高血圧の予防と改善(1)-食生活を見直す

食生活を見直す

高血圧の人は自分でも気づかずに、血圧を上げるような食生活をしていることが少なくありません。「血圧が高め」といわれたら、まず食事の内容や仕方を見直すことが大切です。

減塩を心がける

食生活の中でも、まず見直したいのが塩分の摂取量です。減塩による降圧効果には個人差がありますが、世界的にみても日本人は塩分をとりすぎている傾向があるので、まず減塩を心がけることが大切です。
日本高血圧学会のガイドラインでは、1日当たりの塩分(食塩)摂取量の目標を「6g未満」と設定していますが、同時に「より少なくすることが理想」ともしています。これは、米国ではすでに理想的な摂取量を「3.8g」とするガイドラインが示されているためです。
また、最近、高血圧が急増している中国での調査で、「メタボリックシンドロームの人ほど塩分の影響を受けやすい」というデータもみられます。高血圧にくわえ、肥満や高血糖などの症状がある人は、十分な注意が必要です。

減塩のコツ

  • しょうゆやソースより酢やレモンやユズ、こしょう、ごまで味付けする工夫をする。
  • 天然だし(昆布、シイタケなど)をしっかりとり、しょうゆや塩を減らす。
  • ラーメンやそば、うどんの汁はできるだけ残す。
  • 寿司につけるしょうゆの量は少しにする。
  • 薄味に少しずつ慣れるようにする。

ミネラル類をしっかりとる

塩分の排泄を助ける成分に、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルがあります。

カリウムとマグネシウムを上手に

カリウムには、腎臓から余分な塩分(ナトリウム)を排出する働きがあります。マグネシウムは、その働きを助けます。
カリウムは野菜や果物、海藻類、豆類などに多く含まれています。中でも野菜類や海藻類はカロリーが低く、メタボリックシンドロームの人にもいいので、しっかり食べることが大切です。
また、マグネシウムは、海藻やナッツ類、豆類などに含まれています。野菜サラダに豆やナッツを入れるのもいい方法です。
ただし、血糖値が高い人は果糖の多い果物は控えめに。また腎臓病の場合には、カリウムのとりすぎで悪化することもあるので、医師に相談してください。

カルシウム不足は危険

カルシウムが不足すると、副甲状腺ホルモンやプロビタミンDが分泌され、これが心臓や血管を収縮させて血圧が上昇します。高血圧になりやすい人には、カルシウムの吸収や調節の機能がよくない人も多いので、カルシウム不足にならないように心がけることが大切です。
カルシウムの吸収率が高いのは牛乳や小魚類です。日本人の食生活では、カルシウムが不足しがちなので、意識的にきちんととることが大切です。
また、マグネシウムは、カルシウムの吸収を助けるので、ナッツ類や豆類なども一緒にとりましょう。

参考にしたい「DASH食」

「DASH食」というのを、聞いたことはありますか。アメリカで開発された、血圧を上げないための食事(Dietary Approaches to Stop Hypertension)のことです。
肉類や甘味類などの高脂肪・高コレステロール食を控え、野菜や果物、ナッツ類、豆類、魚類、低脂肪乳製品、穀類(全粒粉のパン)などを中心とした複合食が、血圧を下げる効果があるとしています。

DASH食 野菜、果物、ナッツ類、豆類、魚類、
低脂肪乳製品、穀類を中心とした複合食

アメリカの調査では、普通の食事をした人と比較すると、DASH食の人は収縮期血圧が11.4mmHg、拡張期血圧が5.5mmHg下がったとしています(ハーバード大学、ジョンズホプキンス大学などによる8週間に及ぶ調査)。
DASH食の特徴は、簡単にいえば低脂肪・低コレステロールで、カリウムやカルシウム、マグネシウムなどのミネラル類が多いこと(これはすでに紹介した(2)と共通します)。また、魚類を積極的に摂取し、魚油に含まれる不飽和脂肪酸による降圧効果もとり入れています。
血圧を下げる働きをする食品を複合的にとることで、相乗的な効果をあげる合理的な食事となっています。アメリカ人と日本人では体質などに違いはありますが、血圧によい食事には共通した面が多くあるので参考にしてみましょう。

ワンポイントアドバイス

食生活全体にいえることは、食べすぎ・飲みすぎを見直し、肥満(内臓脂肪型肥満)を解消することが大切です。減量による効果には個人差がありますが、一般的に体重を4~5kg落とすと、血圧を低下させる効果がみられます。
また、間食や夜食(夜遅く食べる、寝る前に食べる)の習慣も、肥満につながり、血圧を上げる結果になりがちです。特に、夜間は、私たちのからだは消費エネルギーが減り、脂肪を蓄積しやすい状態になるので注意しましょう。