2016.04.08

vol.154 紫外線の功罪

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Vol.154 紫外線の功罪

太陽光を浴びすぎると、紫外線による肌の老化や、皮膚がんにつながるリスクがあることはよく知られています。その一方で、太陽光が骨の成長や老化の予防に役立つ可能性があることを指摘する専門家も少なくありません。
では実際に、私たちはどう対処したらいいのでしょうか。今回は、紫外線のメリットとデメリットについてお伝えしていきます。紫外線についての理解を深め、上手に付き合っていきましょう。

肌の老化に太陽光はどうかかわっているか

地上に降り注ぐ太陽光には、私たちの目に見える「可視光線」から目に見えない「不可視光線=赤外線・紫外線」まで、さまざまな波長の光が存在します。
光の色の違いを決めるのは、その波長の長さです。波長が短いほど、肌に与える影響が強くなります。可視光線の色は、波長の短い順で表すと、紫、青、水色、緑、黄、橙、赤となり、俗に虹の7色と呼ばれています。それより波長の短いものが紫外線、長いものが赤外線です。太陽光の割合は、可視光線が約52%、赤外線が約42%で、紫外線は5~6%にすぎません。しかし、波長が短く、エネルギーが高いため、肌にダメージを与えます。
紫外線は、波長の違いによってUV-A、UV-B、UV-Cの3種類に分けられます。このうち最も波長の短いUV-Cはオゾン層で遮断されるため、地表には届きません。ちなみに人工のUV-Cは、殺菌灯として活用されています。厳密にはUV-Cよりさらに波長が短い「真空紫外域」というものが存在しますが、これも地表には届かず私たちに影響を与えることはないとされています。
波長が長いUV-Aは地表に届く太陽光の約5.8%を占め、UV-Bと異なり窓ガラスを透過するため、室内やクルマの中にいても日焼けを起こすことがあります。一方、UV-Bは地表に届く太陽エネルギーの約0.2%とごくわずかですが、UV-Aよりもエネルギーが強く、日焼けを起こしてシミやくすみ、しわなどの原因となるほか、DNAの損傷を起こしたり、皮膚がんへのリスクを増大させたりします。また、体内でのビタミンD合成にかかわるのもUV-Bです。

一口に日焼けといっても、実は2種類あるのをご存知ですか。「サンバーン」と「サンタン」では状態が異なります。
一般的にサンバーンとは肌が赤くなってヒリヒリする日焼けのことです。メラニン色素を生成するため、シミやくすみができやすくなります。UV-Bが日焼けを起こすパワーはUV-Aの500倍以上といわれており、サンバーンのほとんどはUV-Bによってもたらされます。また、細胞内のDNAを傷つけるのもUV-Bの仕業です。若いころなら肌の自己修復力や細胞の自然死などによってシミにならずにすむことが多いのですが、目に見えないDNAの傷は蓄えられ続けていくため、自己修復力が追いつかなくなってしまうと皮膚がんにつながってしまうリスクが生じます。
UV-Aはサンバーンを起こす力はあまり強くなく、主に皮膚が黒くなる日焼け=サンタンを起こします。以前はサンバーンをあまり起こさないため、「善玉紫外線」と呼ばれていたこともあります。しかし、UV-Aだから安心、ということではありません。皮膚が黒くなるということはメラニンが生成されているということですし、コラーゲン線維も傷つけています。また、同時に活性酸素も作られており、DNAを傷つけている危険性があります。いずれにせよ、シミやしわの原因になることには変わりはないのです。
また、女性の多くが気にする“毛穴が目立つ”状態も、紫外線の影響によって起こっている場合があります。メラニンが蓄積して毛穴周辺が黒ずんで見えてしまうのは、紫外線の刺激によるものだと考えられています。

太陽が高い位置にある6月下旬の夏至のころに、太陽光は最も強くなります。そのため、オゾン層の影響が少ないUV-Aは夏至のころに最も強くなりますが、梅雨のあるエリアでは最大値が5月となります。これに対してUV-Bはオゾン層によって吸収され弱められるため、オゾン層による吸収が少ない7~8月に多く降り注ぎます。ちなみに、このデータはあくまで紫外線量合計の平均値です。つまり6月でも晴れた日なら、紫外線は多く降り注いでいるということを意味しています。
では冬なら大丈夫かというと、必ずしもそうとは言い切れません。一番注意しなければならないのが、スキー場のゲレンデや一面の雪景色です。というのも、波の少ない水面が紫外線の20~40%程度を反射するのに対して、雪面の場合は紫外線の80%以上を反射するからです。晴れた日の雪面は、通常の2倍近い紫外線が上から下から注いでいる、と考える必要があります。

ちなみに肌老化の原因は、加齢によるものが20%程度で、残りの80%が紫外線によって引き起こされる「光老化」と指摘されています。日光浴をするということは紫外線を浴びるということ。それによる影響を避けることはできないのです。

かんきつ類に含まれる“ある物質”が、紫外線の感受性を高めるって本当?

紫外線を浴びると、肌や体をサビさせる活性酸素が大量に発生します。その際、肌を守るためにメラニン色素の生成が促進され、シミやそばかすの原因になります。また、コラーゲンが破壊されて肌のたるみやしわを引き起こします。
この活性酸素の働きを抑える作用で知られるのが、抗酸化物質であるビタミンCです。ビタミンCは、オレンジやグレープフルーツ、レモンといったかんきつ類や、キウイフルーツ、ブロッコリーなどの野菜に多く含まれます。

しかし、その一方で「オレンジやグレープフルーツを食べて紫外線を浴びると、日焼けやシミの原因になる」「朝にかんきつ類を摂るのはNG」といった話を聞いたことはありませんか。その根拠とされるのが、かんきつ類などに含まれている「ソラレン」という物質です。
ソラレンには光毒性があり、光に当たると過敏に反応して、肌にダメージを与える働きがあります。そのため、紫外線を浴びる前にソラレンを摂取すると、メラニンが過剰に分泌されて、シミや色素沈着につながる可能性が指摘されていました。
ソラレンは、摂取後数時間で光毒性を発揮するといわれていることから、午前中はソラレンを多く含む食品を避け、夕食にするほうがいいと考えられていたのです。
ソラレンが含まれている食品としては、オレンジやグレープフルーツ、みかん、レモンといったかんきつ類全般、キウイフルーツやイチジク、セロリやニンジン、パセリ、三つ葉などのセリ科の野菜、じゃがいも、キュウリなどが挙げられていました。
朝からこれらの野菜や果物を食べたいのに、ソラレンが怖くて我慢しているという人もいるかもしれません。

ところが最近になって、この説は科学的な根拠に乏しいことが明らかになりました。確かにレモンやライム、グレープフルーツなどには、ソラレンが含まれていますが、ごく微量であり、かなりの量を摂取しない限り問題になることはないようです。例えば、グレープフルーツジュースなら1~5リットル、レモンなら30 kg程度ですから、常識の範囲内での摂取なら心配する必要はないでしょう。
キウイフルーツやイチジク、じゃがいも、キュウリなどに至っては、ソラレンを含むという根拠資料すら存在していません。したがって、朝にオレンジやキウイフルーツを食べても支障はないのです。
ただし、生のキュウリやレモンを輪切りにして肌パックなどに使用するのは念のため控えましょう。効果がないばかりか、赤みやかゆみなどの肌トラブルを起こす可能性があります。

では、太陽光を浴びるメリットは?

最近、医療関係の専門家が警告しているのが、過剰な紫外線防御です。あまりに紫外線に当たらなさすぎるために、ビタミンD不足が心配されているのです。
ビタミンD不足により、子供では骨の成長に問題がある「くる病」、大人では「骨軟化症」になる危険性が指摘されています。ビタミンDは食事などから摂取する以外に、紫外線を浴びることで私たちの体内で生成できるのですが、太陽光をほとんど浴びず、紫外線を極端にカットしてしまうことで、ビタミンD不足が生じてしまうからです。ビタミンDが不足すると、骨にミネラルを正常に沈着させることができなくなり、骨が正常に作り替えられなくなってしまいます。ほかにもビタミンDには、筋肉を維持したり、免疫力を増強したりする働きがあることがわかっています。

さらに、日光浴をしないと、メラトニンとセロトニンというホルモンの分泌に問題が生じる恐れがあります。ちなみに、この場合に作用するのは紫外線ではなく、可視光線とされています。
起床後、太陽光に当たり、食事をすることで体内時計がリセットされます。人間の体内時計は24.2時間とも24時間11分ともいわれていますが、これをリセットしないと1週間で1時間以上、体内時計がずれることに。通常、睡眠を促すメラトニンは夜に分泌量が増えるとされていますが、体内時計が狂っているとその量が減少して、不眠の原因になるのです。
メラトニンは免疫機能とも密接に関係しています。そのため睡眠に悪影響が出るだけでなく、風邪をひきやすくなる、疲れやすくなってしまうという点も指摘されています。
また、睡眠の質が悪いと成長ホルモンの分泌にも影響が出ます。成長ホルモンの分泌が減ってしまうと、私たちの肌や内臓などの細胞が正常にターンオーバーされなくなってしまい、体の回復機能や新陳代謝を悪化させる危険性があります。

これに対して、朝、太陽光を浴びることで分泌が高まるのがセロトニンです。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれているように、心の安定を保つのに役立ちます。ストレスホルモンが増えすぎないように調整するのもセロトニンの役割です。また、自律神経の安定性にも関係しており、老化の防止にもつながっています。
これらのことからわかるように、太陽光を浴びすぎると老化を招きますが、浴びないことも老化につながるのです。

ビタミンDを生成するには、太陽光=紫外線を肌に浴びる必要があります。加齢とともにビタミンDの生成量は低下するため、高齢者ならなおさらです。顔などに紫外線を浴びることでシミ・しわができるのが気になる人は、手でも足だけでも構いません。
ただし、目から紫外線が入ると全身のメラニン活性が高まってしまい、シミの原因になるので注意が必要です。角膜が炎症を起こすだけでなく、将来的に白内障や加齢黄斑変性といった症状に結びつくリスクがあります。その防御のためには、サングラスをつけるのも一つの方法です。メラトニンやセロトニンの分泌に必要なのは、目から可視光が入ることなので、UVカットのサングラスやガラス越しでも効果はあるとされています。
しかし色の濃いサングラスをすると、瞳孔が開いてしまい、目に入る紫外線がかえって増えてしまいかねません。あまり濃すぎないレンズカラーを選びましょう。

どれくらい日に当たるといい?

前述したとおり、冬の時期より太陽の高度が高い夏のほうが紫外線の量は多くなります。また、1日のうち紫外線の量が多いのは、太陽が頭上近くに来る10時~14時です。
したがって、夏は昼間ではなく、朝や夕方に太陽光を浴びるようにしましょう。昼間の時間帯しか外出ができない場合は、公園や林の木漏れ日でも十分な紫外線を浴びることができます。

20歳までに、一生浴びる紫外線の半分以上を浴びているという報告もあります。とくに学生時代、屋外スポーツの部活動を行っていた場合は、その平均より多いことが考えられます。
若いうちはDNAを自然に修復できますが、それでも次第に蓄積され、加齢とともに肌の老化や皮膚がんの危険が迫ってきます。紫外線を浴びないことの危険性も考えながら、最低限の日光浴をすることをおすすめします。

ところで、前述した光毒性物質ソラレン以外にも、注意が必要なものがあります。その代表的なものが湿布薬です。一部の湿布薬に含まれるある成分が、光線過敏症を引き起こしてしまうからです。
湿布薬を貼ったまま紫外線を浴びると、皮膚が炎症を起こして紅斑を引き起こしたり、ひどいときにはびらん状になったりする場合があります。湿布をはがしてしばらく経った後でも同様の症状を示す場合があるのですが、その理由は湿布薬に含まれるケトプロフェン、ジクロフェナクナトリウムなどの成分が30~60日ほど経っても皮膚に残ることがあるからだといわれています。これらの成分に関しては、光線過敏症に関する注意喚起が医療関係機関によって行われています。
また、日焼け止めのなかには界面活性剤などの「一時刺激物質」が含まれているものがあります。人間の体には肌を修復する機能が備わっていますが、一時刺激物質にさらされ続けるとその機能が低下し、シミの原因になったりして肌の老化につながってしまうことが指摘されています。

若々しい肌を保ちたいし、骨の健康も保ちたい。毎日を幸せに、快適に過ごしたい。しかし日焼けやシミ、皮膚がんの危険性も防ぎたい。それらの願いを同時にかなえるためには、夏は昼間の直射日光を避けて10~20分程度、冬は30分~1時間程度の日光浴をするなど、季節と時間帯を考えて、太陽光と適切な関係を保つのがよさそうです。

(参考)
『太陽紫外線』国立環境研究所 地球環境研究センター
https://www.cger.nies.go.jp/publications/report/m018/all_M018.pdf
『「果物や野菜に含まれるソラレンの量はどのくらい?」にお答えします【拡散希望】|健康と栄養にちょっといい話|ニュース&トピックス』駒沢女子大学人間健康学部健康栄養学科
https://www.komajo.ac.jp/uni/window/healthy/he_diary_teacher_20002.html

更新日:2021.03.16

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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