2016.04.08

vol.154 紫外線の功罪

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Vol.154 紫外線の功罪

太陽光を浴び過ぎると、紫外線による肌の老化や、皮膚がんにつながるリスクがあることはよく知られています。その一方で、紫外線を防御しすぎると、骨の成長に問題が生じたり、健康に悪影響を与える場合があることを指摘する専門家も少なくありません。では実際に、私たちはどうしたらいいのでしょうか。紫外線の悪い面、有益な面の両方をお伝えしていきます。

かんきつ類に含まれる“ある物質”が、紫外線の感受性を高める

紫外線が肌にダメージを与えることは、皆さんもご存じのとおりです。そのダメージを、さらに大きくしてしまう危険性があるものが、最近さまざまなメディアで取り上げられ注目されています。
最近人気のスムージーを朝食に取り入れている人も多いことでしょう。確かに複数の果実や野菜で作られたスムージーは栄養豊富です。しかし、選ぶ食材によっては落とし穴があります。
特に注意が必要なのは、オレンジやグレープフルーツ、みかん、レモンといったかんきつ類です。果物に多いビタミンCは美肌に欠かせない栄養素です。しかし、かんきつ類に含まれている「ソラレン」という物質(光毒性物質と呼ばれています)は、紫外線に過敏に反応する危険性があるといわれているからです。かんきつ類以外の果物では、キウイやイチジクなどにもソラレンが多く含まれています。
紫外線を浴びると、コラーゲンが破壊されて肌のたるみやしわの原因になります。またメラニンを分泌して黒く日焼けします。紫外線を浴びる前にソラレンを摂取すると、このメラニンが過剰に分泌されて、シミや色素沈着につながってしまうのです。それだけではなく、皮膚がんに結びつくリスクも指摘されているのです。

朝食で気をつけなければいけないのは、果物だけではありません。選ぶ野菜によってはサラダにも注意が必要です。食物繊維が豊富なサラダを摂ることで、健康効果が上がるというのは事実です。しかし、野菜のなかにもソラレンを多く含むものがあるのです。
ソラレンを多く含む野菜の代表が、セリ科の野菜です。セロリやニンジン、パセリ、三つ葉、明日葉、パクチー(コリアンダー)などがセリ科です。また、セリ科以外ではキュウリや春菊などにもソラレンが多く含まれているので、気をつける必要があります。

ソラレンは、摂取後数時間で光毒性を発揮するといわれています。そのため、午前中はソラレンを多く含む食品を避け、夕食にするほうがいいと考えられます。
ソラレンは食事として摂取するだけでなく、肌に塗っていても光毒性を発揮します。これらの野菜・果物を肌パックに使用したり、搾った汁が肌に付着してもシミになりやすくなるといわれています。特にかんきつ類の皮にはソラレンが多く含まれていますので、手や顔に汁が飛んだら、必ず流水で洗い流しましょう。

朝のスムージーや野菜サラダを欠かせない、という人は、ソラレンの少ない野菜や果物を中心にしたものに替えてみてはいかがでしょう。
果物の中ではリンゴやバナナ、ブドウ、イチゴ、スイカはソラレンが少ないといわれています。また、野菜ではトマトやキャベツ、レタス、ブロッコリー、大根などです。これらの食材を組み合わせても、おいしいスムージーやサラダができるはずです。

肌の老化に太陽光はどうかかわっているか

太陽光は「目に見える光」と「見えない光」で構成されています。目に見える光を、虹の7色の波長の長い順で表すと、赤、橙、黄、緑、緑青、藍、紫となり、この可視光は地表に届く太陽光の約52%を占めています。赤の光より波長の長いものが赤外線、紫より波長の短いものが紫外線で、どちらも目には見えません。赤外線は地表に届く太陽光の約42%で、熱として感じることができます。
紫外線は、波長の違いによってUV-A、UV-B、UV-Cの3種類に分けられます。波長の短いUV-Cはオゾン層で遮断されるため、地表には届きません。ちなみに人工のUV-Cは、殺菌灯として活用されています。厳密にはUV-Cよりさらに波長が短い「真空紫外域」というものが存在しますが、これも地表には届かず私たちに影響を与えることはないとされています。
UV-Bは地表に届く太陽エネルギーの約0.2%程度とごくわずかですが、日焼けを起こしてシミやくすみ、シワなどの原因となるほか、DNAの損傷を起こしたり、皮膚がんへのリスクを増大させたりします。また、体内でのビタミンD合成にかかわるのもUV-Bです。UV-Aは地表に届く太陽光の約5.8%を占めていて、UV-Bと異なり窓ガラスを透過するため、室内やクルマの中にいても日焼けを起こすことがあります。

日焼けと一口に言っても、サンバーンとサンタンでは状態が異なります。
一般的にサンバーンとは肌が赤くなってヒリヒリする日焼けのことで、メラニン色素を生成するため、シミやくすみができやすくなります。UV-BはUV-Aより日焼けを起こすパワーが500倍以上といわれており、サンバーンのほとんどはUV-Bによってもたらされます。また、細胞内のDNAを傷つけるのもUV-Bの仕業です。若いころなら肌の自己修復力や細胞の自然死などによってシミにならずにすむことが多いのですが、DNAの傷は蓄えられ続けていき、自己修復力が追いつかなくなってしまうと皮膚がんにつながってしまうリスクが生じるのです。
UV-Aはサンバーンを起こす力はあまり強くなく、主に皮膚が黒くなる日焼け、サンタンを起こします。以前はサンバーンをあまり起こさないため、「善玉紫外線」と呼ばれていたこともあります。しかし、UV-Aだから安心、ということではありません。皮膚が黒くなるということはメラニンが生成されていることですし、コラーゲン線維も傷つけています。また、同時に活性酸素も作られており、DNAを傷つけている危険性があります。いずれにせよ、シミやしわの原因になることには変わりはないのです。
また、女性の多くが気にする“毛穴が目立つ”状態も、紫外線の影響によって起こっている場合があります。メラニンが蓄積して毛穴周辺が黒ずんで見えてしまうのは、紫外線の刺激によるものだと考えられています。
ちなみに肌老化の原因の80%が紫外線のせいとする専門家も少なくありません。日光浴をするということは紫外線を浴びるということ。それによる影響を避けることはできないのです。

太陽が高い位置にある6月下旬の夏至のころに、太陽光は最も強くなります。そのため、オゾン層の影響が少ないUV-Aは夏至のころに最も強くなりますが、梅雨のあるエリアでは最大値が5月となります。これに対してUV-Bはオゾン層によって吸収され弱められるため、オゾン層による吸収が少ない7~8月に多く降り注ぎます。ちなみに、このデータはあくまで紫外線量合計の平均値です。つまり6月でも晴れた日なら、紫外線は多く降り注いでいるということを意味しています。
では冬なら大丈夫かというと、そう言い切れないところがあります。一番注意しなければならないのが、スキー場のゲレンデや一面の雪景色です。というのも、波の少ない水面が紫外線の20~40%程度を反射するのに対して、雪面の場合は紫外線の80%以上を反射するからです。晴れた日の雪面は、通常の2倍近い紫外線が上から下から注いでいる、と考える必要があるのです。

では、太陽光を浴びるメリットは?

最近、医療関係の専門家が警告しているのが、過剰な紫外線防御です。あまりに紫外線に当たらなさすぎるために、ビタミンD不足が心配されているのです。
ビタミンD不足により、子供では骨の成長に問題がある「くる病」、大人では「骨軟化症」になる危険性が指摘されています。ビタミンDは食事などから摂取する以外に、紫外線を浴びることで私たちの体内で生成できるのですが、太陽光をほとんど浴びず、紫外線を極端にカットしてしまうことで、ビタミンD不足が生じてしまうからです。ビタミンDが不足すると、骨にミネラルを正常に沈着させることができなくなり、骨が正常に作り替えられなくなってしまうのです。ほかにもビタミンDには、筋肉を維持したり、免疫力を増強したりする働きがあることがわかっています。

さらに、日光浴をしないと、メラトニンとセロトニンというホルモンの分泌に問題が生じる恐れがあります。ちなみに、この場合に作用するのは紫外線ではなく、可視光とされています。
起床後、太陽光に当たり、食事をすることで体内時計がリセットされます。人間の体内時計は24.2時間とも24時間11分ともいわれていますが、これをリセットしないと1週間で1時間以上、体内時計がずれてしまいます。そのせいで正常なら夜、分泌されるメラトニンという睡眠を促すホルモンが、理想的な時間に分泌されなくなってしまいます。メラトニンは免疫機能とも密接に関係しています。そのため睡眠に悪影響が出るだけでなく、風邪をひきやすくなったり、疲れやすくなってしまうという点も指摘されています。
睡眠の質が悪いと成長ホルモンの分泌にも影響が出ます。成長ホルモンの分泌が減ってしまうと、私たちの肌や内臓などの細胞が正常にターンオーバーされなくなってしまい、体の回復機能や新陳代謝を悪化させる危険性があります。つまりメラトニンは、肌や内臓などの若さを保つことに貢献しているといえるのです。

これに対して、朝、太陽光を浴びることで分泌が高まるのがセロトニンです。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれているように、心の安定を保つ脳内ホルモンです。ストレスホルモンが増えすぎないように調整するのもセロトニンです。また、自律神経の安定性にも関係しており、老化の防止にもつながっています。
これらのことからわかるように、太陽光を浴びすぎると老化を招きますが、浴びないことも老化につながるのです。

ビタミンDを生成するには、太陽光=紫外線を肌に浴びる必要があります。顔などに紫外線を浴びることでシミ・しわが気になる人は、手でも足でも構いません。また、ビタミンDの生成は加齢によって低下するため、高齢者ならなおさら、適度な日光浴をする必要があります。
メラトニンやセロトニンの分泌で必要なのは、目から可視光が入ることです。そのため、UVカットのサングラスやガラス越しでも効果はあるとされています。しかし、目から紫外線が入ると全身のメラニン活性が高まってしまうため、シミの原因になってしまいます。また、角膜が炎症を起こしたり、将来的に白内障や加齢黄斑変性といった症状に結びつく危険性があります。その防御のためには、サングラスをつけるのも一つの方法です。しかしあまり濃い色のサングラスをすると、瞳孔が開いてしまうことにつながります。すると、目に入る紫外線がかえって増えてしまいますので、注意が必要です。

どれくらい日に当たるといい?

前述したとおり、冬の時期より太陽の高度が高い夏の方が紫外線の量は多くなります。また、1日のうち紫外線の量が多いのは、太陽が頭上近くに来る10時~14時です。
従って、夏は昼間ではなく、朝や夕方に太陽光を浴びるようにしましょう。昼間の時間帯しか外出ができない場合は、公園や林の木漏れ日でも十分な紫外線を浴びることができます。

20歳までに、一生浴びる紫外線の半分以上を浴びているという報告もあります。とくに学生時代、屋外スポーツの部活動を行っていた場合は、その平均より多いことが考えられます。
若いうちはDNAを自然に修復できますが、それでも次第に蓄積され、加齢とともに肌の老化や皮膚がんの危険が迫ってきます。紫外線を浴びないことの危険性も考えながら、最低限の日光浴をすることをおすすめします。

ところで、冒頭で触れた光毒性物質「ソラレン」以外にも、注意が必要なものがあります。その代表的なものが湿布薬です。一部の湿布薬に含まれるある成分が、光線過敏症を引き起こしてしまうからです。
湿布薬を貼ったまま紫外線を浴びると、皮膚が炎症を起こして紅斑を引き起こしたり、ひどいときにはびらん状になったりする場合があります。湿布をはがした後でもそんな状態になることがあるのですが、それは30~60日後であっても、成分が皮膚に残っていることがあるからだといわれています。その成分とはケトプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、ピロキシカムなどです。これらの成分に関しては、光線過敏症に関する注意喚起が医療関係機関によって行われています。
また、日焼け止めのなかには界面活性剤などの「一時刺激物質」が含まれているものがあります。人間の体には肌を修復する機能が備わっていますが、一時刺激物質にさらされ続けるとその機能が低下し、シミの原因になったりして肌の老化につながってしまうことが指摘されています。

若々しい肌を保ちたい。皮膚がんの危険性も防ぎたい。しかし骨の健康も保ちたい。毎日を幸せに、快適に過ごしたい。それらの願いをかなえるためには、夏は昼間の直射日光を避けて10~20分程度、冬は30分~1時間程度の日光浴をするなど、季節と時間帯を考えて、太陽光と適切な関係を保つのがよさそうです。

明日に疲れを残したくない、すべてのアスリートへ。

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