vol.49 ほうっておくと怖い下肢静脈瘤(りゅう)

健康・医療トピックス
美容師やデパートの店員さんといった長時間立ち仕事をする人に多いといわれていた『下肢静脈瘤』ですが、最近はジーッとパソコンに一日中向かっている人にも多くなっています。
その下肢静脈瘤とは、下肢のふくらはぎや、それより内側などの血管がモコモコと瘤(こぶ)のように盛り上がるもので、見た目の問題だけでなく、「脚が痛い」「脚がつる」「脚がむくむ」「脚がだるい」「脚が重い」といった症状もあります。
人間の血液は血管を流れて全身に届けられます。動脈へは心臓からの圧で押し出されて行きますが、静脈で戻るときは、頭などから重力の法則で戻るものの、腹部や下肢は筋肉の収縮で押し戻されます。そして、血管についている弁で逆流を防いでいるのです。
その弁機能が弱くなったり壊れたりすると、下肢静脈に逆流が起こり、瘤状の拡張や変形ができます。
男女比では1対4で女性に多く、年齢的には40歳以上の人に多く見られます。
この場合、QOL(生活の質)を考慮して手術を受ける人が多いようです。中等症から重症のケースでは『ストリッピング術』という治療方法になります。瘤が下肢の表面にグリグリ出ている状態では逆流を防ぐ弁が壊れているので、脚の付け根から足首までの皮下を通る静脈を抜き取ってしまうのです。ただし、今は膝から下は『静脈瘤硬化療法』で対応しています。硬化療法は拡張した静脈に硬化剤を注入し、炎症を起こさせて静脈を閉塞させる方法です。
この手術は、今日では日帰り手術で行われている施設が増えています。それは「仕事を休めない」という患者さんのニーズに対応するものです。
しかし、静脈は抜き取っても大丈夫なのでしょうか。実は、皮下を通る静脈ではそれを抜き取っても問題はありません。ただ、下肢静脈の中心である深部静脈に逆流がある『下肢深部静脈弁不全症』のときは、抜き取るようなことはできないので、手術ではなく運動と弾性ストッキングで対応します。
この対応はきちっと行わないと、『深部静脈血栓症』を引き起こし、重大な合併症である『肺血栓塞栓症』を起こして突然死にも結びつきかねません。いわゆる『エコノミークラス症候群』です。
つまり、血液が下肢に滞ることで血栓(血のかたまり)ができ、それが急に歩いたときに心臓、そして肺へ流れ、肺の血管に詰まってしまい、呼吸困難に陥ってしまうのです。
脚のむくみなどの症状を訴えて受診する人の中には、下肢深部静脈弁不全症の人が意外に多いのです。早期に発見し、早期に治療することが突然死を未然に防ぐことにつながります。
vol.49 ほうっておくと怖い下肢静脈瘤(りゅう)

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執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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