vol.159 糖尿病患者はがんになりやすいと聞きましたが、本当でしょうか?

生活習慣病Q&A
糖尿病患者はがんになりやすいと聞きましたが、本当でしょうか?
はい、本当です。特に、すい臓がん、肝臓がん、大腸がんになりやすいそうです。がんの予防のための対策を立てておくことが大切ですね。
以前から糖尿病とがん発症の間には、なんらかの関連があるのではないかと注目されていましたが、2013年に日本糖尿病学会と日本癌学会による10年間の追跡調査の結果が発表され、より詳しい関係が明らかになりました。
その報告によると、糖尿病患者の場合、糖尿病ではない人と比べて大腸がんは1.4倍、肝臓がんは1.97倍、すい臓がんは1.85倍も、がんを発症するリスクが高かったのです。

糖尿病にともなってがんが増えるメカニズムについては、不明な点も多いのですが、糖尿病では細胞を成長・増殖させるインスリンが多く分泌されるため、それががん化につながるのではないかと想定されています。肥満、運動不足、肉類が多く野菜不足の食生活は、2型糖尿病とがんに共通したリスク要因です。逆に、減量(肥満者の場合)、運動、野菜たっぷりの食生活、禁煙、節酒などの健康的な生活習慣は、糖尿病の合併症を予防するだけでなく、がんを予防することにもつながります。

がんは早期発見・早期治療などと言われます。しかし、「糖尿病で医療機関にかかっているから、がん検診は受けなくていいだろう」と勘違いしている人がいます。通常の診療の中で、すべてのがんのスクリーニングはなかなかできません。また、腫瘍マーカーなどの血液検査だけではがんのスクリーニングはできません。がんの部位によって、スクリーニング方法は異なります。膵臓がんのスクリーニングには腹部超音波検査が、大腸がんのスクリーニングには便潜血反応が用いられます。がん検診を定期的に受けることでがんを早期発見することができます。

先生のプロフィール

坂根 直樹先生

坂根 直樹 先生

独立行政法人国立病院機構京都医療センター
臨床研究センター 予防医学研究室室長
略歴
昭和64年 自治医科大学医学部卒業
昭和64年 京都府立医科大学附属病院(第1内科)研修医
平成3年 大江町国保大江病院内科
平成5年 弥栄町国保病院内科
平成6年 京都府保健福祉部医療・国保課
平成7年 綾部市立病院(内分泌科)
平成10年 大宮町国保直営大宮診療所
平成11年 京都府立医科大学附属病院修練医(第1内科)
平成13年 神戸大学大学院医学系研究科分子疫学分野(旧衛生学)助手
平成15年 独立行政法人国立病院機構京都医療センター(旧国立京都病院)
臨床研究センター 予防医学研究室室長
ご専門
糖尿病、糖尿病教育、内分泌

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