vol.6 痛風の原因とその予防法

健康・医療トピックス
突然、足の親指のつけ根から猛烈な痛みにおそわれ、1~2時間もすると足の甲がぱんぱんに腫れあがり、風が吹いてもそのわずかな感触で激痛が走ります。こんな経験をする人が急増していますが、これが痛風の発作です。

現在、痛風患者数は約60万~70万人で、痛風の前段階である高尿酸血症、いわば痛風予備軍の人は約600万~650万人と推定されています。患者・予備軍共に男女比では98%が男性です。年齢的には40歳以上の人に多く見られますが、最近では20代後半の若い人にも痛風発作を起こす人が増えてきました。
これは、「食べ過ぎ」「ストレスが多い」「酒を多く飲む」といった生活習慣の乱れや、「エネルギッシュで手抜きができない」「激しい運動をする」といったことが大きく影響しているといわれています。

痛風は、体内の新陳代謝によってできる尿酸の量によって起こります。尿酸の体内量はほぼ一定に保たれており、一日に作り出された尿酸量とほぼ同量が毎日排泄されています。ところが、何らかの原因で体内の尿酸量が増えてしまうと高尿酸血症になります。
尿酸値の正常値は成人男性が血液1dl中4.0~6.5mg/dl、成人女性は3.0~5.0mg/dl。7.0mg/dlを超えると高尿酸血症で、8.5mg/dlを常に超える状態になると、いつ痛風発作が起きてもおかしくありません。
高尿酸血症になると、血液中に溶けきれない尿酸が結晶となって関節に沈着し、痛風発作を起こします。高尿酸血症からすぐに痛風発作に結び付くのではなく、発作が起きるまでには少なくとも約8年以上は経過しているといわれています。

激痛のもとになる尿酸は、プリン体といわれる物質が原料で、次のような3つの方法で作り出されます。
(1) 食べる食品にプリン体が含まれており、食事によって体内のプリン体が増える
(2) 体内の細胞の核酸にプリン体が含まれており、新陳代謝により古い細胞が分解されるとプリン体が出てくる
(3) 急激にエネルギーを使うとプリン体が生み出される

プリン体の産生量としては(2)が最も多いのですが、古い細胞が破壊されていくのは人間が生きている以上避けることはできません。(1)と(3)を上手にコントロールすることが高尿酸血症や痛風の治療・予防にとっても重要です。

以上のことに注意することによって高尿酸血症や痛風にはなりにくくなります。さらに痛風が原因となって発症する尿路結石、痛風結節(関節にできる大きな瘤)、腎障害(腎臓の働きが低下し、最悪の場合は腎不全になって透析療法へ)といった怖い合併症を引き起こすこともありません。

vol.6 痛風の原因とその予防法

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

関連コラム

商品を見る