vol.143 未成年のアスリートも対象。「ドーピング」の最新事情

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Vol.143 未成年のアスリートも対象。「ドーピング」の最新事情

スポーツは観戦するのも参加するのも大好きで、スポーツニュースを見ないと落ち着かないというスポーツ愛好家も多いことでしょう。トップになるアスリートは、人並み外れた体力と才能と強運の持ち主。受賞や活躍するニュースに感動し、励まされることもしばしばですが、その後、ドーピング疑惑が浮かび上がってくることがあります。
海外の一部のアスリートだけと思われてきたドーピング (禁止薬物) が、最近日本でも問題になりつつあります。順天堂大学スポーツ健康科学部スポーツ医学の教授で、スポーツドクターの櫻庭景植さんは「最近は、国体や全国大会でもドーピング違反者が出てきています。そのため、未成年のアスリートにもドーピング検査が実施されるようになりました。アンチ・ドーピングを推し進めるには、若いときからドーピングについて知り、注意していく必要があります」と現状を話します。
2015年1月、すべてのスポーツの基準となる世界アンチ・ドーピング規程で、未成年のアスリートに関する要件が改定されました。未成年のアスリートもドーピング検査の対象となり、競技会に参加する場合には親権者の同意書が必要になっています。

命に危険が及ぶドーピング行為

ドーピングは競技の公平性を損なって、フェアプレーやスポーツマンシップまでゆがめてしまう行為です。違反で最も多いのは、筋肉増強剤や持久力を高める造血剤の使用です。これらは、使い続ければ命にかかわる副作用があります。「筋肉増強剤では女性の男性化や、筋肉がダメージを受けて溶けたり、腎機能が低下して腎不全を起こすことがあります。造血剤では血液の粘度が高くなって血栓を生じ、重要な臓器に血行障害を起こし、亡くなる人もいます」(櫻庭教授)。
ドーピング検査では、尿検査と血液検査が行われます。血液中のホルモンの性状などをチェックする検査は「生物学的パスポート」と呼ばれています。それは、血液の成分はその人ごとにパターンが決まっているからです。造血剤などを使用すると生体内の物質がいきなり増えることがあるので血液検査でチェックが行われるのです。櫻庭教授によると、世界陸上では出場者全員に検査が行われているとのことです。

風邪薬による「うっかりドーピング」も多い

ドーピングは、悪いと知りながらも、勝つために行う違反行為ですが、日本では“うっかりミス”によるドーピングが多いといわれています。櫻庭教授によると、禁止物質とは知らずに飲んだケースは、風邪薬で最も多いということです。「風邪薬には、禁止物質のエフェドリンやメチルエフェドリンが入っていることがあります。それを知らずに早めに風邪を治そうと服用してしまうようです」。一般的な総合漢方薬や、風邪のひき始めに飲む葛根湯、麻黄が入っている漢方薬には、とくに注意が必要のようです。

また、持病の治療のために薬を服用している場合には、喘息薬に注意が必要です。喘息薬には厳しい規制があり、なぜ使うのか証明しなくてはならないことがあるため、使用しているアスリートは、医師に相談して必ずチェックを受ける必要があるとのことです。また、むくみの改善などのために服用されることが多い利尿剤ですが、ドーピングを隠すためだとみなされるため、禁止物質に入れられています。

薬は安易に飲まず、スポーツドクターに相談を

アスリートにとってドーピング検査は義務であり、自己責任。今後は国体や全国大会の記録保持者も検査を受ける機会が多くなると予想され、薬の管理が重要になっています。うっかりも含めてドーピングを防ぐには、「スポーツに薬は不要という意識をもって、まずは安易な薬の使用はしないでほしい」と櫻庭教授はアドバイスします。
また、違反となるドーピング行為は体内に薬を入れることだけではありません。ドーピング検査に応じない行為も違反とみなされます。「たとえば、3回呼び出しに応じない、検査を受けずに帰国した場合は、検査で禁止物質が出なくてもドーピング行為となります。失格期間も厳しく、2年や4年の場合もあります」。

ドーピングの禁止事項は毎年更新され、すべての医師が熟知しているとは限りません。そのため、アスリートや記録保持者は、スポーツに詳しい医師に相談することをお勧めします。日本には、日本体育協会のスポーツドクター、日本整形外科学会の認定スポーツ医、日本医師会の健康スポーツ医がおり、インターネットで検索できます。ドーピング行為となる禁止物質を覚えるのは大変ですが、「痛み止めならこれ、というように使用しても安全な薬を知っておくのがよい覚え方です。薬を処方されたら、これは大丈夫?と医師にしっかり聞くことが大切」と櫻庭教授。

ドーピング検査は国体や全国大会でも実施されるようになり、受ける人のすそ野が広がり始めています。スポーツをする人はもちろん、支える側のコーチや親、応援するサポーターも基礎知識に加えて覚えておきましょう。

監修 順天堂大学大学院 スポーツ健康科学部 スポーツ医学 教授 櫻庭 景植先生

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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