今注目の"仮面高血圧"とは...

高血圧 病名・疾患解説
音もなく忍び寄る殺し屋“サイレント・キラー”と呼ばれている高血圧。その高血圧でも、今、「仮面高血圧」が注目を集めています。仮面高血圧とは、正常血圧という仮面をつけた高血圧ということから仮面高血圧といわれています。つまり、診察室や健診で測ると正常なのに、家庭で測ると高血圧という人々です。
注目されている理由は、仮面高血圧の人のほうが脳心血管疾患が持続性高血圧(一般的な高血圧)の人々より早く進行するからです。それを裏付けるアメリカ・コロンビア大学のトーマス・ピッカリング教授の研究報告では、脳心血管疾患リスクは正常血圧の人を1とすると、持続性高血圧の人が2.94倍、仮面高血圧の人は何と3.86倍にも上ったのです。
脳心血管疾患リスクを大幅にアップさせる仮面高血圧はひとつではありません。「早朝高血圧」「夜間高血圧」「ストレス高血圧」があります。
早朝高血圧はその名のとおり、早朝に血圧が高くなります。早朝の最低血圧が眠る直前よりも高い早朝急上昇タイプです。特に、夜間は低く早朝に急上昇する「モーニングサージ」は、心疾患リスクが高くなります。
自治医科大学附属病院循環器内科の苅尾七臣(かずおみ)教授グループの研究では、持続性高血圧があって、さらにモーニング・サージがあると、持続性高血圧だけの患者より脳卒中のリスクが2.5倍も高くなることがわかりました。
夜間高血圧は睡眠中も血圧が下がらないタイプ。「降圧薬の効果が切れている」「睡眠時無呼吸症候群」「糖尿病で神経障害を合併している」「心不全」「腎不全」の人々は夜間高血圧になりやすいので、特に注意が必要です。
ストレス高血圧は「職場高血圧」ともいわれ、まさしくストレスに血圧が敏感に反応するタイプ。仕事中ずっと血圧の高い人もいるし、大きなストレスで長い期間ずっと血圧の高い状態が続くケースもあります。
例えば1995年に起きた「阪神・淡路大震災」。38人が震災後に脳卒中や心筋梗塞で亡くなっています。そこにストレス高血圧が大きく関係していると思われます。
持続性高血圧以上に悪さをする仮面高血圧の人は、持続性高血圧の人の半分、そして、全国民の15%はいるといわれています。
脳心血管疾患リスクの高い仮面高血圧を発見するためには、血圧を、毎日家庭で測りましょう。上腕血圧計が推奨されています。朝の測定は起床後1時間以内・朝食前・服薬前に、トイレをすませて椅子に1~2分座って落ち着いてから行います。夜の測定は就寝直前です。朝晩、少なくとも1回測ることが推奨されています。1週間の平均値が最高血圧が135 mmHg以上、最低血圧が85mmHg以上の場合は、測定結果を持って医療機関を受診しましょう。
vol.46 今注目の"仮面高血圧"とは...

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執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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