vol.144 「痔の三大疾患」に国内初のガイドラインが登場!

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Vol.144 「痔の三大疾患」に国内初のガイドラインが登場!

外出先や旅先にないと不安になる。そんな声が聞かれるほど身近になってきた温水洗浄便座。内閣府の消費動向調査(平成27年3月実施結果)によると、一般世帯での普及率は77.5%。毎年、右肩上がりに増加しています。普及率の上昇はお尻を清潔に保ちたい、健康でいたいという意識の表れなのでしょうか。

お尻の代表的な病気といえば痔ですが、2014年11月、国内初となる診療ガイドラインが登場しました。痔は先人たちも悩んできた肛門疾患。しかし、これまでガイドラインはまとめられてきませんでした。『肛門疾患(痔核、痔瘻、裂肛)診療ガイドライン2014年版』(日本大腸肛門病学会 編集)の作成委員長を務めた東京山手メディカルセンターの副院長で大腸肛門病センター長の佐原力三郎さんは、「肛門疾患(痔)は長い歴史があり、治療法のバリエーションも多く、この症状にこの治療という指針が示しにくいということがありました。ガイドラインに求められるのは、エビデンス(科学的な根拠)ですが、治療法が多くて比較試験に基づいた論文が少ない。そこで、ガイドラインの作成委員がひとつずつ評価し、全員のコンセンサスが得られた内容を指針としてまとめました」と話します。つまり、今回は痔の三大疾患の治療法を狭めるのではなく、治療の特徴や見逃してはいけないポイントなどを強調したということです。ガイドラインの登場は、肛門疾患の診療において大きな一歩。一般の外科や内科で広く役立つことが期待されています。

痔の三大疾患と気をつけたい病気

痔は大きく分けると、「痔核(いぼ痔)」、「裂肛(きれ痔)」、「痔瘻(あな痔)」のおもに3つがあり、それぞれ病態が違います。痔核は、肛門を閉じるための肛門クッションが変形して、肛門の外に滑り出たものです。痔の中で最も頻度が多いといわれています。裂肛は、肛門上皮が傷ついて裂けた状態。女性や便秘の人に多くみられます。痔瘻は肛門の内側と外側にトンネルのような孔ができて、腫れたり、痛くなったり、膿が出たりします。肛門には小さなくぼみがあり、ここに細菌が入って炎症を起こす感染症で、初期は肛門周囲膿瘍と呼ばれます。痔瘻は1回の下痢でなる人もいます。
また、肛門の病気は痔の三大疾患だけではありません。出血や脱出、痛み、排便障害の症状があってこれらと紛らわしいのは、スキンタッグ(皮膚のたるみ)、肛門ポリープ、肛門狭窄、まれに肛門がんがあります。さらに、最近、増加しているのは、STD(性感染症)やクローン病による肛門病変です。クローン病は10~20代の若年者に発症しやすい原因不明の難病。消化管に潰瘍ができたり、粘膜が腫れて腸管が狭くなったりする炎症性腸疾患です。クローン病の増加とともに肛門病変が増えており、痔瘻の合併率が高いといわれています。

治療法も進歩。特徴や違いを理解して選択しよう

肛門の診察は恥ずかしさが先に立ち、受診をためらいがちです。しかし、自覚症状があったらきちんと診察を受けることが大事です。佐原さんによると初診時の問診でおおよその病気は絞り込めるとのことです。「検査はそれを確認するためで、視診、触診、肛門指診、肛門鏡診などを行います。肛門鏡は奥行き3~3.5cmの肛門の診察に特化した機器で、色の変化や指ではわからない状態を調べます」。
治療法も体への負担が少ない方法が求められるようになり、低侵襲の手術や根治性の高い治療が行われています。たとえば、痔瘻では肛門括約筋の一部を切除しますが、治療後の痛みや肛門変形、ガスを我慢できないなどの問題が生じることがあります。そのため、最近の手術では、敏感な肛門上皮を傷つけない、肛門括約筋へのダメージを最小限にするなどの工夫によって、術後の痛みが少ない、治りが早い、肛門の閉まりも変わらないという術式も実施されています。
痔の治療は幅が広く、ガイドラインに含まれない治療法もあるので、「治療を受けるときは、どのような治療法があるのか提示してもらい、その特徴や違いをよく理解し、自分が希望する方向を医師に伝えて選択してほしい」。佐原さんはそうアドバイスします。

肛門にやさしい生活習慣をしよう

痔は良性疾患ですが、大腸がんが併発していたり、ずっといぼ痔と思っていたら直腸のポリープだったりということもあります。30~40代になったら、内視鏡による大腸の検診を受けてみましょう。また、1回でも出血すると大腸がんではないかと心配になって慌てて病院に駆け込む人も多いようです。一時的な肛門出血や肛門痛は誰でもあり、自然治癒力で肛門は治ることもあるので、まずは冷静に様子をみましょう。「便が硬かったかどうか、便が元に戻ったら痛くないとか、様子や経過を観察します。症状が2~3週間続いたり、繰り返したりする場合には、肛門専門医に相談しましょう」(佐原さん)。

痔は生活習慣に一因があり、長年の生活パターンから起こるといわれています。よい排便とは、便意があったときに素直にトイレに行き、5分以内に済ませること。便座では「ロダンの考える人」の姿勢がベストといわれます。便意を我慢する、いきみ過ぎ、トイレに長居するは、肛門に負担がかかる生活習慣です。また、トイレで温水洗浄はよいですが、洗い過ぎや、強い水流での刺激のかけ過ぎはかえってよくありません。思い当たったら見直して快適なトイレライフを目指しましょう。

監修 東京山手メディカルセンター 副院長・大腸肛門病センター長 佐原力三郎 先生

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