり、激しいスポーツをしていたり、喫煙者などには起こりやすいといわれています。
軽症では保存療法(外科的手術以外の治療法)が一般的ですが、その効果はそれほど高くはありません。保存療法から手術への移行は約50%にも達しています。
実はこの手術のタイミングが重要で、タイミングを逃すと、手術はしたものの回復が見られない、ということも起きているのです。手術は歩けなくなってからでは遅く、歩行障害や手指の運動障害が出ているならば、歩けるうちに選択するのが"手術成功"のタイミングなのです。
手術には「前方法(前方除圧固定術)」と「後方法(脊柱管拡大術)」の2つの方法がありますが、それぞれの手術には条件があります。前方法の場合は「脊柱管の直径が14ミリ以上」「圧迫個所が2椎間まで」。一方、後方法の場合は「脊柱管の直径が13ミリ以下と狭い」「圧迫個所が3椎間以上」。以前はしかりとした条件が定まっていませんでしたが、最近では条件が明確になったので、手術成績が向上しています。
これらのことが十分に理解され、手術が増えているだけに、タイミングをしっかりと逃さないようにすべきです。それには主治医だけの意見だけではなく、本当に今手術が必要なのかを専門医にも相談して、最も良い選択をしましょう。
vol.35 男性に多い頚椎症性脊髄症の手術のタイミング

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執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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