脳・心血管疾患の発症ゼロへ

血圧ラボ 血圧基礎知識編血圧の基本

職場高血圧とは

職場高血圧とは?

病院や診療所などで測定した血圧値は正常な範囲内に収まっていても、それ以外の場所で血圧が高くなることがあります。こうした現象を「仮面高血圧」といいます。職場高血圧とは、仮面高血圧の一つで、仕事中のストレスなどによって血圧の上昇を示すものです。

職場で働いている時間帯のABPM(自由行動下血圧測定)による血圧の平均値や職場での血圧値が、繰り返し測定しても再現性よく135/85mmHg以上を呈する場合、職場高血圧と定義されます。

血圧は常に変動しており、ストレスなどがかかると健康な人でも一時的に血圧が上がります。ストレスがなくなれば血圧も元に戻りますが、職場のように緊張状態が持続する環境下では、放置していると将来において本格的な高血圧に進行する可能性が高くなります。

また、ストレスによる血圧の急上昇が脳卒中や心筋梗塞などの引き金になるケースも少なくありません。仮面高血圧の人は、持続的高血圧(一般的な高血圧)の人に比べて脳心血管疾患のリスクが高いという報告もあります。

JSH2019 P21 図2-2 「仮面高血圧に含まれる病態とその因子」

侮ると怖い職場高血圧

職場高血圧は、病院や年に一度の健康診断では正常値を示すため、見過ごされてしまいがちです。知らない間に血圧が高い状態が続いて、動脈硬化が進行してしまう危険性があります。

高血圧というと、50代以降の中高年者がなるイメージがあるかもしれませんが、ストレスによる高血圧は30代、40代の比較的若い世代でもかかる可能性があるので注意が必要です。

オムロンヘルスケアが、社員30名を対象に2週間、手首式血圧計を用いて起床時と就寝前および日中の時間帯に血圧測定を実施したところ、参加者のうち77.4%が、日中~夕方の時間帯に最高血圧値を記録しました。特に多かったのが日中の時間帯に最高値になるケースです。約半数の人が、日中に最高血圧値を記録しました。

調査期間中の最高血圧を記録した時間帯
*(朝:03:00~08:30、日中:08:30~18:00、夕方:18:00~22:00、夜:22:00~03:00)

さらに、最高血圧値をマークした曜日を分析すると、参加者のうち83.9%が就労している平日の方が休日に比べて高い値を記録していることがわかりました。同じ時間帯で比較すると、20mmHg近く差が出る事例も確認されています。

調査期間中の最高血圧を記録した曜日
*k-meansを用いて4グループにクラスタリングした結果

こうした調査結果から、仕事中に血圧が上昇する傾向が強いことが伺えます。

職場高血圧になりやすいタイプ

次のような人は職場高血圧になりやすいといわれています。

  • 健康診断で血圧が正常高値(130~139/85~89 mmHg)だった人
  • 高年齢で肥満度指数であるBMIも高い人
  • 家族に高血圧患者がいる人
  • 緊張しやすくストレスに弱い人
  • 職場や家庭での対人関係に消極的・否定的な人

なぜストレスで血圧が上昇するのか?

血圧と自律神経は密接に関わっています。自律神経には、緊張した状態で優位になる交感神経と、リラックスした状態で優位になる副交感神経があります。緊張している時は交感神経が活性化して、血管が収縮して血圧が上がります。一方、リラックスしている時は副交感神経の働きが高まり、血管が拡張して血圧が下がります。

職場でストレスなどにより緊張状態が続くと、交感神経が過剰に働き、血圧の上昇を引き起こす要因になります。職場でストレスを感じた時は、いったん仕事の手を休めて、深呼吸をしたり、軽くストレッチをしたりするだけでもリラックス効果があります。職場のストレスをそのまま家に持ち帰ると高血圧の状態が長時間続くので、散歩やウォーキングなどの適度な運動を取り入れて気分転換を図りましょう。

また、睡眠時間が不足すると交感神経が優位になりがちなので、十分な睡眠時間を確保することを意識してみてください。良質な睡眠を得るためには、寝る前の過ごし方がポイントになります。入眠する前に体をマッサージしたり、心地よい音楽を静かに聴いたりして心身をリラックスさせ、安眠へ導きましょう。

職場における血圧管理のすすめ

脳心血管疾患リスクの高い職場高血圧を早期に発見するためには、たとえ診察室での血圧が正常であっても、職場での血圧を管理する必要があります。特に血圧が正常高値の人は、職場で継続的な血圧測定を行うことをおすすめします。

最近では、オフィスに血圧計を設置している会社も増えているので、自分で時間帯を決めて毎日同じタイミングで血圧測定するといいでしょう。そうでない場合は、腕時計のような感覚で手首に常時装着できる携帯型の血圧計を活用すると便利です。

測定結果をスマートフォンのアプリで管理することもできるので、血圧手帳に書き忘れても安心です。1日中つけておけば、昼間だけでなく24時間のデータを記録することができます。

職場での継続的な血圧測定は、より詳細な血圧情報の把握に役立ちますし、医師による治療の一助ともなります。健康を維持するためにも、職場での定期的な血圧チェックを習慣化しましょう。職場高血圧が疑われる時は、早めに医師に相談してください。

参考

高血圧治療ガイドライン2019 P22
国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス『[43] 血圧の自己管理(改訂版)』http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/bp/pamph43.html#anchor-17
オムロンヘルスケア『20201007 HeartGuide社内モニター調査リリース』
オムロンヘルスケア『生活習慣病Q&A』https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/qa/168.html
カーネギーメロン大学『Press Release: Negative Social Interactions Increase Hypertension Risk In Older Adults, Carnegie Mellon Researchers Find』https://www.cmu.edu/news/stories/archives/2014/may/may28_cohensneed.html
京浜保健衛生協会『39.緊張状態による高血圧』https://www.keihin.or.jp/721/

PAGE TOP